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日本ワインの現在地。 Winart 最新号 2024 no.116号より

少し前、ワインの聖地ブルゴーニュの中心ボーヌにて日本ワインの試飲会「サロン・デ・ヴァン・ジャポネ」が開催されるとの噂を耳にしていた。
ワイン宗国フランスで開催された、日本ワインの歴史的瞬間をワインフィッターの山田マミ氏が現地に取材に赴いた。 
長らく「高温多湿の日本の自然条件で、いいワインができるのか?」と言われていた日本のワイン。果たして、本場フランスでの評価は・・いかに? 
山田マミ氏の取材記事を読んで感じたことを書き残してみました。 


第一回 サロン・デ・ヴァン・ジャポネ

2023年11月12日、フランスワインの聖地のひとつ、ブルゴーニュ地方の中心地ボーヌにて開催された、日本ワイン試飲会"サロン・デ・ヴァン・ジャポネ"。会場には日本から11社が出店。21社は試飲用ワインのみを用意して輸送。合計190本のワインが当日を迎えた。
それぞれが自分たちの作ったワインが本場でどんな評価を受けれるのか、期待と緊張の入り混じった思いだったようだ。
それにしても仕込みの繁忙期である11月に、醸造家自ら渡仏したワイナリーも少なくなかったようで、特に今回ブースを構えた11社の出展者の想いは並大抵でないことが誌面の山田マミさんの取材から窺える。

日本のテロワールが生み出す"個性"への評価

そもそもワインは『その土地の性格、テロワールを具現化したもの』だとランス人は言う。ここでいう"テロワール”とは土壌や地形、気候、風土などの自然的な側面と合わせて扱う地域の文化や伝統などが総合的な概念の総称だ。
「日本の風土ではいいワインはできない」。そんな根強い思い込みが長くあったように感じていた日本ワインへの彼の地での評価は、「興味深い」「美しく繊細」「上品でエレガント」「みずみずしくフレッシュ」・・ そして「いい意味での驚き」など肯定的評価が多かったようだ。
「ブルゴーニュのシャルドネより・・」や「フランスのワインに比べて」などの相対評価ではなく『これが日本のテロワールなのでしょう』と成熟した評価軸を持つ一般の愛好家も。周りの意見を気にしない絶対評価の国フランスならではのコメントが並んだのは、これから"日本らしさ"を目指す醸造家たちにとっては強く背中を押してくれえる評価だったのではないか。

主催者はブルゴーニュ大学で学ぶ日本人留学生!

日本ワイン史に歴史的1ページを刻んだのは、フランスの大学在学中の学生だった!

フランスで初めて開催された日本ワイン試飲会。日本のワイン業界にも驚きを持って伝えられたようだが、さらにびっくりしたのは、その主催者が行政でも企業でも団体でもなく、1人の日本時学生だったこと。
今回の日本ワイン試飲会を企画・主催した岩崎元気氏は、栃木県のブドウ農家の3代目。東京の大学を卒業後、4年間ワイン専門店商社に勤務後にワーキングホリデーでフランスへ。ワイン商社での経験が「ワイン造り」に大きく意識が向いたとのらしい。
渡仏後、ワイン造りの現場をいくつも経験。とある研修先で運よく労働ビザを取得することができ、腰を据えてワイン作りを学ぼうとボーヌの醸造学校CFPPAに入学。その後大学へ編入、いくつかの研修を経て、現在はブルゴーニュ大学フランス国家認定醸造士DNO(修士)の学生で、今年夏には日本に帰国予定とのこと。王道ではなく、幾つもの回り道の末に辿り着いた先はフランス語の専門用語や概念に関する深い理解が必要で、フランス人でもなかなか難しいと言われる修士課程だ。
「フランスの、すでに完成された産地よりも、今まさに発展を続ける日本ワインを世界に広めることが、僕にしかできないこと。そこに人生を賭けたい!」との熱い想いで、日本へ帰国してから始動するより、今ボーヌにいる立場を生かして何かアクションを起こしたかったと今回の日本ワインの試飲会を企画した意図を語っている。

当日、ブース出展した生産者への直撃記事も掲載されています。

言葉にしたら簡単なようだが、実現するにかなり苦労しことは容易に想像できる。それでも現地の団体の後援によるプロモーションや、当日ボーヌ醸造学校の学生たちのサポートもあり、ふたをあければ、来場者は約450名、開場5時間後には用意した190本全数が完飲と、予想をはるかに超える盛況ぶりだったようだ。

「造り手も飲み手も世代交代などによる多様性、寛容性を感じる」と、岩崎氏。昨今の目覚ましい日本ワインの品質向上と、世界に目を向けること、目を向けられることで生まれる意見交換が今後の日本ワインの発展に活かされる。そんな岩崎氏の描く夢が叶う日は、案外すぐそこまできているのかもしれない。




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