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算数だけでできる企業価値算出

皆さんは、株価がどうやって値付けされているかご存知ですか?

市場は需要と供給、売り手と買い手の値段が折り合って値付され、Done、となるわけですが、では売り手と買い手、特に機関投資家の様な気分や流れで売り買いしない人たちはどの様にして値段をつけているのでしょうか?

そこには企業価値という概念が登場し、

株価=企業価値 ➗ 総株式数

で計算されます。こんなに簡単か?と思われるかもしれませんが、1粒100円の飴が10個が入ったお菓子袋に1,000円の価値があるように、この1,000円のお菓子袋に入った飴1つ1つは100円(=1,000円÷10個)なのです。

上場企業の株式数は一般情報なので、企業価値さえわかってしまえばあとは割り算するだけなので、思ったより簡単だということがお分かりでしょう。

企業価値の算出は投資銀行やMBAのバズワードとリンクするので、とても難しい印象を与えがちですが、実際には微積分や行列が出てくることはなく、四則演算だけです。

私の他記事でもお伝えしたように、企業価値算出は四則演算だけで成り立っています。以下では、企業価値算出を小学生で習う算数のみで計算する方法を紹介していきます。この記事は、フィアナンスの初学者や就活生、MBA留学を検討されててる方たち向けに書いています。

企業価値とは

まず企業価値をWikipedia風に難しく言えば、「企業が持つ有機的一体としての事業の価値を金額で表したもの」だそうですが、簡単に言えば、

今この企業はいくらか?ということです。

ロールプレイから学ぶ経営者の視点

皆さんがとある会社の社長だとして、あと3年で引退しようと考えていたとします。会社をたたんでしまうよりも、買い手を探して売却し引き継ぐと考えた場合、いくらで自分の会社を売却するでしょうか?

仮に今期は100億円の利益を見込んでいたら、社長である皆さんは100億円でこの会社を売却する、という判断をするでしょうか?

恐らくそんな判断にはならないでしょう。利益の見通しが立つ時点で、一発屋の商売ではないでしょうし、今年100億円の利益が出るなら、今後3年間も毎年近しい利益が出ると考えてもおかしくないでしょう。

見方を変える

見方を変えれば、会社を今売却するということは、あなたは今後この会社からでる利益を一切享受することができないということです。

逆に言えば、この会社の買い手は未来永劫事業が続く限りその利益を享受し続けます。つまり、皆さんの会社の買い手にとってみれば、この会社の生涯の稼ぎの現時点での見通しと価値が買値の基準になります。

議論を簡素化するために、この事業は売り手・買い手共に事業が3年間存続すると思っていることにしましょう。

初年度は100億円、来期は102億、3年目は104億稼ぐとしたらどうでしょうか?

この企業の現在の価値は単純計算で306億円でしょうか?

結構近いですが、一工夫必要です。

「今日の100円と来年の100円は価値が違う」という言葉をビジネスマンなら一度は聞いたことがあるかもしれません。

それは、今日100円を持っていて2%の利子がつく銀行口座に1年間入れておいた場合、来年の今日には102円になっているため、今日の100円の方が来年の100円よりも2円分程価値が高いのです。この102円をさらに同じ口座に1年保管したら、104円になる、といった具合です。

その逆も然りで、今度は2年後に104円もらえるというありがたい契約があったら、その契約(2年後の104円)の現在価値は100円だということです。

このメカニズムを先の会社の例に適用すれば、

  ・初年度の100億円は現在価値でも100億円
  ・来期の102億円は現在100億円
  ・3年目の104億円も現在100億円

だということです。

つまりは、3年間かけて毎年「今の100億円」を稼ぐことを見込んでいるため、この企業価値は300億円だと言えます。もし、この企業が上場企業で300万株発行していたとしたら、一株あたりの株価は1,000円だと算出できます。

何か足りない?

どうですか?割り算と足し算しか使わずに企業価値が計算できました。めちゃくちゃ簡単です。

とはいえ、この例はかなり簡素化してしまっています。したがって多くの情報が抜け落ちています。例えば、

そもそも、3年間かけて100億円、102億、104億稼ぐという前提はどこから来たのでしょうか。これを答えるには、この会社のビジネスに精通している必要があります。

また、社長が3年で引退したいというのはわかりますが、事業がその3年で終わるかのような計算になっています。

利益と実際のキャッシュフローは違います。企業価値算出では、会計上の利益ではなく、キャッシュフロー(今の所現金と思ってもらえれば大丈夫です)を元に計算します。

仮に上記の前提が正しいとして、理論上300億円のものを300億円で買うわけではなく、恐らく買い手にとってはそれ以上の何かがあるのでしょう。

その他細かい技術的なことを言えば、この会社が借入をしてビジネスをしていた場合企業価値から差っ引く必要があります。また、銀行金利の2%を想定しましたが、銀行から全て借りなければいけない理由はなく、株式市場から資金調達したり、社債発行するなどあります。

他にも実際のバリュエーション実務では、圧倒されてしまうほど様々な側面を精緻に計算していく必要があります。しかし、そこでも結局は足し算引き算の四則演算だけで最終的に企業価値を算出できます。

それらの詳細は、今後の記事にて順を追って解説していきたいと思います。


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