知っておきたいスポーツ選手にまつわる著作権・肖像権の話〜写真編〜
こんばんは!Aikaです。
今回は、最近話題の著作権、肖像権のお話です。
先日、日本のフィギュアスケーターの肖像をフランスの会社が無断使用したたという問題があったからです。
これをきっかけに、著作権についての議論が再燃していたため、一度法律的なことをしっかりまとめる必要があると考えて取り上げることにしました。
著作権とは?
著作物創作時から作者の死後70年間存続される著作者を保護するための権利です。
(一部の国はそれ以上)
著作権には以下の権利が含まれています。
※特にスポーツ選手周りで関係のありそうなものを太字にしています
複製権(21条) …著作物を印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製する権利
上演権・演奏権(22条)… 著作物を公に上演し,演奏する権利
上映権(22条の2) …著作物を公に上映する権利
公衆送信権等(23条) …著作物を公衆送信し,あるいは,公衆送信された著作物を公に伝達する権利
口述権(24条) …著作物を口頭で公に伝える権利
展示権(25条) …美術の著作物又は未発行の写真の著作物を原作品により公に展示する権利
頒布権(26条) …映画の著作物をその複製物の譲渡又は貸与により公衆に提供する権利
譲渡権(26条の2) …映画の著作物を除く著作物をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利(一旦適法に譲渡された著作物のその後の譲渡には,譲渡権が及ばない)
貸与権(26条の3) …映画の著作物を除く著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利
翻訳権・翻案権等(27条) …著作物を翻訳し,編曲し,変形し,脚色し,映画化し,その他翻案する権利
二次的著作物の利用に関する権利(28条) …翻訳物,翻案物などの二次的著作物を利用する権利
引用元:文化庁ー著作者の権利の内容について
これらをまとめて著作権といいます。
また、これらの権利は著作者にあるので、写真の場合は被写体の選手ではなく、写真を撮ったカメラマンにあるということになります。
ただし、選手には勝手に写真を撮られない権利(人格権)があります。
ですので、撮影禁止の場所や意図しない場所で本人とわかるように無断撮影された場合、その写真の消去を求めることはできます。
(※事件報道などは例外)
著作権は国際条約が結ばれており、フランスもしっかり加盟国に入っているため、たとえ海外でも著作権は関係することになります。
著作者人格権
著作者の精神的なものに配慮した、著作者人格権というものもあります。
公表権(18条) …未公表の著作物を公表するかどうか等を決定する権利
氏名表示権(19条) …著作物に著作者名を付すかどうか,付す場合に名義をどうするかを決定する権利
同一性保持権(20条) …著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利
引用元:文化庁ー著作者の権利の内容について
これらは著作者の人権だと思ってください。
無断で使用されたら心理的に嫌ですよね?
そういった点に配慮しているのが著作者人格権です。
著作権侵害にならない場合
大きく分けると、
・私的使用目的
・教育目的
・引用目的
この場合は著作物を自由に使える権利がある程度認められています。
自室に飾る、自分だけの物に使う分には問題ありません。
また、教科書等に起用されているのはOKということになります。
問題になるのは「引用」です。
文化庁のサイトには、引用について以下のように書かれています↓
公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。
引用元:文化庁ー著作物が自由に使える場合
つまり、ある程度の範囲内であれば、引用・翻訳して利用することが可能です。
ただし、著作者が「転載しないでください」という旨を書いている場合はダメです。
これは権利の侵害になります。
前提として著作権の話をしましたが、多分ファンの皆さんが主に関わってくるのがスポーツ選手に対する肖像権です。
(カメラマンさんなどについては別途取り上げますね!)
