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SmartHRのプロダクトデザイン組織 解体新書【CDO JAM イベントレポート】
こんにちは!SmartHRのAkoです!
2023年4月7日に開催された富士通デザインセンターの社内イベント「CDOJAM」にて、SmartHRの執行役員・VP of Product Designであるおうじさんが、富士通デザインセンターのCDO(Chief Design Officer)である宇田哲也さんに替わって1日CDOを務めましたので、今回はその一部をレポートしていきたいと思います。
「CDO JAM」は、社外からやってきた1日CDOとの交流を通して、新しいカルチャーを発見したり、組織や仕事のあり方を見つめ直す場として企画されている富士通デザインセンターの社内イベントです。当日は、オンラインとオフラインのハイブリット開催となり、オンラインホワイトボードツールで作成されたバーチャル会場を活用して、様々な意見交換を行いました。また、おうじさんと富士通デザインセンターの皆さんによるデザイン組織やデザイナーとしての仕事についての赤裸々なパネルディスカッションも行われました。イベント全体の様子やアツいディスカッションについては、富士通さんの開催レポートに詳しく掲載されておりますので、ぜひこちらもご覧ください!
おうじさんってどんな人?
![おうじさんの自己紹介が書かれている画像。右半分におうじさんのプロフィール画像が載っている。](https://assets.st-note.com/img/1686903325171-7qLEp45ZIX.png?width=1200)
SmartHR 執行役員 VP of Product Design
宮原 功治(みやはら こうじ)
通称:おうじ(@ouji)
イベントオーガナイザー経験後、音楽スタートアップを共同創業しデザイン責任者を務める。2016年以降、プロダクトデザイナーとして複数社のプロダクトデザインを請け負い、その後freee株式会社でサービス開発とデザインシステムの立ち上げに従事。2019年6月にSmartHRへ入社。プロダクトデザイングループの立ち上げと、コンポーネントライブラリ『SmartHR UI』のリニューアルを主導。2021年1月現職に就任、現在はメンバーの活躍支援や環境整備も担う。
SmartHRのデザイン組織を大解剖
このイベントでは、SmartHRのデザイン組織を過去の組織変遷に沿ってご紹介しました。
早速どんな歴史を紡いできたのか、見てみましょう。
ーSmartHRのデザイン組織について
SmartHRのデザイナー組織は3つのグループに分かれています。
![SmartHRのデザイナー組織体制を表した図。3つのデザイン組織がある。](https://assets.st-note.com/img/1686903439859-4DOPonWRSN.png?width=1200)
プロダクトデザイングループ(製品のインターフェース設計開発)
プログレッシブデザイングループ(アクセシビリティ向上、多言語化対応)
コミュニケーションデザイングループ(会社のブランディングやマーケティングに関するデザイン)
おうじさんは主にプロダクトに関連する1.プロダクトデザイングループと2.プログレッシブデザイングループを管掌しています。
![プロデザとプログレの違いを表した図。プロデザはわかりやすさを作り、プログレは使える人を増やす役割を担う。](https://assets.st-note.com/img/1686903469804-WSnxbZsS0e.png?width=1200)
1のプロダクトデザイングループは、ユーザーにとってサービスがより使いやすくなるために改善を重ねる、言わば価値を縦に積み上げていく役割を担っています。
一方、2のプログレッシブデザイングループは、第一言語が日本語ではないユーザーや、さまざまな特性を持つユーザーがサービスを使えるようにすることをミッションとしており、使える人を増やすという価値を横に広げる役割を担っています。
SmartHRのプロダクトデザインはこの2つの組織がそれぞれ縦横をカバーして組成されています。
ーデザイン組織の立ち上げからこれまで
SmartHRのプロダクトデザイン組織は立ち上げ期から現在に至るまで、5つのシーズンに分かれて変遷してきました。
