見出し画像

【SLOWP連載①】家と空間の、あたらしいあたりまえ。SLOWPが提案する「小屋」という選択肢

株式会社SNARKが運営するフィールド型ショーケース「SLOWP」について合同会社ユザメ様に取材いただきました。こちらの記事は今後2本が続く連載となります。

住宅でも物置でもない、小さな建物「小屋」。好きな場所に建てられるコンパクトさと、まっさらだからこそ持つ可能性の多さが、今密かに注目を集めています。小屋の使い方は、住宅の一部屋よりもずっと自由です。ある時は趣味のためのはなれとして、ある時は週末限定のカフェとして。ライフステージや趣味に合わせてその姿を変容させる小屋は、あなたらしい暮らしを叶えるひとつの選択肢になるかもしれません。

生活がちょっと楽しくなる、自分自身に気づく場所

SLOWP(スロウプ)は、SNARKの一事業として2023年6月にオープンしたフィールド型ショーケースです。約300坪の敷地には、「SLOW DOWN,VIEW YOUR LIFE.」のコンセプトを体現する建物が3つ、小屋が2つ建っています。

「自分らしい暮らし方を具体的に想像できる場所が作れたら」と語るのは、SLOWP代表の井上夏子さん。メインコンテンツである小屋の展示場としてはもちろん、訪れた人たちへの気づきの場としても開かれています。  建物にはそれぞれ「grow(育つ)」「view(見る)」「build(築く)」「strage(蓄える)」「think(考える)」のテーマが添えられています。このうち、小屋として最初に作られたのは「think」。SLOWPのスタッフ、そして協力してくれた施工者さんと一緒にDIYで作ったものです。

まだ制作途中だというこの場所ですが、椅子を置き腰をかけると、風が通り抜けて気持ちがよく、眺めは抜群。「好きに囲まれる場を作りたい」との思いでつくられた小屋には、ゆくゆくは本棚やレコードなどが置かれ、好きなものに没入する空間が作られるとのことです。

もうひとつの小屋「strage」は、名前のとおり物置小屋として製作されました。こちらは、「think」とは異なる作り方で実現できないかと試作したもので、堀田建具製作所さんが製作しています。その場でパーツを組み上げるような作りになっており、実際に自分たちで組み立てて完成させたのだそうです。

便利さと自然が融合する、その不思議さが面白い

SLOWPから東側に望む高崎の街並み

SLOWPがあるのは、観音山の中腹に位置する高崎市片岡町。高崎駅から車で10分ほどとアクセス良好でありながら、青々とした木々から差す、やわらかな木漏れ日が心地よい自然豊かな地域です。また、新しい住宅と古い建物が共存していたり、勾配のある山道の途中に高崎の街を一望できる場所があったりと、さまざまな景色が交差する土地でもあります。SLOWPは、そんな山中の雑木林を切り拓いて作られた場所。急な斜面に建つ建物たちをみていると、小屋のもつ柔軟性をより実感することができます。

「SLOWPという名前は、クリエイティブディレクターの安永哲郎さんに考えてもらったものです。 SLOW(ゆっくり)とSLOPE(斜面)を掛け合わせた造語で、斜面を切り開いて作ったこの場所にぴったりだと思います。SNARKにゴロが似ているところもいいですよね。フィールド型ショーケースという呼び方も安永さんに考えてもらいました。小屋の展示場でもあり、公園のような場所でもあるここを、ひとことで言い表せる素敵な名前がついたな、と思います」

小さく始め、必要で増やす。新たな選択肢

試作を重ね、小屋の持つ可能性を模索・提案しているSLOWP。小屋をつくるきっかけとなったのは、コロナ禍で「住まいとしての家以外の居場所」が必要になったことでした。

アーティストのLENSさんによるワークショップ「ピンホールシネマをつくろう!」

「今ある家はそのままに、自由に使える部屋をもうひとつ増やせないかと考えました。たとえば、庭先で週末限定のお店を開くとか、別荘やキャンプで活用するとか。住宅にはないバリエーションが小屋にはあるんですよね。小屋が生活の中にあることで、住宅の設計や暮らし方にも選択肢を増やせると思います」

SLOWPが提案する建物は、私たちが当たり前だと思っている暮らしの中に、新しい視点とその居場所を提供します。それは、既存の家にプラスするだけでなく、これから新しく家を持つときの選択肢にもなります。現在新築で主流とされているのは、「リビングの他に、子ども部屋2つと寝室と…」といったように、想定される「一番大きなサイズ」で建てることです。しかし、フルスペックの家が必要になる期間は意外と短いもの。子どもが巣立った後の部屋は、物置になっていたり、洗濯物を干す部屋になっていたりと、あまり活用されていないケースも少なくないのではないでしょうか。

「grow」には植物と日用品を販売するAYANASが入居している

そこにもし、小屋を建てる選択肢があったら。はじめはリビングと寝室、客間だけなど必要最低限で家を建て、その後必要に応じて部屋を増やすことができます。そして小屋が当初の役割を終えたとしても、その後に趣味を楽しむためのはなれにしたり、庭先で開くコーヒースタンドにしたりと、用途ごとの独立した使い方が可能です。

家の中に組み込まれていないからこそ生まれる可能性と、高い自由度が魅力の小屋。利用する人それぞれに合った「住宅や空間利用の新しいあり方」が見えてきそうです。

次回はSLOWPの建築や設計について株式会社SNARK代表取締役の小阿瀬直さんにインタビューした内容をお届けします。

取材:合同会社ユザメ

◽️SLOWPについて
・住所:群馬県高崎市片岡町3-2165-2(JR高崎駅から車で10分)
・営業日:毎月1日ずつフィードツアーとワークショップデーを設けています。個別でのご案内も可能です。詳細は公式ウェブサイト、Instagramよりご確認ください。

※オープンデー以外はご予約制にて来場受付ております。ご了承ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?