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総合商社の解体新書

前回、総合商社って実際何してるの?で商社を一言で表すとMulti-Finance Companyがいいのではないか、とお伝えしました。何年もかかりましたが、つまるところ商社の提供しているバリューは様々な形のFinanceに尽きる、と漸く思えました。今回は事業形態別に、どうFinanceなのか?を説明していきます。

商社で一番わかりやすいFinanceといえば事業投資で、既存の事業を買収するM&Aや、油田・鉱山発掘等への出資、そしてトレードで必要になる輸送拠点の建設・買収、また従来の付き合いから派生する一般投資(マイナー出資)があります。


ではトレード(貿易)はFinanceなのだろうか?

まず安く買っておいて値上がりしたところで売り利鞘を稼ぐ、ポジションテイクするトレード(例えば金属・エネルギーや食料)はそれぞれ市場があり、株式市場の様に週末以外は昼夜問わず時事刻々と値動きしていますので、これはFinanceという言葉がしっくりきます。

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サプライヤー(売り手)とバイヤー(買い手)が繋がろうと思えば繋がれるこの時代になぜ商社が必要なのか。言い換えれば、商社がトレードにおいて提供する本質的な価値、になりますが、私はこれを保険機能だと定義します。バイヤーが商社から買う際には、サプライヤーから直接買うのに比べてプレミアムを商社に支払うことになります。これが保険料に当たります。

この保険料をもらって商社は何を保証しているかと言えば、商社が間に入ることで、「すいません、購入いただいた商品の到着遅れます」とか「急に倒産します」と言われて在庫切れになることが原則なくなるからです。

1:1 の場合

具体的には、商社の資金力を持ってすれば急な倒産もありませんし、膨大なネットワークと取引量があるため、ポートフォリオの中でうまく融通することができます。

商社の機能

日本ではバイヤーの在庫管理(もしくは在庫保証責任)まで請け負っている場合もあり、特に食糧やエネルギーなど国家の生命線に関わる商材は国に対しても責任を負っていることもあるため、バイヤー各社が直接サプライヤーと取引きするよりも商社の優位性が存分に発揮されます。つまり商社は信用を売っているわけです。CDS(クレジットデフォルトスワップ)が金融商品として取引されていることからも、信用を売るという行為は列記としたFinanceです。

一方「三国間取引」という日本以外の国へのトレードではこの信用力が評価されない環境だと私は感じます。東南アジア等の発展途上国では、信用力を買う資金力の無いバイヤーがいることや、競争過多により信用力が評価されずらいため、販売面で苦戦している商社が多いのだと私は考察します。

ということで、総合商社では日本のお客さんを相手にする比重が高いです。
就活セミナーでは海外への進出部分が強調されがちですが、現実的には商社の信用力を評価してくれる(=収益性の高い)国内事業を引き続きうまくやっていくことが重要なのです。

国内の比重が高いことからも、商社の社風は「国際的!」というよりもかなり伝統的な日本企業の風土です。これは総合商社の歴史が長いからそうなっているのではなく、商社を取り巻く環境がそうさせていることが、今回の解説でおわかりいただけるのではないでしょうか。次号、「商社のリアルな社風とその背景」でこの環境が商社の代表的なイメージ、「勢い」「飲み会」「残業」「駐在」につながっているのか考察していきます。


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