![SmartHRのプロダクトデザイン組織の変遷を表した図。時期ごとにどんなトピックがあったのか書かれている。](https://assets.st-note.com/img/1686903532941-Hu31yPyHPB.png?width=1200)
シーズン1 プロダクトデザイングループ立ち上げ期(2019年6月〜11月)
組織の立ち上げと共に、メンバーのスキル向上を目的とした勉強会を実施しながら、プロダクトデザイナーへの社内期待値を適切なものに調整。
シーズン2 七つの大罪期(2019年11月〜2020年12月)
開発規模拡大に伴い人手が足りなくなってきたため、各罪を象徴する人を採用するという方針のもと、採用活動を本格化。
シーズン3 さらば、全てのプロダクトデザイナー。期(2020年12月〜2022年1月)
開発組織の「技能的クロスファンクショナル化」の取り組みの一貫として、各開発チームへ技能移譲を開始。共に協業しているエンジニアなどの他職種にデザインスキルをインストールしていく。
シーズン4 ヘヴィメタル期(2022年1月〜2023年1月)
メンバーが2桁を超える。組織貢献に対する当事者意識を高めることを目的に、おうじさんがnote記事を公開。
シーズン5 プロダクトデザインマフィア期(2023年1月〜今現在)
組織の立ち上げ期から、期待値の調整や、スキル不足の解消、人員拡充を行い、ようやく3〜5年後先の組織について考え始める。
直近では、「プロダクトデザイングループは優秀なデザイナーを多く排出し、業界に意を示し、プロダクトデザインマフィアとなる」というビジョンを掲げ、理想の実現に奮闘しています。
ーSmartHRプロダクトデザイナーの人物像
SmartHRのプロダクトデザイナーには、特徴的な要素が3つあります。
![SmartHRのプロダクトデザイナーの人物像が描かれた図。3つの特徴がある。](https://assets.st-note.com/img/1686903565519-LknChoxB5Q.png?width=1200)
1つ目は、開発者であること。これはとても大事です。SmartHRでは、「デザインをする人」ではなく「開発活動をする人」がプロダクトデザイナーであるという意識を持っています。さらに掘り下げると、エンジニアリングとデザインの技術を別のものとして分けずに、2つの要素を考えながら製品開発に携われる人がSmartHRのプロダクトデザイナーだと考えています。
2つ目は、自分たちの組織は自分たちでデザインすること。プロダクトデザイナーという職種の等級制度、評価制度、さらには採用戦略なども、他の組織に任せっきりにするのではなく、当事者である自分たちで考えて作っていくぞ!というマインドのメンバーが多いです。
最後に3つ目は、会社にイレギュラーな進化をもたらすこと。
個人の掲げている業務に対するミッションや開発のロードマップ、決められた成果を出すこと以外で、個人的な活動やサブ的な活動からアウトカムを狙って作りにいくことがSmartHRのプロダクトデザイナーらしさだと思っています。
ーSmartHRプロダクトデザイン組織をかたちづくる象徴的なイベント
![プロダクトデザイナーの代表的なイベント「レビュー・モブデザイン会」についての説明が書かれている。画像左には、実際にslack上で議論が行われている様子のスクリーンショットが映っている。](https://assets.st-note.com/img/1686903607043-nM9lGoTWpU.png?width=1200)
週に2回、「レビュー/モブデザイン会」を実施しています。この場では、デザイナーがお題を持ち寄って、みんなでそれに対してレビューしたり、モブで(一緒に)デザインを作り上げる時間にしています。ここで非常に大切にしていることは、この場で何かを承認したり意思決定することを絶対に行わないことです。いくら責任を多く担っている人物からフィードバックを受けたとしても、必ずしもそのフィードバックを採択する必要はありません。たくさんのフィードバックに対して、どれを採択するのかはそのデザインを担当したチームに委ねられています。いろんな角度の意見を出すことで、製品の品質をさらに高めるために活用するという目的でこのイベントが行われています。
![プロダクトデザイナーの代表的なイベント「ミッション設定会」についての説明が書かれている。画像左には、チームのOKRやメンバーのアクションの相関図がある。](https://assets.st-note.com/img/1686903625159-MzabFw5GA9.png?width=1200)
