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①結成当初からの世界視野 ~BTS(防弾少年団)の世界的人気の10の理由~

BTSの世界的な成功の一因として、結成当初から国内・アジアだけではなく世界で活躍することが目標だったことにあります。
それは、21世紀初頭からのK-POPの発展によるところが大きく、韓国のアーティストやアイドルが「世界が目標」と口にすることが夢物語ではなくなった背景がありました。

1. 韓国政府が始めた韓流の輸出

韓国では、1999年の文化産業振興基本法成立から始まり、政府が経済政策としてK-POPを含む「韓流」の輸出を支援しており、企業も積極的に出資しています。

日本のクール・ジャパン戦略と似た感じですが、日本がアニメ・漫画・ゲームに強いのに対し、韓国は映画・ドラマ・音楽が強い。
日本は、海外でもともと人気があった日本のサブカルに政府が乗っかって後押ししている形ですが、韓国はもともとアメリカが強い分野で勝負し、海外認知度が低かった自国の文化を世界に通用するよう戦略的に発展させヒットさせているのがすごい。

日本でも21世紀になって韓国文化がぐっと身近になりましたよね。
ヨン様の冬ソナからの韓流ドラマブームや、東方神起BIGBANG・KARA少女時代などは話題になっていたので、韓流詳しくない方でも名前を耳にしたことあるのでは?!
そして2020年、映画「パラサイト」が非英語作品で初めてアカデミー賞作品賞を獲得したのは記憶に新しいです。

2. 韓国音楽業界が狙った世界音楽市場の2大巨頭

世界の音楽市場は1位がアメリカ2位が日本です。
この順位はここ数十年不動で、アメリカ(3~4割)と日本(2~3割)の2国で世界の半数以上を占めています。つまり、音楽に関しては日米で売れればほぼ世界制覇
韓国は、人口は日本の半分くらいですが、音楽市場は00年代までは日本の約30分の1くらいと大変小さい市場でした。20年代現在は、K-POPの発展で日本の6分の1くらいまでになったようです。

音楽に関しては韓国で売れるだけでは市場に限界があったため、世界、特に「アメリカ」と「日本」をターゲットとして韓国ポップス【K-POP】を躍進させることが韓流の輸出の一つとして始まりました。

3. 英米のボーイズ・グループ(ボーイ・バンド)

英米の音楽市場でアイドルとして売れるためには音楽作品そのものが魅力的でなければいけません。
歌唱力・表現力・良曲が大前提で、それに加え、見た目や話題性があって、ヒットにつながります。基本は英語詞です。

グループの場合、構成人数は5人以下が多く、全員で織りなすハーモニーが魅力。昔はエースとその仲間たちになりがちでしたが、近年は各個性がバランス良く分散している気がします。
ただし、ソロ転向による脱退・解散などが発生しやすく、寿命は短めです。
個人主義的傾向にあることや若さも鍵になるので、アイドルグループ市場が男女ともあまり活発ではありません。

俳優活動等を行う方もいますが、ミュージシャン活動が第一で各国でのコンサートも精力的に行われ、マルチな能力はそこまで重視されません。パフォーマンス時の振付や衣装も日本や韓国ほど凝っていない印象です。
プライベートに関しては事務所が大きく口出しせず、恋愛やSNSなどに比較的寛容です。

楽曲プロデュースをすべて自分たちで行うグループもあり、近年はCDやデジタルダウンロードよりストリーミングでの売上が主流になっています。

◆I Want You Back (1969) - The Jackson 5

元祖ボーイズ・グループ。ダンスに歌唱力に良曲にこれだけ揃ってれば人種の壁を乗り越えても売れるのわかる。そして、圧倒的オーラを放つ幼少時のマイケル・ジャクソンのスター性!さすが私の神。グループが5人構成が多いのはジャクソン5の影響ですかね。

