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企画書の作り方が分からない……【①企画立案-後編】

企画立案の項目も、いよいよ後編。

 前編・中編では
 「ターゲットユーザーを定める。ターゲットユーザーを想定してゲームのイメージを固める。ゲームを膨らませる」
 ってことのプロセスについて、ざっくりとまとめた。

 ここまでの内容で「こんなゲームを作ろうと思ってます」というのは、考えられるのだけど……ビジネス的には足りないよね。
 ってのが、今までのまとめ。

 というわけで、後編についてはビジネス的な側面では、どんなことを企画立案時に考えておくべきなのか、って話だ。

 ここまでくると、プロデューサーの領域に片足突っ込んでるので、プロデューサー未経験の僕よりも、もっと詳しく正確に書いてる人が居るんじゃないかな……って気がするけど。
 まあここまで来たので、指さされてpgrされる覚悟で書いていこうと思うよ。


■ターゲットユーザーの見込み人数を調べよう

 中編では、進行サンプルのところで、なろうユーザーをターゲットにして、ユニークユーザー1400万人だとか書いたわけだけども。
 これはもう、メチャクチャ情報としては雑だよね……。だって、なろう読者層って言ったって、かなり好みのバリエーションがあるわけだし。

 サンプル企画案のケースを考えると、追放モノを対象に選んだので、少なくとも同様の作品の情報を集めるべきだ。
 例えば、書籍化されているなら、累計売上部数がどれくらいいってるのか?
 書籍化されていないなら、作品のブックマーク登録は何人くらいなのか?
 こういったものを、ヒットしている上位作品だけでもいいので、調べていくと、もう少し具体的なユーザーの規模が見えてくる。

 もちろん、忘れちゃいけないのが、作ろうとしてるゲームジャンルは、そもそも売れてるのか? って観点だ。
 その点でいくと、ローグライクの国内売上は――

 うん、とっても厳しいね。
 最近だと「ポケモン不思議なダンジョン 救助隊DX」が国内売上で36万。全世界でミリオン超えという好成績だけど、他は割と厳しめ。
 とはいえ、そもそも家庭用ゲームの市場規模自体も縮小してるので、あまり悲観しすぎても……って感じだ。

 なろうのユーザー状況、現状の作ろうと考えてるゲームジャンルの売上傾向、この辺りの情報をテーブルに乗せてみて、一定数売れる見込みがあるのか?
 ってのは考えなきゃいけない。

 一定数がどれくらいかって……?
 うーん、そうだなあ……。
 個人的には10万は、数字上売れるって見込みは欲しいと思うね。※小物の発想

 調べた数字的に、ユーザー規模的にも「ちゃんとビジネスになりそう」と感じたなら、その理由を調べた数字と合わせて説明する資料を考えよう。
 それを読んだプロデューサーが
「ああ、なるほど確かに……これならいけるかな」
 って思ってくれたら、あとは企画内容の勝負だぞ!

 逆に言えば、ここで「イケそうかな?」って思ってもらえないと、企画内容で勝負できないって話でもあるぞ!
※就活用ならここまで求められないと思うけど……。


 上で書いたのは、あくまで前/中編で書いたサンプル企画を基準にした調査例。
 実際には君が作りたいゲームとターゲットユーザー層を考えて調査しよう。
 公式ツイッターのフォロワー数だとか、売上以外にも、ユーザーや市場規模の指標になる情報はあるものだ。

 今さらだけど、これはターゲットユーザーを決める時に調査すべきことでもある。
 前編では、話がとっちらかるから、あえてカットしたけどもね。

 調べてみて、ゲームジャンル、ターゲットユーザー、どう考えてもビジネス的に厳しい数値しか出てこなかったら……それはもう企画から考え直すしかないよね。


■座組を考えてみよう

 座組って書くと、人によっちゃ「なんですそれ?」って状態だろう。
 もう少し分かりやすい言い方で書くと、ゲーム開発に関わるスタッフやキャストのチーム編成だ。

 とは言っても、ここで必要なのは、細かくスタッフの名前をひとりひとり挙げていくことじゃあない。
 参加することで、ターゲットユーザーに興味を持ってもらえるような人物の推薦。こう考えてもらえると、イメージが近いと思う。