次に、ミッションの設定会です。SmartHRのプロダクトデザイングループはデザイナー同士で必ず一緒にミッションを立てています。一緒に働く人のミッションが見えていないと、取り組みが競合してしまい利益相反に繋がり、互いに動きづらい状況が生まれてしまいます。そのため、一人ひとりのミッションを開示しながら設定することで、その不和を解消し、互いにシナジーを生むような共創にも繋げています。
ちなみに、ミッションの内容は個人のスキルや成長に視点を置かず、必ず組織やビジネスへのアウトカムになることを設定しています。
![プロダクトデザイナーの代表的なイベント「プロデザ仕事しろ!feed」についての説明が書かれている。画像左には、実際のfeedのスクリーンショットが映っている。](https://assets.st-note.com/img/1686903642214-tgAa8904LN.png?width=1200)
最後に、「#プロデザ仕事しろ!」フィードの活用です。社員がSlack上に投稿した、製品のUIで気になったことに対して、「プロデザ仕事しろ!」というリアクションスタンプを押すと、「#プロデザ仕事しろ!」フィードに投稿が集約されていきます。プロダクトデザイナーは、このフィードを見ながらクイックに対応出来るものはその場で改善し、議論が必要なものは1つ目で紹介した「レビュー/モブデザイン会」に持ち込む、といった運用をしています。個人の持つミッションやプロダクトのロードマップとは関係ない改善活動の種として、このフィードは活用されています。
ここまで、特徴的な人物像や象徴的なイベントについて触れてきましたが、それぞれがカルチャーとして根付いており、採用活動「スナックぷろでざ」や「SmartHR Design System」の策定、「レビューは承認の場ではない」という意識につながっています。
ーSmartHRの開発組織体制
![SmartHRの開発体制が描かれた図。機能ごとにチームが作られ、そのチームに対して開発基盤チーム・デザインシステムチーム・アクセシビリティスペシャリスト・マルチリンガルマネージャーの支援が受けられるような体制になっている。](https://assets.st-note.com/img/1686903674052-EvFMhCKtdg.png?width=1200)
SmartHRの開発体制は機能ごとに組成されています。各開発チームは、PM(*1)、プロダクトデザイナー、QA(*2)、UXライター、エンジニアで構成されています。職種ごとにサポートや評価を行うマネジメント担当がいる一方で、「開発チームが機能の方向性や仕様の意思決定を行う」というのが特徴です。
そのため意思決定の材料として、社内の各セクションにレビューを依頼してフィードバックをもらう、自らユーザーヒアリングをして実際の声を取り入れていくなど、開発チーム自身がビジネスやユーザーの解像度を高めていく仕組みを取り入れています。同時に、開発チームはアクセシビリティや多言語化対応を専門としているチーム、開発基盤を作っているチームからサポートを受けながら製品の品質を上げていきます。
*1 PM:プロダクトマネージャー。「何を作るか」「なぜ作るか」の2点に説明責任を持ち、プロダクトビジョンやロードマップの策定、開発アイテムの起案・優先順位付け、要件定義などを行う役割
*2 QA:Quality Assurance(品質保証)を略した言葉で、システムが問題なく動作するか、ユーザーの求める品質になっているかを検証する役割
プロダクト開発で大切にしている「スピード感」
ー本当にあった開発スピード低下の危機
![3年前、開発スピードが低下した時のイメージ図。](https://assets.st-note.com/img/1686903712606-k6Kj87o8BT.png?width=1200)
約3年前、PM、プロダクトデザイナー、QA、UXライター、エンジニアなど各職種がようやく揃って開発体制が整ってきたころ、専門職能が充実した結果、技術のバトンパスが発生してしまいました。
PMが仕様を考え、デザイナーがデザインを作る。そしてUXライターがプロダクト内の文章を制作し、エンジニアが実装を行い、QAが品質を確認する。つまり、各職種の仕事が分断され、バトンが渡されるまで待ちの状態が続いてしまい、自分の担当領域に着手するのが遅くなってしまいます。
