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「君たちはどう生きるか」私の感想。(ネタバレ多くあります。)

君たちはどう生きるか、私も観てきました。

どうしても、答えを知る前に、語りたい。
急ぎ足でも、走り書きでもいい。インタビューやパンフレットを読む前に、答えを知る前に、率直な自分の感想を残したい。

そんな勢いをこの作品に感じ、文字として残しています。

完全なるネタバレだらけです。

そして、完全に、私の個人的な感想になります。


読みなくない方は絶対に読まないでください。



それでは、始まり。

この映画を観て、強いメッセージを感じた点が、2つあります。

① 生きるための殺生。輪廻転生。

この映画では、「食べる。食べられる。」
この表現が何度も表現されていました。

アオサギが“ごくん”と魚を一飲みにするシーンがあったり、眞人が大きいインコに食べられそうになったりします。

そして幼き日のキリコとの出会いで乗ることになった船では、大きな魚を捕まえ、生々しく包丁で殺します。
主人公は、殺生を知るのです。そして、その臓器を使い、わらわら (新たな命) を上の世界、つまり、人となり生まれ変わるよう、送り出します。まるで、灯籠飛ばしのような景色。
ラプンツェルのように空に舞う、わらわら達。
灯籠飛ばしとは、死者の魂を弔って、火を入れた灯篭を空に放つ行事のことです。空に舞う、わらわら達を見て、そのような表現が私は頭によぎりました。

そんな綺麗な空の光景を眞人が見上げていると、その時、ペリカン達がわらわらを容赦なく襲い、食べてしまいます。「わらわらが死んでしまう!!」とっさに叫ぶ、眞人。そこに、ヒミが登場し、花火で、ペリカンを追い払います。死んでしまうわらわら。それを食べ、生きていくペリカン。
そして地面には、羽が折れ弱ったペリカンが一羽。ぐしゃぐしゃになり、力尽き、命を終えます。わらわらだけじゃなく、ペリカンも、生々しい自然の摂理と共に生きているのです。

眞人は、そんなペリカンの魂を弔って埋めてあげていました。循環していく命。捕食し、巡る命。
眞人は身をもって生きること、死ぬことについて体感し、成長していきます。

わらわらが空へ飛んでいく時、キリコの目が少し潤んでいた描写がとても素敵でした。


② 自分で選択することの大切さ
 「君たちはどう生きるか」タイトルの意味。


基本的に、ジブリで描かれる両親はわりと強引です。木村拓哉演じる父も、一見立派で素晴らしい親です。転校初日、眞人を、お金持ちの象徴のような車で送迎してくれました。でも、実はこの送迎に対し、乗り気ではない眞人の心境に気付くことはありませんでした。妻のナツコも「学校には連絡したおいたから大丈夫。」と優しく気の利いた母のようでありますが、眞人の心に寄り添うことはなく、父の肩を持つ妻という印象を受けました。

そして、その派手な送迎の演出が原因か、眞人はお金持ちとしての格差でいじめられてしまいます。眞人は自分の表現方法が見つからず、自傷とも取れる行為で、自分の複雑な感情の意思表示をします。

父親が慌てて帰ってきます。「誰がやったか教えてごらん!」「大丈夫だぞ!学校にお金を払ってきた!」一見、息子想いの優しく感じるセリフですが、犯人を探すこと、お金で解決しようとする姿勢、そして「自分で転んだ。」と言い張る息子の心より、将来の額の傷跡の配慮をしていること、せかせかと眞人の心を置いてきぼりにする勢いある姿勢に、私は少しの違和感を感じました。

そして違和感について考えてみました。それは、【 眞人に自らの選択権を与えず、意見を発しずらい扱いをしていること 】でした。

一方、下の世界で冒険中に出会った幼き日の実母のヒミ (久子) は、扉の前で言いました。「今ドアノブを離したら帰れるよ。」帰ることも、戻ることも、どちらも強要せず【 あまりにも自然に眞人に選択権を与えた 】のです。子供を孕っているナツコが眠る部屋に来た時も、「私は入りたくない。眞人は?」と眞人自身に決断をさせています。そして自分自身で、ヒミと違う意見の「入る」決断をする眞人。そんな眞人に、「待ってるね。」とヒミは優しく声をかけます。