◆I Want It That Way (1999) - Backstreet Boys

日本でも売れに売れたバックストリート・ボーイズ。とにかく良曲が多い!ハーモニーが際立つバラードの方が人気があるけど、ダンサブルな曲も好き。学生時代、ニックが一番人気だった気がします。一時期休止もしていましたが現役グループ。

◆Bre Bye Bye (2000) - *NSYNC

バックストリート・ボーイズのライバルと言われたイン・シンク。やはりジャスティン・ティンバーレイク1強だった印象。個人的には、2001年のマイケル・ジャクソン30周年記念ライブにゲスト出演したことがとても記憶に残っています。2002年の休止後、2013年にMTVステージで限定復活。

◆What Makes You Beautiful (2011) - One Direction

英国のソロオーディション番組で落選したメンバーが集められて結成されたワン・ダイレクション。ザ・アイドル!的なかわいさで世界に旋風を起こしました。曲もポップでキャッチー。現在は4人体制で休止中でほとんどがソロ活動がメインですが、結成10周年の2020年、何かが起きるかもとの噂も!?

4. 日本のボーイズ・グループ

日本のアイドルは、見た目が重要視される傾向にあります。次にダンス。そして魅力的なキャラクター。その上で、歌、演技、喋りもある程度できなくてはならず、マルチな才能が求められます。

グループの構成人数は2人~10数人など様々ですが、最近は男女とも強烈な個性あるアイドルが少なく、人数で勝負するグループが多いです。パフォーマンス時の振付や衣装は曲調やグループ・メンバーの個性を生かして設定されています。

苦手分野があっても、他メンバーが得意でカバーしてくれるなど、メンバーの合計値・平均値でグループ能力が補強されているイメージ。
シンガーとダンサーの役割を明確に分担しているグループもありますが、ボーカルのパート割は偏らずに平均的で、サビではユニゾンやハモリを採用することが多いです。

仲の良さや個々のキャラの化学反応などのチームワークを好ましいと感じる日本では、男女ともグループが大変人気で、ボーイズ・グループはジャニーズとLDHの二大巨頭が強いです。
集団主義的傾向があることに加え、兵役による活動停止期間もないこと、童顔傾向で年齢的ハンデが小さいこと、日本のファンの一途な傾向などから、グループ寿命が長く新旧多数のボーイズグループが存在します。
結果として、他のグループと差別化するために、純粋な音楽活動以外(ミュージカル・舞台・映画・バラエティ・スポーツ・ニュース・MC・握手会など)に注力して個性や魅力を伸ばす傾向にあります。
音楽活動が後回しになったり音楽担当のメンバーが偏ってしまうと、どうしてもグループ全体の「アーティスト」レベルは平均的に落ちてしまいます。

楽曲プロデュースをすべて自ら行っているグループは少ない印象で、複雑な曲や聴かせる曲より、J-POPらしいカラオケで歌って楽しめる曲が多く人気があります。

スキャンダルは致命的のため、SNSや恋愛に関してはトラブル防止のために制限されている模様。特にジャニーズ系は近年まではWEBでの写真利用すらNGでしたよね。。

そして、日本はいまだにCDが主流。握手券などの特典付き商法、複数形態発売などで売上を確保していることもあり、アイドルの映像・楽曲のデジタル配信やストリーミングは制限されていることが多いです。
「モノ」が売れやすい日本では、写真やグッズの発売も好調で、コンサート会場でペンライトうちわでアイドルにエールを送る光景は日本がスタートさせた慣習として有名です。

◆A・RA・SHI (1999) - 嵐

国民的アイドル・嵐カラオケでも確実に盛り上がる一曲。この頃の流行りのラップが取り入れられたデビュー曲。後ろでJr.が踊ったりバック転し始めるのは、ザ・ジャニーズ。
SMAPの切り開いたマルチ多能型アイドルを受け継ぎ、多方面で個性を生かして活躍しながら、メンバーの仲の良さも魅力。2020年で活動休止予定。

