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都会の真ん中でガネーシャに会った話

忘れもしない今から約6年前、大学3年生の夏。

歌舞伎町で焼肉を食べ、さあ2軒目に向かうぞという道すがら、歌舞伎町の繁華街のど真ん中で友人が叫んだ、

「あーおっぱい揉みてーなー!」

この一言で、歌舞伎町のイケてるお兄ちゃんたちにおっぱいパブへ連行された僕らは、ベテランのおっパブ嬢の巧みなタイムマネジメントに翻弄され、おっぱいを揉めぬまま4人で50分11万2千円という驚異的な数字を叩き出し、歌舞伎町の街を徘徊していた。

その日は高校の同級生3人と僕というパーティー。高校時代バスケ部キャプテンのイケメンと、家が音楽家の家系で10個の楽器を巧みに操るイケメン、ブレイクダンスをキレキレに踊るかつめちゃくちゃ硬派のイケメンと、声が大きい陽気な僕。

キャプテンの一言でお金もやる気も無くした僕らは、将来のベートヴェンの、

「一回体を清めて、全てをリセットしよう!」

という素晴らしい意見に賛成し、

「俺近くに深夜までやってるサウナ知ってるよ!」

というブレイクダンサーのナイスな情報をもとに、近くのメンズサウナに向かった。

そのメンズサウナは、歌舞伎町から少し外れたところにある古びた4階建てのビルで、少し嫌な感じがしたのだが、先程のおっぱいパブでの惨劇に比べれば何も怖いものはない。僕らは躊躇うことなく受付を済ませた。

深夜3時だというのに中は少し混雑しており、営業終わりのホストや飲み会帰りのサラリーマンで少し賑わっていた。

僕らは服を脱ぎ、仲良く4人並んで、今日あった全ての嫌なことを洗い流そうと一心不乱に全身を洗いはじめた。

すると、頭を洗っている最中、背後に不気味な違和感を感じた。まるで巨大な猛獣に背中をゆっくり舐められているような感覚。

すぐに振り向くと、ねっとりとした視線でこちらを眺めてくる3人の小太りの男が湯船に浸かっていた。3人とも恍惚の表情を浮かべているが、この場に女体は無い。ということはつまり、そういうことだ。

猛獣の正体はこいつらか。猛獣の一人は、耳に大きなピアスに金のネックレス、肩に大きなガネーシャのタトゥーが入っていた。ガネーシャとは、人間の体に象の頭を持ち、腕が4本ある神である。

完全に終わった。蛇に睨まれた蛙とはまさにこのこと。
慌てて隣で身体を洗っていたキャプテンに状況を伝える。しかし、ここにも神がいた。

「みんなで湯船入ろうぜ!!!」

厄災の神ハデス降臨。今日の全ての災いはこいつから始まる。

怯えるベートーヴェンとブレイクダンサーを無視して、キャプテンはあえて胸を張ってゆっくりと湯船に特攻する。ガネーシャとハデスの一騎討ち。終わりの始まり。その場にいる全員が固唾を飲んだ。

その時、スーッとガネーシャ一味の視線が右に流れた。何事かと思い猛獣たちの視線の先に目をやる。

視線の先には、椅子に深く座り気持ちよさそうに寝ているサラリーマン。

まずい、朝勃ちしている。万事休す。ガネーシャの一味が湯船から上がり、ゆっくりと近づく。

完全に獲物を狙う獣の目だ。この大浴場にいる誰もが匙を投げた。

ガネーシャの一味はゆっくりとサラリーマンに近づくと、肩にかけていたタオルをフワッとそのサラリーマンのイチモツに乗せた。まるで天使の羽のようだった

ガネーシャから天使となった彼らは、イチモツに向けて一礼すると、去って行った。

最後の一礼の意味は、いくら考えても答えは出なかったが、僕たちはゆっくりと湯船に浸かり、メンズサウナを後にした。

その後、ラーメンを食べて始発で解散するまで、誰もあの時の話はしなかった。

僕たちはメンズサウナで幻を見たのかもしれない。 


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#青春 #ガネーシャ #幻


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