![長くなったバトンパスを解消した時のイメージ図。開発工程の全てにチーム全員が関わっている。](https://assets.st-note.com/img/1686903736094-3DFkXW4CHC.png?width=1200)
そこで取った対策として、まずはチームが実現すべき価値を洗い出し、各々が順番に行っていたタスクを専門の職能から切り離して、チーム全員で向き合いはじめました。
つまり、PMが行っていた仕様策定、デザイナーが作っていたデザイン、UXライターが制作する文言……そういう職種ごとに行っていた工程を開発チーム全員で行っていきました。
これにより、例えばエンジニア側としては、いきなり仕様が振ってくる、開発するまでどんな仕様かわからない、といったことを防ぎながら、”待ちの時間”を削減し、全員が仕様に対する理解度が高い状態で実装に臨めるようになります。
![技術的クロスファンクショナルのイメージ図。さまざまな機能(スキル)を持った人がチームに混在している様子。](https://assets.st-note.com/img/1686903751849-MquSPoKbKf.png?width=1200)
この危機を乗り越えてから、開発チームには「技能的クロスファンクショナル」というカルチャーが根付きました。
大前提として、開発チームにはデザイナーといった「職種」が必要なのではなく、デザインを出す「機能」が必要です。チームが必要な機能を揃えるためには、職種の垣根なく、どのメンバーがどの機能を習得してもよい、という考え方が技能的クロスファンクショナルです。
このカルチャーが根付いたことにより、複数の職能を持つメンバーが育成されてきました。そうすると、チームに一人しかいないデザイナーの体調不良などでデザイン工程がストップしてしまう、といったことがなくなり、チームにスケーラビリティが生まれました。
ーSmartHRの開発チームが大切にしている4つのこと
![SmartHRが開発で大事にしていることを表した図。3つの要素がある。](https://assets.st-note.com/img/1686903777912-77i1xUoZnB.png?width=1200)
1つ目は「自発性」です。上長や役職者からの承認を得る必要がなく、製品に対して最も解像度が高い開発チームが自ら意思決定していきながらより良い製品を作っていくことが大切だと考えています。
2つ目は「透明性」です。開発チームが豊かな意思決定を行っていくためには、可能な限り情報を多く持つ必要があります。意思決定のために必要な情報が常にオープンになっており、いつでも取得できる状態にすることを心がけています。
3つ目が「創発性」。多職種やチームメンバーとのコラボレーションが起こると、開発ロードマップには載っていないようなサプライズや、想定を超えたイノベーションが生まれます。
![SmartHRが最も大切にしている「顧客の価値」を表した画像。お客様から届いたコメントのスクリーンショットが3枚並んでいる。](https://assets.st-note.com/img/1686903791635-t7EUputEYE.png?width=1200)
そして最後に、なにより大切にしているのが「顧客の価値」です。
上記は実際にお客さまからいただいたメッセージです。お客さまの声を軸として、機能開発、人員アサイン、技術選定、デザインの判断を行うほど、とても大切にしています。
SmartHRの開発組織では、この大切なことを忘れないためにもスローガンに「顧客の価値で語ろう」と掲げ、日々開発に取り組んでいます。
SmartHRはプロダクトデザイナーを探しています!
さて、ここまで組織の変遷や特徴についてレポートしてきましたが、SmartHRのプロダクトデザイン組織について少しでも面白そうと思っていただけたら幸いです。
そして、プロダクトデザイン組織では採用活動を積極的に行っています!
これを読んで興味が湧いた方はぜひこちらからご応募ください!カジュアル面談も大歓迎です。
ちょっと気になるけど、まだまだ組織のことについて知りたいよ、と思った方はこちらから気になる記事を探してみてくださいね。
さいごに CDO JAMダイジェストムービー
さいごに、当日のイベントの様子を約10分間のダイジェストムービーに収めましたので、ぜひご覧ください!
記事制作協力:リスナーズ株式会社