◆if... (2000) - DA PUMP

メインボーカル・ラップ担当・ダンスなど役割がしっかり分担されていて、アーティストレベルが高い上に全員イケメン。当時は学校でジャニーズの方が人気強かったですが、「DA PUMPは歌もダンスも凄いしかっこいいよね!」と、男性人気も多かった記憶。
メンバーは大分入れ替わっていますが、現在も健在でこの曲の約20年後にU.S.Aで再ブレイクするの胸アツ。

◆R.Y.U.S.E.I. (2014) - 三代目 JSOUL BROTHERS from EXILE TRIBE

シンガーとダンサー(パフォーマー)の役割を明確に分けているのが特徴のEXILEなどのLDH系。ジャニーズが中性的な少年らしさを売りにしているのに対し、LDHはワイルド系で筋肉でギラギラ感が魅力です。ランニング・マンが流行りレコード大賞も獲得した一曲。
男性グループは真似したくなる流行の振付が生まれにくいので、この曲やDA PUMPのU.S.Aのような名パフォーマンスがもっと生まれてほしい!

5. 韓国のボーイズ・グループ

国内だけでなく、米国や日本でも売り出せる、両国のアイドルグループの良さを合わせた最強のグループを作る準備が始まり、2000年前後から頭角を現す韓国の大手アイドル事務所の多くが、男女ともに日本のジャニーズ事務所をロールモデルとした「練習生」システムを採用し、オーディションやスカウトで若者を集めて宿舎生活をさせ、歌やダンスを特訓し、かなり厳しい基準をクリアした練習生のみをグループメンバーとしてデビューさせていきます。また、メンバーはデビューしても同じ宿舎で共同生活することが多いようです。

韓国が、ソロアイドルよりグループに力を入れたのは、ソロで戦うには世界の壁はまだ厚く総合力で勝負したこと、日本では「グループ自体に人気がある」こと、欧米では逆に「人気グループの枠が空いていた」ことに加え、異国で逞しく活動するには「グループでの共助・相乗効果・結束力」が必要と考えられたからかもしれません。

楽曲は、初期は日本へのアプローチのためもありJ-POP的要素が強いものが日本に輸入されていましたが、アメリカへの進出に目を向け始めた頃から世界で人気の根強いヒップホップ・ラップ要素を取り入れたダンス系の曲調が増えました。ラップ担当・ボーカル担当が分かれており、さらに低音・高音の特徴もうまく分担させているグループが多いです。

特に近年は、男女ともに韓国の今どきのメイクに、曲のコンセプトとメンバーの個性を生かした衣装で、ユニークな振付フォーメーションカル群舞を取り入れたシンクロダンスがK-POPグループの特徴となってきています。人数も4~10数人と多めでダンスフォーメーションにバリエーションが出ています。ダンスの練習動画の公開も、K-POPが広めた大きなカルチャーで、ファンを拡大するきっかけにもなりました。

K-POPグループのその他の特徴は、グループとファンとのつながりに重点が置かれ、うまく表現されていることです。
フルネームではなくメンバーごとに「J-HOPE」のような通称の呼び名がついており親しみを持って覚えやすくなっていたり、「ARMY」のようにグループ別にファンにすら名称がつけられていたり、ライブでの合いの手的な掛け声までもが公式に設定されたり、メンバーごとではなくグループごとに公式ペンライトが存在したりなど。握手会やファンミーティングでファンとの直接交流も積極的に行われます。

音楽番組以外のTVや映画出演もありますが、あくまでグループの販促の手段であり、コンサートや上記のファンとの交流やが活動の中心となります。

6. K-POPの日本での成功

K-POPは黎明期、国内での活動と並行して、文化や言語が似ていて距離の近い日本での活動を英語圏に先行して開始します。
初期のK-POPがどこか曲調に親しみが持てたり、彼らが日本語版の曲を出したり日本語を勉強して積極的に日本のTVに出ていたのはこういう理由があったのですね。バラエティ色の強いボーイズ・グループが多くなっていた日本にとって、見た目も洗練されてアーティスト力も高いK-POPは新鮮で人気を集めました。

