「新規事業に向く資質」の社内の”異端児”的な人材を発掘する

「新規事業に向く資質」とは、具体的には次の5つの特徴を兼ね備えた人材です。

 ① 「知覚」が特異で、ものごとの捉え方が特有
② 自分の判断基準を持ち、自分の頭で考えることができる
③ 見えないものを観て、ものごとを抽象的に構想できる
④ 自分駆動で意思決定&行動志向である
⑤「人と違うことは良いこと」と思っている

新規事業に向く資質を持つ人は、多くの人と違う観点でものごとを捉え、違和感に気づくことができます。外部が規定するルールや社内常識に縛られずに、なぜそうなっているのか、こうではないか、とあれこれ考え、自分なりの考えや案を深めます。与えられた仕事役割でなくとも、自分の好奇心に火がつけば、こっそり検討を続けます。
自分なりに正しいと思う考えや案を同僚に話しても、「よく分からない」と言われることもしばしば。ただ本人的には日常茶飯事のため、特に気にすることもありません。本人的には、新しいインプットを得て仮説検証を進めています。考えるだけに留まらず、何かしら行動します。組織のルールに反しない程度に、通常業務でやり取りしない部署にコンタクトしたり、社外に足を運んだり。時に上司にNGを出されますが、こっそり迂回路を探し、ものごとを徐々に進めます。
周囲からは「変わってる」と影で言われ、余計なことをする分、社内評価はあまり高くなく、少なくとも”優秀”とは言われないことが多いです。でも本人にとっては、「変わってる」=「unique」なのである種の褒め言葉。

新規事業に向く資質を持つ人は、自ら進んで人とは違う考え方をし、組織に挑み、自分のアイデアの完成に向かって突き進みます。指示や指導を待つことなく、自ら動くことを選びます。自分で考え、自分で学び、全体を見通し、自立した精神を持っています。
新規事業というと、アイデアマン的な人が向くと思われがちですが、必ずしもそうではありません。研究者やアーティスト、科学者やテクノロジーハッカー、建築家や冒険家の資質と似ています。構想する対象や行動の仕方、具現化のための技術やスキルは異なります。一方、ものごとの捉え方や世界の切り取り方が特異であること、自分の判断基準で自分の頭や心で捉えることは共通です。

このような特徴を兼ね備えた人材が、新規事業に向いています。
ただし、このような人は、多くの会社では、自分勝手で自己中心的、わがままで扱いづらい人だと認定されがち。典型的な人事評価の枠組みでは評価されず、社内では異端児で変わり者扱いされ、埋もれていることも少なくありません。要領の良い異端児は、会社で自分を出すと評価が下がることをわかっており、隠れ凡人化するケースもあります。

人材要件がわかれば、異端児を育成するための研修プログラムを実施しようと、人事部は考えがち。しかし、”異端児的”な能力を、人事部主催の研修(おそらく数時間〜数日)で培うことができるかは疑問です。
「知覚」ひとつとっても、幼少期や思春期の家庭環境や人生経験を通じて10年以上かけて形作られていくもの。数時間〜数日の付け焼き刃の研修では、特異な知覚が身につくことはないでしょう。

社内で異端児を「育成」する発想は不要です。大切なのは、社内で埋れているこのような資質の持ち主を、発掘しようと試ること。
異端児を発掘する際に留意すべきは、人事部はそのような資質や情報をマネージしていないことです。評価項目ではないことに加え、ルールを重んじ優等生を好む人事からは、「変わり者」と切り捨てられやすい傾向にあります。
現場人材を管理・評価する部課長層は、自分自身が「新規事業に向く資質」の持ち主である人や、新規事業や過去にない仕事経験がある人は、「新規事業に向く資質」な人材を発掘することができます。一方で、そうでない90%以上の部課長層は、そのような人を”自分勝手で変わっており、扱いづらい”と評価してしまいます。
そのような資質の持ち主が誰であるか、直感的に最もよくわかっているのは、同僚や入社同期社員です。彼は変わってる、彼女は人と違うことをするよね、という同期や同僚の暗黙の評価は、案外当たっているものです。


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