見出し画像

【SLOWP連載②】作りながら、使いながら考える。SLOWPが提案する「これからの暮らしの形」

この記事は株式会社SNARKが運営するフィールド型ショーケース「SLOWP」について合同会社ユザメ様に取材いただいた連載記事の二本目となります。
▶︎ 前回の記事「家と空間の、あたらしいあたりまえ。SLOWPが提案する「小屋」という選択肢」はこちら

住宅の新しい選択肢を提案するSLOWP。母体であるSNARKでは、建築設計だけではなく、家具などのプロダクト製作やイベントの企画などさまざまな活動をおこなっています。その核にあるのは、人々の価値観に寄り添うこと。そのために人や物を慎重に見つめ、多角的な仕掛けを地域に送り出してきました。

新しく始まったSLOWPにおいても中心となる想いは同じですが、この場所が表現するのは「これまでのSNARK」とは少し違った考え方なのだそうです。

「徒歩圏内の豊かさ」から見る、新しい町づくり

「これまでのSNARKは『都市的』『無機質』といった印象が強かったように感じています。SLOWPではそのイメージを更新して、私たちの新しい価値観を示せたらと思っています。今までは(高崎事務所や恵比寿事務所のある)駅周辺の街中がメインでしたが、緑が多くて風の通る気持ちのいい場所で、もっと幅広い体験ができる場所をつくりたいと考えています」(小阿瀬さん)

SNARKが事務所を構えるのは、高崎市・田町と渋谷・恵比寿。SNARK代表の小阿瀬さんは、2008年に群馬で独立し、街中を中心に場づくりを続けてきました。その中で新しいお店ができたり、人が集まってきたりと、街の動線やコミュニティが生まれていく様子を目にし、「都市部ではないところ」でも同じことができるのではないかと感じたのだそうです。

「地方創生やまちづくりの多くは、地方の中でも都市部に近いところでおこなわれてきたと思うんです。でも、本当に地方創生が必要なのって、“なんでもない場所”なんですよね。『近隣都市の繁栄』も暮らしが豊かになる要素のひとつですが、それよりも『生活範囲・徒歩圏内の充実』のほうが影響は大きいのではないかと考えています。実際、(高崎市)田町に住んでいた時期は、徒歩でいろいろな場所に行けたことが豊かさに直結していました。街中から離れた住宅地において今その役割を担っているものの代表はコンビニですが、別の選択肢もあってよいと思います」(小阿瀬さん)

変化に合わせて暮らしを設計する

環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が難しくなっている現代。次々と新しい価値観や文化が生まれ、わたしたちのスタンダードは変わり続けています。その中で必要になるのは、「完璧な何か」ではなく、普遍的で変容可能なものなのかもしれません。

小屋という存在、そしてSLOWPという場所が作られていく過程は、そんなこれからの暮らしを探るヒントも与えてくれます。

「この場所は、場当たり的に作っている部分が多いです。例えば、ここにある石や木々は、造成しながら合いそうなものを選びました。実験のような感じで、いろいろと試しながら作っている感覚ですね。新しい挑戦のように聞こえるかもしれませんが、『使っていく中で不便なところを作り替えたり付け足したり、手を加えながら使っていく』というやり方は、昔から暮らしの中で自然にやってきたことだと思います。SLOWPが作られる過程をお見せしながら、そういう価値観も提案できたらと思います」(小阿瀬さん)

現在一般的になっている建築のあり方は、完成形をあらかじめ決めて、そこに向かって設計・建築していくというもの。完成がゴールのため、引き渡して終了になります。しかし、住まいとして建築を考えるならば、実際は引き渡してからが始まりで、何十年と続いていくもの。本来は、“完成したら終わり”ではなく、何十年という期間で起こりうる、さまざまな変化に対応するものであるはずで、本当の意味で「完成」することはありません。必要に応じて変化させながら使うこと。生活者であるわたしたち自身が、その場を設計することも大切な視点のひとつなのです。

“自分らしさ”に好奇心を抱く

わたしたちが直面しているのは、変化だけではありません。さまざまな情報の中で何を選ぶのか。その選択肢は無限に存在します。働き方や生き方も多様になり、「どんな道に進んだらよいのか」「自分らしさとは何か」を考える機会も多くなりました。そんな忙しい生活の中で、SLOWP代表・井上さんは「一度足をとめて、ゆっくりと自分を見つめ直す機会を提供したい」と語ります。

「SLOWPで開催するワークショップやイベントは『今あるところに目を向けて気づきが生まれるもの』や『生活がちょっと楽しくなる色どりを加えられるもの』でありたいと考えています。定番のものよりは、この場所に合わせたものや、参加した皆さんが何かに新しく挑戦できるようなものになるよう心掛けています」(井上さん)

その言葉通り、SLOWPのオープンから月に一回ほど開かれているワークショップでは、SLOWPの土から絵の具を作ったり、世界に一つだけのオリジナルアロマスプレーを作ったりと、自然豊かでのんびりとした空気が流れるSLOWPらしいものばかり。自然と触れ合いながらおこなうワークショップは、自分自身を振り返るよい機会にもなっています。

「ワークショップに参加することで、家庭菜園に挑戦してみようかなとか、DIYに挑戦してみようかなとか、その後の生活につながったらいいなと思います。ワークショップの内容から新しい知恵を得るだけでなく、参加した後に、自分も知らなかった好きなものを見つけて、新しいことに挑戦するきっかけになったらうれしいですね」(井上さん)

SLOWPで表現されるのは、新しい住宅の姿だけではなく、「自分を見つめ直す」という機会そのものです。一度立ち止まって自身を振り返った時にこそ、これからの自分に必要なものが見えるのかもしれません。

次回はSLOWPの造成過程や設計上のこだわり等について、株式会社SNARK代表取締役の小阿瀬直さんにインタビューした内容をお届けします。


9月にスロウプがオープン以来初めてとなる、
オープンデーを開催いたします!

オープンデー・メインビジュアル / デザイン:佐藤麻美

SLOWP Open Dayは、ワークショップ、トークセッション、マーケットと、SLOWPの小屋やランドスケープと併せてお楽しみいただけるイベントです

◆SLOWP Open Day
・日程:2023年9月10日日曜日
・時間:10:00〜16:00
・場所:SLOWP(群馬県高崎市片岡町3-2165-2)
・入場料:無料
・事前予約:不要
・駐車場:臨時駐車場をご案内します。護国神社様駐車場となります。

※雨天中止、別日に延期となります。

※詳細はInstagram(@slowp_view)をご確認ください。

皆さまのご来場お待ちしております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?