日本のテレビやマスコミも、反韓ムードが高まる前までは、K-POPを含む韓流を後押ししていた印象です。おそらく当時は国内の作品を利用するよりコストも安かったため、両国の需要と供給がマッチしていたのでしょう。

Share The World (2009) - 東方神起

男性K-POPグループの第一人者の東方神起。日本語でこの歌唱力。J-POP感もあり人気アニメ・ワンピースのOP曲にもなった曲です。5人から2人体制&脱退後ソロ活動になりましたが、日本では今でもこの頃のファンを中心に、お姉さま層からは根強い人気!

◆FANTASTIC BABY (2012) - BIGBANG

圧倒的個性を放つBIGBANG!ファッション性髪型アイラインが印象的。男性ファンも多いのではないでしょうか。ダンスも曲もとっても魅力的な一曲。スキャンダルや脱退もありましたが、現4人メンバーは兵役も終了。カムバック待ってます。

◆HIT (2019) - SEVENTEEN

総勢13人のSEVENTEEN。現在、若者を中心にすごい人気ですね。
この人数でダンスも合ってるし、メンバーが作詞・作曲・振付をすべて自分たちでプロデュースしているというから脱帽。

7. 高まるK-POPグループの競争率と避けられぬ兵役

国内および日本での成功により、K-POPアイドルグループを目指す若者が増え、グループが興隆し、競争率も激しくなります。
日本のアイドルが音楽以外の活動に力を入れ個性を出すことで勝ち残りを図ったのとは異なり、韓国のアイドルは「音楽・パフォーマンス力」の伸張や向上に力を入れていきます。
韓国政府や企業スポンサーのバックアップが進み、国内の音楽番組や賞レースが多数かつ大規模になったことと、世界の舞台へ進むには音楽的評価が重要な意味を持つためです。
韓国の音楽賞のステージの規模とパフォーマンスの豪華さはもはやグラミー賞より凄い気がします。

BTSの音楽賞ステージでの豪華パフォーマンスは参考までに下記記事をどうぞ。

日本なんてJ-POP全盛期は毎日あった音楽番組、いまや数えるほどだし、レコード大賞で初めて聞く曲が大賞取っちゃう時代ですからね。。また、日本の音楽番組では、曲の一部のみをTV用に再構成して披露することが多いですが、韓国では一曲まるっとフルで披露するのも特徴で、そのためかK-POPのタイトル曲は1曲の長さが短めに作られています。

こういった環境から、K-POPグループ・個人の音楽能力の質が底上げされ、才能あるメンバー・練習生の中には、自ら作品をプロデュースする力を培うメンバーも生まれます。

また、韓国男子は30歳を前に約2年の兵役が義務付けられているため、最も輝かしい20代で活動休止期間が必ず発生します。
スキャンダルやグループの不和・時代の変化・事務所との確執により失速するグループも多かったり、複雑なパフォーマンスを継続するには若さや体力が必要だったり、とにかくボーイズ・グループの流行り廃りの循環スピードが速い韓国。
新しいグループに与えられるチャンスは大きい一方で、既存グループが成功し続けるには常に努力と進化が必要になります。

そして、兵役の休止期間が来ることがわかっているという限定感があることで、活動期間中のグループ活動の熱量や濃度が、メンバーにとってもそして何よりファンにとってもより色濃いものとなっています。

