『盆栽』は語らないが、盆栽を通じて人は語る。
今回は、2回目の盆栽の授業を終えた後に、先生と雑談して感じた『気づき』を書き残します。
盆栽教室にいたオーラのあるお爺さん。
私は盆栽教室まで自宅からバスで通っており、帰りのバスが来るまで時間があったので、盆栽の授業の後は教室でゆっくりさせて頂いた。
先生はその間、チョキチョキと自分の盆栽を整えていた。
『今日一緒だった野田さん(仮名)いるでしょ?あの人凄い人なんだよ。』と先生が唐突に話し出した。
どんな凄い人なのか先生に聞き直すと
『ペットという文化を日本に持ってきた人なんだよ。今はその業界の会長とかしているらしいよ。ネットで調べたら名前が出てくるよ。』と教えてくれた。
私は『へー。そうなんですか。』と相槌を打ちながらも、何だか納得した。
野田さんは、お爺さんながらも背筋が伸び、身なりがしっかりされていて、何か不思議なオーラのようなものがあったからだ。
人と違うシャープな視点。
先生は野田さんの話を続けた。
『あの人はお金が沢山あるから、コロナ禍の前は世界旅行によく行ってて、旅行に行った場所で撮った写真を毎年カレンダーにして、私や生徒さんに配ってくれてたんだよ。』
先生は野田さんの話を続ける。
『それでね。そのカレンダーの写真はもちろん素敵なんだけど、全ての写真に何か皮肉めいた野田さんの言葉が添えられていて、まぁそれがね、面白いんだよね。ちょっと人と違った感性と視点を持った人なんだろうね。』と。
さらに先生は続けた。
『事実、犬や猫をペットとして飼う文化が無い時に、日本にその文化を浸透させた人だから、着眼する所が人と少し違うんだろうね。』と。
野田さんの話をしている時の先生は、野田さんがペット業界で凄い人いう事以上に、野田さんの感性を誉めているような表情であった。
先生による盆栽ビジネスの視点。
その後は、野田さんがどんな人だったのかという話から、話題は先生の話に変わった。
正確に言うと話が変わったというより私が変えた。
先日、東京は丸の内にある『TRADMAN’S BONSAI TOKYO』と言うギャラリーに行って来たのだが、色々と刺激を受けたからだ。
丸の内で実際に盆栽を見て、独自の演出の仕方は勿論の事、ビジネスのやり方も上手だなぁと感じた。
そこで、先生は盆栽をビジネスの視点でどう考えているか聞いてみたいと思いお話を切り出した。
話の入り口は、先生に『盆栽のリースレンタルとかしているんですか?』と聞いてみた。
聞いた理由は、トラッドマンズ盆栽が積極的に盆栽のリースレンタルをしていたからだ。
先生の答えは『していない。』との事で、年に何度かお寺や茶会でレンタルの依頼が来るが、基本的にはお断りしているとの事だった。
理由を聞くと、お互いの希望金額と合わない事が多いためだと言っていた。
『盆栽をネットなどで販売はしないのですか?』とも聞いてみたが答えは『NO』だった。
ネットの事例とは違うが、数年前に中国人バイヤーが来日して、盆栽教室にある盆栽の半分を買い占めようとした事があったのだという。
しかし、先生はその時も一つも売らなかったそうだ。
売れば大きな利益が出そうではあるが、先生は『あくまで教室に通ってくれる生徒さん達に盆栽を用意している。』と話してくれた。
『人と違う』を頭ごなしに否定しない。
私は先生に、先に述べた『TRADMAN'S BONSAI』について知っているか聞いてみた。
先生は、SNSを全くしないし、TRADMAN'S BONSAI代表の小島鉄平さんと年齢的にも親子ほど離れているので、絶対知らないだろうと思いながら聞いてみた。
しかし意外にも『勿論知っているよ。』との事だった。
さらに先生は『新しい形で盆栽を広めていて素晴らしい。』と、意外な答えを返してくれた。
勝手な先入観で考えると、伝統と格式がある日本文化は、新しい流派を嫌いそうな気がしたが、先生は全くそういった感じではなかった。
『面白い人達だよね。あぁいう人達がどんどん世に出て欲しいね。』といった具合で今までとは違う盆栽の広め方をしている人達に興味深々の様子だった。
私はこの時、先生の新しい人達を『頭ごなしに否定しない』ところが素敵だなぁと感じ、この先生を選んで良かったかもと思えた瞬間であった。
『盆栽』の奥には人の気持ちがある。
そんなこんなで、先生との雑談をしていたら、あっという間にバスの時間になり私は自宅に帰宅した。
帰宅するなり妻が私に『今日の盆栽教室どうだった?』と聞いてきてくれた。
先生の薦めで、百日紅(サルスベリ)という花盆栽を購入した事。
正直、花盆栽に自分はあまり興味が無かった事。
を伝えたが、思いのほか妻が喜んでくれた。
『どんな花が咲くんだろ?Googleで調べてみよう。』
『幹の感じが面白いね。』
『花が咲いたら子供達も喜ぶかな?』と。
随分とワクワクとした表情で話してくれた。
その光景を見ると『盆栽』はもしかすると、人と人の気持ちを繋いでくれるツールになりうるのでは無いか?と感じた。
そして、先生が盆栽を続けている理由は、もしかしたらこういう盆栽を通じた会話を楽しんで生きているのかなぁとも感じた。
まだ盆栽教室に通い始めて2回目なので、盆栽に関してまだフワフワしているが、回を重ねるごとに『盆栽』がもたらす効果、『盆栽』に魅了される人達が何を思い、何を考えて盆栽と向き合っているのかを、もっともっと考えを巡らせていきたいなと思えた。
続く
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