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【秒針と溶ける涙】

この時間だけは、誰にも邪魔しないで。幸せな時間なの。私は、誰にでも好かれたい。そう思ったのは、高校生。幼い私は、成長していつの間にか社会人。どこにでもいそうなOL。恋も仕事もイマイチのストレス社会で何気なく毎日をやり過ごす。はずだった。彼が現れるまでは。
 あ。彼女の事を説明してなかったね。僕は、彼女の未来が見える天使?とでもいおうか。
彼女はどこにでもいそうなOLの立花 架純(たちばな かすみ)高校時代には全く恋愛運に恵まれず、男運も悪い。然程、顔の作りは悪くないのだが、運の悪さが滲み出ていた。
それ故に、告白するも、撃沈の嵐。諦めかけて付き合う男は、クズ。クズ。クズ。のオンパレードで家族からも愛想をつかされる始末。
何故なら、クズな男でも愛してやまない姿は家族も見るに堪えないからだ。母親の助言すら耳に入らない姿は表彰物だ。でも何で、天使?が、立花 架純の前に現れたか?それは、今から架純は死ぬからだ。何故?それは、彼女が馬鹿正直すぎるからだ。
 “キー!ガシャーン!”その破裂音はどこよりも響いていた。架純は拙い身体を引きずり、秒針のずれた時計を握りしめた。
 天使【どうだい?お目覚めは良いかい?】架純を上から見下ろす。思わず声を上げたのは架純だった。
 架純【誰⁉ここはどこ?】辺りを見渡すと真白な空間が広がっていた。天使は静かに歩み寄り口を開いた。
 天使【貴方は、死にました。馬鹿な男をかばってトラックにガシャーンです。】身振り手振りで表現する。信じられない顔の架純を尻目に高笑いする。
 架純【人が死んでいるのに何で、笑えるの?】顰めた顔で天使をにらみつける。
 天使【私は、天使です。貴方の生き死には、感慨深いものでした。ですが…私も鬼ではありませんから…まともな人生にやり直すというなら一度チャンスをあげましょう。】架純の握りしめていた時計を渡す。
 架純【ホントに⁉でも何か交換条件みたいなのがありそうね。】怪しみながらも時計を握りしめた。
 天使【そうですね…条件は、貴方が幸せを感じる事です。では、戻ってもらいましょう!】天使が、指を鳴らす。
 架純【ちょっと待って!】言葉を交わす暇もなく時空を飛ばされた。目覚めると私は、高校生に戻っていた。私は、この甦りがどんな意味を持つのかはまだ知る由もなかった。

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