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甘く見ていた、京都・大文字山。

少し古い話ですが、これは去年の秋。
岡山県の棚田で稲刈りを手伝った後、クルマで神奈川県まで帰る途中、京都に立ち寄りました。まだ紅葉には早い時期だったけれど、以前から、京都でヒマなときに行ってみたい場所があったのです。だからこれはちょうど良い機会。それは、誰もが知っている、あの大文字山です。
僕は最近”低山”にも興味を持ち始め、これからは日帰りの低山歩きも旅のレパートリーに加えようと思っていたのだけど、これはその第一弾。最初が大文字山だなんて、縁起がいいじゃありませんか。

銀閣寺の裏から入ります。

京都の人にとって、ここはおなじみのコースなのでしょう。地元の友人によると幼稚園の遠足コースでもある、とのこと。
だから少し甘く見ていました。シューズこそトレイルランニング用ではあるものの、あとは街歩きと何ら変わらない格好。水を持ってカメラを持って、と。
登山口は銀閣寺(正確には慈照寺銀閣です)の入り口から左に回ります。

今回は銀閣寺に入らず、この境内図の手前を左へ。
すると間もなく「大文字入り口」の案内。駐車場を抜けると心地よい川沿いの道。
川沿いをさらに進むと、この案内。川を渡って左の階段へ。

さてと。ここまでは京都東山の美しい水の流れを眺めながら5分ほど。そして階段を上り始めるのだけど、ここから先、イヤというほど階段に向き合うことになる。しかもこういう場所の階段って、一段ごとに段差も幅も違うから、あっという間に脚に乳酸が溜まり始めます。これで雨が降ったら、滑って登りにくそうだ。

途中で、走って登る人に追い抜かれる。

しかもこの日は気温が高かったのですよ。たしか前日到着したときは、10月だというのに30℃を越えていたはず。そんなときにジーンズとコットンのシャツで山に登っちゃいけません。あっという間に汗を掻くし、休めば冷えるし。そう、いかに街の中の山とは言え、ランニングの格好プラス羽織るもの、くらいの吸湿速乾装備で来るべきでした。雨が降っても両手をあけておくために、傘ではなくてレインウェアを。もちろん、山に入ると飲み物が買えないので、事前にご用意を。

こんな階段が延々と。息が切れていたので、写真もブレています。

登り初めが正午に近かったので、下りてくる人もちらほら。子ども連れの家族も多く、子どもたちとすれ違うのを余裕で待っているふりをしながら休む。「ありがとうございます」なんて言われるけれど、申し訳ない気分。
「上まで、あと何分くらいですか?」と聞いてみると「まだまだ、これで半分くらいですよ」とのこと。つまり、あと20分くらいか。やれやれだぜ。

30分くらい登ったところで、このように開けた場所に出る。休んでいる人多し。この後に、ガツンと壁のような階段が待っているんだけどね。

上の写真の広場で休んだ後、気を取り直して登り始める。すると何ということでしょう、ランニングのウエアで走って登ってくる人が追い越していった。足もとはしっかりしているし、たいしたもんだ。
休憩から10分ほど歩いただろうか。下りてくる人に「あと火床までどのくらいですか?」と聞いたところ、「もうすぐですよ」とのこと。よ〜し、と、最後のアドレナリンに点火したところ、こんな階段が現れた。

『note』には、階段が好きで、階段の写真ばかり上げている人がいる。毎回「おもしろい趣味だなぁ」と思いながら見ているのだけど、ぜひともこの状況下でこの階段を見てもらいたい。もう知ってるかな?