 ゲーム開発において、座組の所で書くことが多いのは、こんな所かな。
 ●シナリオ担当  「あの作家さんがシナリオ担当!」
 ●キャラデザイナー「〇〇で人気のあの方が、キャラデザを!」
 ●声優 「〇〇で話題の、あの声優がヒロインの声を!」
 ●音楽 「今をときめくあの○○が、OP曲/BGMを担当」 

 プランナーである自分自身が、有名ディレクターや、有名プロデューサーであれば、そりゃ当然自分自身もウリになるけどさ……。
 そんなこと言える人間は、ひと握りですよ。

 とまあ愚痴っぽいことは置いておいて、これが座組案で考えることだ。
 大事なのは、自分の趣味でキャスティングを決めることじゃないぞ。
 あくまでターゲットユーザーの視点で「この人を起用したら、ゲームを買いたくなるか?」って考えなきゃダメだ。

 ここまで読んで、こう思う人もいるだろう。実際にキャスティングできるか分からない、妄想じゃん……って?
 まあそうだね、ぶっちゃけ妄想のパターンで終わる場合も多い。基本的に企画段階で、参加交渉なんてできないしね。
 けれど、どういう方向性のキャスティング有効と考えているか? ってのは重要だ。
 この人達を起用することで、売上が万単位で違いますよ、って話なら予算を増やすことだって考えてくれるだろうし。

 さて、ここまで書いたが、実はここの座組の所こそ、プロデューサーの領域に大きく踏み込んだ話だ。

基本的に企画段階で、参加交渉なんてできない


 なんて、書いたけれども、それを覆す手段がある。

 それは座組に挙げた人物と個人的に話をするコネがある場合だ。
 もちろん普通に生きていると、ここで提案するような人達と接触する機会なんてものはない。

 だけれども、いくつものゲームを手掛けているプロデューサーであれば、過去の開発経験でコネクションがあったりするものだ。
 それはプロデューサー個人の強みでもある。

 だから、実はここの部分は、場合によっては書かない方が良かったり、聞けるようなら事前に提出先のプロデューサーに軽くヒアリングしてみたりもする。
 この辺りは、企画書を出すシチュエーション次第だ。

 就活用なんかなら、書いてあれば「ここまで考えてるのね」って話で終わる。
 実際に持ち込みを行うなら、相手プロデューサーの反応を見つつ、情報を出すかどうか考える感じになるだろうね。

 あ、もちろん君自身が声優さんや音楽アーティストにコネがあるなら、それは強い武器だ。上手く使ったらいいと思うよ。


■プロモーション案を考えてみよう

 どんなに面白いゲームだろうと、その存在を知って貰えないと、そもそも買うかどうかの選択にまでたどり着かない。

 特にインターネットが当たり前の情報インフラになった現代だと、日々アップデートされる娯楽情報が多すぎて、何もしなければ情報の波に押し流されて、ネットの海深く沈むことになる。

 そういう意味では、プロモーションというのは、ある意味で開発そのものよりも重要になってしまっているのが今のエンタメ産業だ。
 うーん……つらい。

 一応言っておくけど
「面白ければ売れる」
 なんてことは期待しないほうがいいぞ。


「セールスポイントが、SNS経由でもイメージできる」
って場合のみ、バズって売れる余地はあるけれどね。
※天穂のサクナヒメとか

 話題になるためなら、芸能人だって、vtuberだって起用するぞ。
 埋もれて、認知されないよりも、そのほうがずーっとマシだからだ。
 そういう意味では、これは上に書いた「座組」にも、大いに関係ある話でもある。
 そもそも座組ってのは、プロモーションを意識して考える部分が大きいからね。


