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【特撮】『戦隊』はなぜ大人になって語られないのか?(中編)

◾️前回まで

前編では、戦隊についての
『世間一般のイメージ』『視聴機会』『演出面での制約』
といった部分から大人があまり語らない理由を考察してきました。

今回は『設定』『世界観』という物語を成立させている部分を『大人が語るか、語らないか』という視点で検証、考察していきます。

前編はこちらから↓


◾️結成!スーパー戦隊!

基本的に1人のヒーローが宿命を背負っていれば成立する『仮面ライダー』、『ウルトラマン』と異なり、『戦隊』はチームでドラマを作っていく必要がある。

個々の人間関係が描けるというメリットがあるが、それぞれの『チームを組む理由』、『戦う理由』というものに説得力がないと『何のために戦っているのか』という作品の根底まで揺らいでしまう可能性がある。

そしてここに必然性と説得力を持たせている作品こそ、『大人が語りたい作品』と言えるのではないだろうか。

全員が兄弟の戦隊!ゴーゴーファイブ!

例えば1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』は国連をバックにした組織イーグルに所属する隊員という設定だ。
つまり『公営』の『職業戦隊』として平和を守っているわけである。

◾️5人のなかに君がいる

組織に所属するのは生活や将来のためという側面もあるだろうし、使命に燃えていたり、自身の才能を活かすためといった行動原理も想像できる。
そして戦隊になった若者たちは宿命を背負いながらも戦っていく。
2作目『ジャッカー電撃隊』、3作目『バトルフィーバーJ』も、経緯は異なれどベースとしては同じ路線が続いた。

その後も国家やそれに準ずる組織を背景とする戦隊が定番化するかと思いきや、4作目『電子戦隊デンジマン』で早くも(地球由来じゃないけど)民間による戦隊が結成されている。

優秀な君のところには犬がスカウトにくるぞ!

◾️『公営戦隊』と『民間戦隊』

シリーズが続くにつれ小規模な組織の割合は増えていく。
13作目『高速戦隊ターボレンジャー』、25作目『百獣戦隊ガオレンジャー』等、味方陣営を揃えても設定上10名にも満たないチームが目立つようになってくる。
こうなるともはや『組織』というより『団』といった有様である。

戦隊のチームのバックが何なのか、というのはその作品のカラーや明るさにかなり影響している。
軍属や公的機関などの固い組織であれば比較的ハードな雰囲気に、民間発であればコミカル、部活モノのような作風に寄ってくる。
もちろん例外も存在するし、キャラクターごとに見れば当てはまらないものもあるが。

電撃戦隊というネーミングの時点で軍属を想起させる
チェンジマン

いずれにしても、組織が大きく関係者が多ければ規律、作戦行動のチーム描写が目立ち、少人数チームであればアットホームだったりラフな関係性の描写がしっくりくるという要素がある。

前者であれば19作目『超力戦隊オーレンジャー』、28作目『特捜戦隊デカレンジャー』等があり、
後者の例なら26作目『忍風戦隊ハリケンジャー』、35作目『海賊戦隊ゴーカイジャー』等だ。

作品の完成度というものは様々な要素が絡みあっているものではあるが、戦隊に於いては結成理由と、主人公たちでなければいけない理由をいかにしっかり描いているかで視聴者が大人になった時の印象が変わると言える。

アウトローたちで結成されている異色の戦隊ゴーカイジャー

◾️『そういう世界観』、で納得できるのか

戦隊と言えば子供たちが憧れる能力と装備が大きなセールスポイントだ。
だが各戦隊、装備は似ていても前述の『公営』『民間』によってはそのルーツはかなり異なってくる。

戦隊の装備や巨大ロボのような兵器の調達、また敵と一戦交えた後の後片付けはどうしているのかというような戦隊シリーズならではの疑問に対し、『公営戦隊』ならば資金や技術においてもある程度納得のいく想像がつく。

そういう世界観だといってしまえばそれまでだが
毎回被害は甚大

しかし『民間戦隊』はここに説得力を持たせるのが難しく、あまりにファンタジックな設定でまとめてしまうと、子供ながらに違和感を覚えたり、大人になって改めての議論の余地をなくしてしまっているように思えてならない。
手製の武装で町内の平和を守るお茶の間戦隊ならばこれでもいいのだが、戦隊の敵勢力は大概真っ向から巨大兵器を携えて大侵攻を仕掛けてくる。

この部分をうやむやとは言わないまでも、あっさりめに処理している作品を見た子供は、大人になって『幼稚だった』という印象が強く残ってしまっているのではないだろうか。

戦力とコミカルさのギャップが魅力でもある

◾️いつも心のなかに

逆にこういった疑問点解消に力を入れた24作目『未来戦隊タイムレンジャー』、36作目『特命戦隊ゴーバスターズ』等にハマったキッズたちは、今でも心を掴まれたまま大人になっていることだろう。

だがそもそも大人は戦隊の本来のターゲット層ではないため、狭く深く評価されるよりは広くマーケットを広げられるのが理想なため、描写のバランスとりは非常に難しいと言える。

大人になってから観ても楽しめる作品

◾️後編へ

今回は戦隊を成立させている設定、世界観から考察してみました。
前後編でまとめるつもりでしたが長くなってしまったので次回で完結します。
後編では、時代背景から考察する予定です。

つづく

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