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塾広告の闇と子どもの人権

これは、典型的な大手塾の広告です。もう見慣れて、疑問も抱かなくなっている保護者の方々も多いと思いますが、地域の学校の子ども達が、顔写真、実名、学力、学校名など特定性の高い個人情報をセットで不特定多数に晒されています。この状況は大変危険です。

地域と名前がわかれば、住所なども絞り込みできる時代です。通う塾も特定できますから、つきまとい、待ち伏せ、妬みの対象になることも考えられます。実際には、それほどの事件は起こらないにしても、特定性の高い個人情報を載せられた後に成績を落とすことがよくあり、不登校、退学に至る子どもがいるので注意が必要です。

長い目で見れば、成績は上下することが当たり前です。しかし、ピークの一瞬を都合良く切り取られることで、周りからは「できる子ども」と認知されてしまいます。受験結果は通過点ですが、進学先で成績が落ちれば、能力が足りないのだと自信を喪失してしまう子ども達もいるのでしょう。

塾業界では、子ども達を陳列し「アユの友釣り」のように新規の顧客を釣る「おとり」として扱う広告手法が最も効果的な集客手段として”やったもの勝ち”の状態になっていますが、この手段を使う企業からは子ども達の人権尊重という最も尊い教育理念が感じられませんし、子ども達に対する敬意や愛情も感じられません。

子どもたちの人権を守るには、誰がどのように責任を持つべきでしょうか?このような問題を抱えている塾に通っている保護者の方々と話すと、プライバシーの扱いに疑問を持っている方々が実際には非常に多いことがわかります。しかし、断ることができない状況に巧みに誘導されてしまうのも事実です。

日本は、善良な人々が沈黙を守るサイレントマジョリティ社会と言われています。しかし、善良な方々の声が届かないと、大企業は問題を解決しようとはしません。子どもたちの安全確保は、塾にとって最優先事項であり、塾業界全体が信頼できる教育機関として見られるためにも、プライバシーの問題に真剣に取り組む必要があります。

         【注意】

全国学習塾協会が定める広告表示等における関係法令は以下になります。これを見る限り、親の承諾を得れば氏名や顔写真などの個人情報も掲載してもよいとの見解です。保護者の方々が危険性について認識していなければ、氏名、年齢、学校、学力等の個人情報が同時に広告に掲載されます。知らない間に広告にお子様の個人情報が掲載された場合、入会の折に知らずに同意している場合があります。入会時には内容をよく理解してから署名、捺印するように注意してください。

ア 生徒の氏名を公表する場合には保護者の同意も得る。生徒の写真・映像・画像等、及び文章等を公表する場合にも同様とする。また、イニシャル(一字以上)であっても同 様とする。

イ 同意を得るとは、個人情報保護に関する同意内容書を交付し、生徒・保護者の署名・ 捺印をした個人情報保護同意書を当該広告関係者全員から得て、保管・管理しておくこと とする。

ウ 個人情報を委託・受託或いは提供する場合には、契約時点でその内容を明示し、生 徒・保護者の同意を得なければならないものとする。

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