 「その金を開発費に当てて、ゲームを面白くしろよ」
 って言われそうだが、それもゲームの存在を認知されないと、文句を言われる機会すら無いのだから仕方ない。

 とまあダラダラ語ってみたけれど、正直なところ僕はこの項目の情報は弱いんだよね……。

 世の中には、色々なプロモーション方法がある。
 TVCMだとか、WEBバナー広告だとか、他にも細かい分類で列挙すると、専門用語を書き連ねることになるくらいにはね……。

 どういうユーザー層に、どういうプロモーションをすると、一番コスパが良いのか?
 この辺りに精通してるのは、広報や、ベテランプロデューサーの領域の話だ。

 それに、プロモーションに割り当てられる予算も、基本的に開発側に権限があることは稀だ。

 とはいえ、考えを放棄するわけにはいかない。
 例えば、ターゲットとしているユーザー層の好みの傾向や、行動パターンが予測できるなら、彼らが普段使うサイトや場所などで広告を出すことを考えられる。

 またゲーム自体にも、例えばSNSで拡散されるキッカケになるような仕組みを、システムとして組み込んでおくこともできる。
 この辺りは、ゲームクリエーターとして、ゲームデザイン能力の範疇で頑張れなくもない話でもある。
 ※ゲームサイクルの一環に、自然にそういうシステムを取り込むのは、言うほど簡単じゃないけどね。

 とまあ「本職でないから、考えられなくても仕方ない……」なんて言えないくらいに、ネット時代のゲームは、プロモーションと切っても切れない関係になってしまったのだ。


■開発予算を考えてみよう

 企画書においては、どれくらいの開発費でゲームを作れるか概算だけでも出しておく場合がある。

 これを出しておけば、
 「ターゲットユーザーの規模から考える売上見込み」-「開発費+プロモーション費」=利益
 というざっくりした計算をプロデューサーが出来るからだ。

 どこまで行っても机上の空論ではあるけど、机上の空論の時点で赤字になるようじゃダメですよ、って話でもある。

 開発費の試算には、大きく分けて2つの方法がある。

 ①:前に同じようなゲームを開発したことがあって
  「その時はだいたいこれくらいだった」
  という経験則で書く。

 ②:頑張ってゲームに必要な仕様や、素材の点数をザックリと洗い出して、「どれくらいの人数」「一人辺り月いくらで」「どれくらいの期間働く必要があるか」を試算して書く。

いずれにしても、これは就活用の企画書には絶対書けない内容であることは確か。
 最終的にプランナーになって、実際に企画の持ち込みをするぞー、って時には、こういう情報も必要になるかも、くらいに考えておいて欲しい。


■考えた内容をまとめておこう

 これで大体、企画書で求められる可能性がある、ビジネス的な情報のパターンはまとめたんじゃないだろうか。

 ターゲットユーザーの規模については、持ち込みの時にはかなりの頻度で要求される情報ではあるけれど、その他の情報については、必要なパターンもあればそうでない時もある。
 なので、基本的には資料として作っておくけど、ゲームの企画とは別資料にしておいて、プレゼンの流れで出した方が良さげな空気になったら
 「こんなこともあろうかと」
 って顔して、出すのがおススメである。


 さて、3部作になってしまった企画立案パートも一旦これで終了だ。
 色々はしょった気がしないでもないけど、あんまり長すぎるのもどうかと思うしさあ……。

 企画立案パートで触れたことは、自分が作ろうとしているもの内容を具体化し、それを現実的に商品として作ることを考えようって話だった。
 なので、ここで書いたことを文字に起こすと、結構具体的だし、情報量もかなりあると思う。

 しかし、それを全部書き連ねた所で、企画書になるわけじゃない。
 「一目見ただけで、読む気が失せる、文字がギッシリのナニカ」が出来上がるだけだ。

 なので企画書という形に落とし込む段階では、情報を整理し、ページの内容、書く順番も考えなきゃいけない。
 このあたりは、次の【②内容構成/プレゼン】の内容になるね。



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