8. K-POPの世界での躍進

国内の激しい競争率に勝ち残り、日本で成功したK-POPアーティストですが、日本で反韓の雰囲気が高まりこれ以上の発展が見込めなくなったことと、Youtubeを起点とするPSYの『江南スタイル』の大流行により、視野を世界へと広げ、無料配信動画や楽曲のストリーミング・デジタル配信、各国でのKコンなどのイベント参加をより一層積極的に行います。
2010年代は、どこにいてもスマホで片手で簡単に遠い国の情報や映像・楽曲を楽しめる時代に変わる転換期でもあり、K-POPは上手にオンライン時代の流れに乗りつつ、同時に現地でのオフラインな草の根活動も並行して行いました。

K-POPに興味を持った人が検索し、たまたま見た作品に心を動かされ、自然に話題になり、そうして各国でも少しずつ人気が出始めます。韓流の輸出で韓国のドラマや映画も海外で人気となり、その挿入歌OSTからK-POPの門を叩く人も出てきました。

楽曲が英語詞でなくても、良質な楽曲やパフォーマンス、魅力的な個性があれば、世界が認めてくれることが証明され、K-POPが世界を目標とすることは決して非現実的なものではなくなったのです。

K-POPコンテンツは本当に溢れんばかりネットで無料で転がっているので、ファンからするとありがたいですが、著作権にルーズすぎて少し心配。。

一方で、日本のお茶の間への露出は減っていったものの、単価の高いCDが売上の多数を占め、一度好きになるとなかなか離れない一途な持続力のあるファンの多い日本に対しては、CDやグッズ販売に力を入れる方針を継続し、ライブ活動も引き続き積極的に行われます。

◆GANGNAM STYLE (2012)- PSY

異常なブームだった江南スタイル36億再生!欧米がK-POPを知るきっかけになった曲です。いろいろ話題になりましたが、いや、名曲だと思いますよ。ダンスも面白いし。私も当時何度も聞きましたもん。


9. 届く可能性のある世界制覇に向かったBTS

BIGBANGEXOSHINeeなどの先輩K-POPボーイズ・グループたちの世界での躍進は、BTSの世界的なアイドル・アーティストになるという夢に大きな現実味とモチベーションを与えます。
結成当初から、日本・アジア・欧米での国外ライブ活動も積極的に行っており、現地での反応や大舞台でのパフォーマンス経験は彼らを世界的アーティストに成長させていきます。

K-POPの歩んできた歴史を下地とし、デビュー当時から高いレベルの楽曲製作やダンスパフォーマンスに努力を惜しまなかったBTS。周りに媚びずに自分たちのメッセージを自ら作詞・作曲して発信するスタンスは変えずに、扱う音楽ジャンルをヒップホップ寄りから大衆的でポップなジャンルにも広げることで、人気の幅・層を徐々に増やします。

そして、SNSの戦略的利用や親しみやすさ、ARMYというファンの強力なパワーを起源として、韓国人アーティストとして初めて全米アルバムチャート「ビルボード200」第1位達成、夢の舞台・グラミー賞に参加するところまで到達。

では、なぜK-POPの中でもなぜBTSだったのか。それは下記で紹介した残りの9の理由をこれから少しずつ掘り下げて紹介したいと思います。
次回は、「②強烈なダンスパフォーマンス」を紹介予定!

10. K-POPが与えた日本ボーイズ・グループへの影響

近年の韓国では、BTSの世界的成功に加え、国民がプロデューサーとなる視聴者投票型のアイドルグループ公開オーディション番組も人気となり、K-POPグループの人気の循環はいまだ速く競争率は激しいままで、世界の注目も高まっています。

◆Energetic (2017) - Wanna One

韓国の男性アイドル公開オーディション番組『PRODUCE101 season2』の合格者11名で結成されたWanna One。すでに解散し、ソロで活躍しているメンバーも多い模様。


