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瞳溶け
僕と目が合わないあいだの君は、なんだかすごく君が君だった。君の瞳に僕が溶けたら、君が君でなくなる気がする。そうであればなんて、流れ星を見てまつげを羽ばたかせる。
笑いあったあとに「今日はありがと!」と連絡をくれる君の優しさがちょっぴり怖くて、でも君のことが大好きで、なんともとれない感情を君の手に縫い付ける。押し付ける。
それが君に向けての愛ではないのは知ってるし、振り返って笑う君の笑顔も、僕に向けてのものじゃないって知ってるよ。
ぼくたちの世界は自己完結型。
なんだって、いつだって、僕たちが見てる世界は混じりあわないのだろう。僕から見る君はそれはもう”僕から見るきみ”でしかなくて、君から見る僕も、”君から見るぼく”でしかなくて。僕らは永遠に本質なんて言葉も知らないまま、フィルターつきのきみを見る。当然君と目を合わせたって君の瞳に僕が溶けるわけもなく、君が君でなくなるわけもない。
この夜の底で、時間の窪みで、交わらない瞳にぼくたちは気づけない。重力がかかっているこの部屋でぼくはまっすぐなきみしか知らない。
この世のすべてが間違ってると僕たちは言葉を重ね合うけど、本当は見つめているものが違ったらどうしよう。僕たちはなにもひとつじゃなくて、輪郭をもってしまう。
ああこのまま溶け出せたら。
君の瞳を泳ぐ。
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