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とある新卒社員が1年10ヶ月5畳のオフィスで働き続けた話

2020年、1月。
配属先が東京に決まった。
新社会人として上京。初の一人暮らし。

満員電車に乗って会社に通い、金曜日は飲みに連れ回される…現代悪とされる風習すら楽しみにしていた自分がいた。

家を決めたのは、
2020年2月。

朝は苦手だし、会社にできるだけ近くてキレイめな物件がいい。家なんて、どうせ帰って寝るだけでしょ?だったら狭くてもいいから家賃は絶対抑えたい!
そんな思いを持って、初めての私の家を決めた。

1階だけどオートロック。
ワンルーム5畳9平方メートル。
築はそんなに古くないから綺麗。
家賃も絶対に手取りの3分の1に収まる!

まあお金に困りたくはないし、最初だしいいかなと思ってた。


2020年3月。
なんか世の中の情勢が怪しくなる。


どうやら研修がリモートワークになるらしい。
まあそっか~最初にみんなで集まって研修できないの残念だなあ。家も狭いけどまあ最初だけだしテーブルにパソコンを置いて仕事しよう。それより服とかどうしようかな。


ところが、
これはただの序章に過ぎなかったのだ。


入社式はオンライン、研修は完全にリモート。
配属の顔合わせで1回上司と会うものの、それ以降の仕事もオンラインだった。もちろんコロナにはかかりたくないし、朝起きるのも得意じゃない。だが、今の家は在宅には完全に不向きだ。

さらにさらに、デスクトップモニターが届き、狭い部屋でやむなくしてデスクと椅子を購入。ここから発狂するレベルで狭くなった。来訪した友人達はみんな、家に来るとあまりの狭さに必ずドン引きしていた。


でも恐ろしいことに、「住めば都」なのだ。
仕事できないことはないし、料理だってできるし、バスタブはないけどシャワールームはある。
ズボラな私にとっては部屋の狭さはむしろ楽だった面もある。


1年経ってみたら、完全に在宅環境に慣れていた。
仕事も集中すればできる!私はどんな環境でも頑張れるんだ!ここから収入を上げまくっていつか大幅にグレードアップした家に住むんだ!
ボーナスも自己投資に使っていたから、引越しに回す気はなかった。


社会人2年目。
仕事は全然できていたし、リモートだからこそできた経験もあった。会ったことない人との会話も全然できるようになっていた。


ただ、ふとした瞬間、
この煮詰まった空間に押し潰されそうな感覚になった。
2021年6月のことだった。


私は、なんでこんな辛い環境で働いているのだろう。
確かに楽だ。通勤しなくていいし、メイクも服選びも頑張らなくていい。忘れ物なんて概念もない。
でも、すごく閉塞感があった。
苦しい、辛い、逃げたい。

気づけばコンビニへ散歩するようになった。仕事で手が止まることもあった。だが、少しずつ回復し始める。人と会話すると元気が出て今の環境を忘れられた。


2021年11月。
とある手紙が不動産屋から届いた。

「更新手続きのお知らせ」

そうか、家に住み続けるのは更新料がかかるのか。もうすぐ2年経つのかあ。
え、待って、更新料ってこんなにかかんの?と素直に感じた。これなら引越し資金に回した方がよくないか…?そう感じた。

残業も増えて収入も落ち着いたし、そろそろグレードアップの時期かなあ。
いや、でも今の家は狭いけど都会へのアクセスも良いし新しめだし…ちょっと迷った。

だが、私の家は、プライベートであり仕事場。生活の全てだ。ワーケーションも会社的に認められていない。たとえコロナがどんなに落ち着いたとしても原則在宅勤務が続く。
もっと今の仕事に専念し結果を残すためには、まずは環境を整備しなければいけないのは明白だった。

そこから、私は次のボーナスで引っ越しをすることを決意した。
キッチンが廊下に出ていて、バスタブがついていて2階以上、でもできるだけ都心へのアクセスは悪くないように。割とすぐに良い部屋が見つかった。

こうして、私は新しい家に引っ越した。
今の家での仕事はまだ3日しか経っていない。部屋が少し広くなった分、今までは全ての用事が手の届く範囲で済んでいたがそうはいかなくなった。でも、ようやく一般的な生活が送れるようになった気がする。人間になれたなーと思った。

まだまだ私のリモートワークは続く。もちろん私はまだ社会人2年目なので、都心に住むとなると1LDKなど夢のまた夢だ。
だけどもっと成功して、自分の住みたい場所に好きな条件で住める日を目指して。そんな野望をこっそりと抱えつつ、明日も一つの部屋で一日が始まり、一日を終える日々を過ごすだろう。

#リモートワークの日常


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