以下、肖像権のお話をします。
実際は写真の無断使用を肖像権で訴えるのは難しい
実は、肖像権というのは日本で認められるのが難しいです。
その理由はWikipediaの「肖像権」の項目に書かれています↓
日本においては、日本国憲法第21条に表現の自由が明記されており、肖像権に関することを法律で明文化したものは存在せず、刑法などにより刑事上の責任が問われることはない。しかし、民事上では、人格権、財産権の侵害が民法の一般原則に基づいて判断され、差止請求や損害賠償請求が認められた例がある。なお、自らでSNS上に投稿などをした画像等には反映されない。
引用元:Wikipedia
要するに法的拘束力が弱いんですね。
さらに、著作権の保護対象は被写体ではなく、撮影者。
写真を撮影したカメラマンに帰属するのです。
だから被写体の権限で写真の配布を止めることはできないのです。
さらに、「自らでSNS上に投稿などをした画像等には反映されない」という話もなかなかグレーです。
SNSに投稿した時点で、SNS上のシェア機能を正当に利用したものに関しては文句がいえない、と解釈できます。
(「リツイートしないで!」という旨を予め書いておけばそれを根拠に民事で訴えるのは可能です)
被写体に認められる「肖像権」とは、人格権・パブリシティ権の損害としての訴えが認められることをいいます。
人格権…被写体としての権利でその被写体自身、もしくは所有者の許可なく撮影、描写、公開されない権利
パブリシティ権…著名性を有する肖像が生む財産的価値を保護する権利。
引用元:Wikipedia
スポーツ選手の場合、トップアスリートは「著名性を有する肖像」に当たりますよね。
ここで問題なのは、スポーツ選手は俳優や芸能人のように、名前や顔を晒しながら活動している「公人」という扱いをされるということです。
つまり、「人格的利益の保護は制限される」立場になるんですね。
ですから許可なく撮影、描写、公開されない権利については、本人の精神的苦痛または経済的損益を伴わない範囲で制限されることになります。
たとえば報道カメラマンに写真を撮られることは、ある程度許容しなければいけません。(それによって有名になるという本人の利益もあるため)
ファンアートなどは「写真の複製」になってしまうと撮影者の権利を侵害することになりますが、絵を描いた本人の創意工夫の入ったデフォルメであれば認められるという解釈ができます。
また、その絵や写真が被写体の人格を傷つけるものではないこと、本人が得られたはずの経済的利益を損なうものでないことも重要です。
Twitterなどの無断転載はアウト!?
皆さん、気になるのは無断転載が横行しているといわれるTwitterですよね?
結論からいうと、特に注意書きが無ければTwitterのリツイートや引用リツイートといった機能を正当に使っている分には問題ありません。
ただ、
「他人がアップした写真をダウンロードして自分のツイートとして投稿する」
「他人がアップした写真をスクショして自分のツイートとして投稿する」
これらはアウトです。
よく見かける他人のツイートをスクショ保存して投稿も著作権違反になります。
やってること盗撮と一緒ですからね。
逆にSNSに投稿する際には他人にリツイートされるかもしれないということを覚えておきましょう。
法律で明文化はされていないけれど・・・
著作権や肖像権は権利としては有しているものの、そもそも法律で明文化されていないので、民事で訴えるしかないというのがあります。
親告罪といって本人が訴えなければ罪にならないのですが、民事でも裁判には膨大な時間とお金がかかります。
(Aikaは著作権ではないですが、別件で少額訴訟起こそうとしたけど時間とお金がかかるのに回収の見込みがなくて辞めたことがあります)
そのため、被害額が大きいか、回収の見込みがない限り訴えない人が多いのです。
ですが、スポーツ選手やスポーツ界全体への影響を考えると、ぜひとも無断転載は辞めていただきたいというのがAikaのホンネです。
本来スポーツ選手や関係者に入るはずだった利益をかすめ取るようなものだからです。
特にアマチュアスポーツ選手とそのファンの間では、方向性のズレたアマチュアリズム(非商業主義)の精神が選手らの足枷になっているという課題があります。
スポーツ界における著作権・肖像権の課題に関しては今後も取り上げていきます。
※反響のあった点について、補足解説記事を出しました!
スポーツファン(特にフィギュアファン)へのお願いを込めた「スポーツ選手の利益を守る著作権・肖像権」動画はこちら
それではまた明日!
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Aika