さて、最後に、最近の日本のアイドルグループはどうでしょうか?
日本の音楽市場は、人気ランキング上でも売上でもCDやカラオケの効果が大きいため、「カラオケで歌えて踊れる」おなじみのJ-POPを、握手券商法複数形態商法で、固定ファンに同じCDを複数枚買わせて売上を確保し始めたことで、見せかけの音楽市場を作り、良曲を多くの人に浸透させることや、新ジャンルにチャレンジすることが疎かになった気がします。アイドルソングの中にも名曲があるのに、集計上わかりにくくなってしまったのも残念です。
「モノ」の売上に拘り、SNS・ストリーム・デジタル配信を推進せず逆に制限してきたことは、国外の人がパフォーマンスに気軽に触れる機会を減らす結果にもなりました。
また、アイドルが長寿化・マルチ能力化・地域密着型になったこと、国内の音楽番組も激減したことで、音楽パフォーマンスによる競争や進化が生まれにくくもなりました。

2019年、世界で最も売れたアルバムのトップ3知っていますか?

1位『5×20 All the BEST!! 1999-2019』- (330万)
2位 『Lover』- テイラー・スウィフト (320万)
3位『MAP OF THE SOUL : PERSONA』 - BTS (250万)

なんと、嵐のベストアルバムがCDとしては世界一!素晴らしいことですが、3分の2が日本国内の売上です。
ストリーミングやデジタルも加えた世界総合TOP10ランキングになるとテイラー・スウィフトが1位、BTSも7位に入っているのに対し、嵐は入っていないというかCDアルバム以外の配信自体がないので、CD至上主義の日本がガラパゴス化していることがよくわかります。
BTSは、デジタル配信もストリーミングも行いつつ、特典付きや複数形態のCDを売る日本得意の手法も上手に使っての3位。戦略がうまい。
ここ1年くらいはジャニーズも配信系に力を入れ始めた印象ですが、やはり世界の時代の流れからは遅れを取っている気がします。

そして、2019年以降、前述の韓国のオーディション番組は日本にも輸入され、J01という日本人11名のボーイズ・グループがデビューし、NiziProjectからはガールズ・グループが生まれる予定です。

パフォーマンスの完成度も高いしビジュアルも良いので人気も期待できますが、デビューのタイミングがこのご時世なのでパフォーマンスを存分に披露できていないのが残念です。

◆無限大(INFINITY) (2020) -JO1

ここで重要なのは、彼らはJ-POPアイドルではなく、日本版K-POP風アイドルだということ。
「世界へ羽ばたく日本のボーイズグループ」を作ることが番組の趣旨であったことから、彼ら自身も「世界を目標に」と明言していますが、彼らが憧れロールモデルとしているのは、K-POPアイドルたちなのです。彼らの公開オーディション中の楽曲選択も、ダンス課題曲は圧倒的にK-POPが人気で争奪戦でした。

ラップを含むEDM系の楽曲・振付・フォーメーション・パフォーマンスだけではなく、ファンに名前をつけたり、ファンミーティングを実施したり、SNSやYoutubeで練習やオフショット動画公開したり、完全にK-POPアイドルのアプローチ。お店でもK-POPコーナーにCDが置いてあります。

既存のJ-POPアイドルは、「世界が目標」といってもアーティストレベルを考えてもピンとこないんですよね。もちろん、J-POPアイドルは彼らにしかない良さもあり、ナンバー1よりオンリー1、日本だけで成功することにも価値があると思うので、どちらが正解とかはありません。

ただ、世界を股にかけるアイドルを目指す日本の若者が現れたとき、憧れの対象になるのは年齢も近く、世界を席巻した一番身近な手本であるK-POPアイドルになってしまうのも仕方ないかなと思います。

K-POPアイドルが元はJ-POPアイドルを手本に進化してきただけに複雑な気持ちもありますが、せっかくであればK-POPアイドルの真似で終わらず、ぜひとも日本やJ-POPの良さも+αした唯一無二のグループの世界的グループに成長してほしいですし、彼らの新しい風により日本の新旧ボーイズ・グループのパフォーマンスの質がさらに相乗効果で上がり、それを楽しんで鑑賞できる機会が増える未来を期待したいです。


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