これはもはや、トドメというかイジメですね。が、しかし、神奈川県の大山にもこういう階段がある。あそこはどうってこと無く登れるじゃないか。だったらここも、ということで登り始める。すると段差が一定なので、けっこうラクに登り切ってしまった。

そしてついに、たどり着いた絶景。

トドメの石段を登ると、あとは比較的なだらかな登り。するってぇとどうだい、さっき追い抜いて行ったランナーが、再び駆け下りて行った。すごいな。彼は天狗なのか。
で、周りの樹木が低くなり、時おり京都の街が透けて見えるようになってきた。もう目的地は近そうだ。
そして、ついにたどり着きましたよ。この絶景に。

これは登山道から「火床」のある展望台に出た瞬間。
そして、これがあの有名な「火床」なのだ。大文字の横線と、左右の払いが交わるところにある。

展望台には20名くらいの観光客。なぁるほど。これまで何度も京都に来ているのに、なぜここには来なかったんだろう。もったいないことをしていたようだ。
どうせだったら「大」の字のいちばんてっぺんまで行ってみようと思った。振り向けば再び階段。でも、こればっかりは行かねばなるまい。

この階段は、オモムキがあってよろしゅうおすな。
いよいよここが大文字のてっぺんです。ここまで登ってきた甲斐があるというもの。そして下りてからの楽しみは、これから大文字山を見るたびに「オレ、あの大の字のてっぺんにいたんだぜ」と自慢できること。「そんなの自慢になりゃしまへん」と言われてもいいのだ。

なお、この火床が山の頂上というわけではなく、ここは中腹くらい。頂上はここから10分ほど登ったところで、そこの標高は465.4m。なお、大文字山は如意ヶ嶽という山の支峰であり、如意ヶ嶽の標高は472mなのだという。なるほど。
さらにそこは、京都一周トレイルの一部でもある。蹴上インクラインの近くにもトレイルの入り口があったけれど、あそこから尾根伝いに続いているのだろう。いずれ歩いてみたいもんです。
ここから日没を見たらキレイだろうな、とは思うけれど、日没までここにいたら、帰りの山道は真っ暗闇のはず。ヘッドランプがあったとしても、階段を踏み外す可能性は大きい。安全に歩ける、日没〜夜景見学のツアーなんて無いのかな?

帰りは街の中まで歩いてみる。

30分ほど展望台で過ごし、そろそろ下りるかな、と。登った山は、いずれ下りなくてはならない。そのための体力も残しておかなくてはいけない。
下り始めて15分ほど、道の半分くらい来たところで、再びあのランナーが駆け上がってきた。おい、何という体力なんだ。
呼び止めては悪いかな、とは思ったけれど、道を譲りながら「何往復してるんですか?」と聞いてみた。すると「今日は二往復ですよ」と笑って走り去って行った。そうかそうか。近所にこういう山があると、そういうトレーニングもできるのだ。それもまた、京都の人の羨ましいところ。

意外に呆気なく山を下り、京都大学方面に向かう道は緩い下り坂なので、歩いていて心地よし。良いクールダウンになりそうなので、このまま出町まで歩くことにして、途中、学生街の喫茶店でひと休み。再び歩き始めて、20分ほどで鴨川の対岸にたどり着いた。すると、どうしても見たくなるよね。さっきまでいた、あのお山。

大文字のあのへんの、あそこにいたのかぁ… と、しばし感慨に耽る。

「この程度の山で、そんなに疲れて情けない」
と多くの人は思うかもしれない。僕もそう思う。とは言え一方で、初めて登る山は、ペース配分がわからないので疲れるのです。ちょっと階段の多い参道のようなもの、と油断をしていたので、かえってキツく感じたのだろうと思う。甘く見てスミマセンでした。もう勝手はわかったから、二度目は大丈夫、のはずです。

ゴールはここにいたします。この信号を渡って、右は豆大福で有名な、行列のできる和菓子屋さん。さらに右に行くと、昭和の香りがうれしい出町枡形商店街。

ということで、よ〜く歩きました。
この信号を渡って、左にある岡田商会さんのハムカツが大好物なのですよ。もちろんその場で揚げてくれます。今ではあまり見なくなった、薄くてパリッとしたハムカツであることもうれしいポイントです。












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