眞人自身で考え決断すること。その機会を与えてくれ、別の意見を選んでも、側で見守ってくれる優しい実母、ヒミここで私は、実母(ヒミ)が眞人に贈った1冊の本のタイトルが頭に浮かびました。

「君たちはどう生きるか」


眞人の冒険の意味、それは自分で物事の選択をすることではないか。それを、この本と冒険を通して、ヒミが教えてくれたのではないかと。

そして、物語も終盤を迎えます。

世界のバランスを取るために、積み木を積む、まるで神様のような役目を引き継いでほしいと頼まれる眞人。

こんなにも壮大な運命を投げかけられた眞人は、自分は自分に傷をつけるような悪意のある人間であることを伝えます。自傷ともとれる傷跡は、眞人自らがつけたものであり、眞人という人間味を強くしていました。そして、元の世界に戻りたい決断を自分の意思で伝え、扉を開き、上の世界に戻っていきます。

崩れていく下の世界。そこに正しいも、間違いもないのです。ただ、眞人は自分の運命を自ら決断を下したことに、この冒険の意味があると私は感じました。

数年後、成長した眞人は溌剌とした、自然体な少年になっていました。

【君たちはどう生きるか】

亡き母からのメッセージを受け取り、前に進む眞人の姿にぐっときました。


ここまでが、私の感想です。

監督の伝えたい表現と、間違っていたとしても、少しでも重なったとしても、私には心に残るとても素敵な映画でした。

ここからは、私が今までのジブリがぎゅっと詰まっていると感じたシーンや、ゆるっとした感想のまとめです。色んな方の感想が気になって仕方ない。

・音がとても繊細。水面を打つ音。風の音。自然の音が、とても綺麗でした。
・菅田将暉さんのアオサギの声が、特徴的で頭に残りとてもよかった。
・冒頭の火事のシーン、戦争のシーン。心がヒリヒリした。火垂るの墓を思い出す。
・お屋敷、その付近の石畳や苔の描写。本当に綺麗でした。千と千尋みたい。
・おばあちゃん達、ジブリっぽくていいなあ。湯婆婆小さくしたみたいで。
・眞人のお部屋、思い出のマーニーを思い出す。ジブリのインテリアってほんまに可愛い。
・生々しい魚たちや、どろっと溶けるお母さんの表現。ポニョみたいやね!
・若い頃のキリコ、千と千尋のリンさんみたいな凛々しさで素敵。柴咲コウさんのカラッとした声がとてもハマる。
・わらわらは、もののけ姫のこだまみたい。
・船に乗ってた黒い人たちは千と千尋のおいでおいでの、幽霊みたいやね!
・大きくなるインコの不思議な世界観、そしてインコの大王様は、猫の恩返しを思い出す。
・ヒミと食べるパンは、ラピュタを思い出したりしちゃうよな。ジャムやけど。
・ヒミのあいみょんの声。とてもあたたかく深い愛情を感じた。ヒミの全てを受け入れてくれる母のような優しさが溢れていた。
・子供を授かったナツコの上にかかっていた、紙の表現。(ヒミが燃やしてやっつけた紙たち)千と千尋の呪いみたいで、すごく好き。
・そして、ジブリといえば、久石譲さんのサントラの美しさ。本当に本当に、これは語りきれないほどに、いつも、ほんまに、素敵なんです。

感想なんて、そんなことは、まだまだ、何回も観たら、きっと変わったり、増えていくんだろうなあ。と思いながら、それでも私は焦りながらも、この気持ちを書き綴ってみたい。誰かと話してみたい。そう感じた作品です。

きっと、間違ってるセリフもあります。間違った受け取り方、間違った感想の押し付けになるかもしれません。先に謝っておきます。それでも、余韻に浸りたいこの滝の様な気持ちを文字にせずにはいられませんでした。

ジブリが大好き。また観に行きたい!!!

私も、ニヤリと笑うアオサギに出会わんかなあ。

… なんて、空を見上げたくなる作品でした。

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