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読んだ本の書評をアップしています。基本的に幅広いジャンルを読むように心がけていますが、文学、エッセイ、評論など、人文系の書籍が多めです。
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#書評

【書評】永久不変の価値観を疑え――『殺人出産』

 非常にセンシティブな表題だが、作品そのものは示唆に富んでおり、読者の想像力を刺激する仕…

【書評】「普通」という価値観への疑問――『コンビニ人間』

 本作が投げかけるのは伝統的価値観への疑問だ。学校を卒業したら正社員として働く。結婚・出…

【書評】五里霧中の社会を生きる「道標」――『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出…

 書店に行くと、「課題設定」「問題解決」系のフレームワーク本が多く平積みされている姿が目…

【書評】巷間の「仕事術」を破壊――『ありえない仕事術 正しい"正義"の使い方』

 巷には「仕事術」に関する書籍であふれているが、本書が凡百の書籍と一線を画すのは「理論」…

【書評】クリアな視線でビジネスを見つめる――『逆・タイムマシン経営論』

 欧米企業の成功事例という「未来」を日本に持ち込み、ビジネスに実装する「タイムマシン経営…

【書評】「見られず」に「見る」こと――『箱男』

 箱男。それは、段ボールを体の上半身にかぶり、街を歩き回る存在だ。段ボールには覗き窓が開…

【書評】フィクションだからこそ描ける"事実"――『沙林 偽りの王国』

 1995年3月20日朝の通勤時間帯、営団地下鉄(現東京メトロ)日比谷線、丸ノ内線、千代田線の車両内にて猛毒のサリンが撒かれた。地下鉄サリン事件である。オウム真理教教祖・麻原彰晃の指示を受けた幹部構成員らが各線の車内でサリンを散布。乗客ら約30人がサリン中毒で死亡、6500人以上がサリン中毒症の傷害を負い、今も重篤な後遺症に苦しんでいる被害者も少なくない。    本書はオウム真理教信者が起こした一連の事件を、主人公の医師や警察関係者を架空の人物に置き換えた「フィクション」とし

【書評】「居場所」をめぐる少女の物語――『マウス』

 本作は「居場所」をめぐる2人の少女の物語である。空気を読みながら自らの居場所を作ろうと…

【書評】日本中を巻き込んだ"噓"――『小山田圭吾炎上の「噓」 東京五輪騒動の知られ…

 2021年7月23日に開幕した東京オリンピック。その開会式の音楽制作を担当したミュージシ…

【書評】健全な"反逆"のススメーー『令和その他レイワにおける健全な反逆に関する架空…

 パンチの効いたタイトルである。「健全な反逆」。「架空六法」。つい、ストーリーを妄想した…

【書評】シニア人材に送る"応援歌"――『老人と海』

 近年、シニア人材の活躍がしきりに叫ばれている。それは、令和3年4月1日に施行された「改…

【書評】ある行旅死亡人の"存在証明"――『ある行旅死亡人の物語』

 2020年4月、兵庫県尼崎市のアパートで、高齢の女性とみられる遺体が発見された。部屋に…

【書評】SFアニメの金字塔を読み解く――『攻殻機動隊論』

 折に触れて見直すアニメーション作品がいくつかある。その一つが『攻殻機動隊』だ。  内務…

【書評】1945年8月15日の攻防――『日本のいちばん長い日』

 8月15日は言わずと知れた終戦記念日である。混迷を極める戦時体制にピリオドを打った節目の一日で、毎年この日が近づくとメディアは「凄惨な悲劇を風化させてはならない」と言わんばかりに、こぞって戦争特集を組む。  とはいえ、その取り上げ方は「戦争を繰り返さないために、過去の歴史から何を学ぶか」にフォーカスし、この日の出来事をコンパクトにまとめて伝えがちだ。すなわち、8月15日は「日本がポツダム宣言を受諾した日」「『終戦記念日』として戦争と平和について考える日」として凝縮され、昭