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日本で一番多い?! 16名のナーチャリング組織の業務と役割を聞いてみた

こんにちは。SmartHRに2023年8月に入社した、採用広報の永岡(@okie)です。私が所属するマーケティンググループには、「ナーチャリング」を担当しているメンバーが16名います。

ナーチャリング担当者がこんなに多い組織は珍しいと聞いて、「そもそもナーチャリングとは?」から「SmartHRでのナーチャリングの役割」や「具体的な組織編成」まで、神農(かんの/@kanchan_r)さん、白石(しらいし/@maisan)さん、圷(あくつ/@Akt)さんの3名に質問してみます。皆さん、ナーチャリングについて教えてください!

右側を向いて男性・女性・男性の順に並んで座った3人の写真。
左から順に、@kanchan_rさん、@maisan、@Aktさん

「ちょっと良いな」からファンになるまで伴走するのがナーチャリング

ーーインタビュアーのokieです。今日はよろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。

ーーさっそくですが「ナーチャリング」とは、一般的には潜在顧客から見込み顧客へ、見込み顧客から既存顧客へと引き上げていくことを指しますよね。一方で、ナーチャリングに携わると人によって解釈が変わってくる気がしています。

そこで、まずは「各自が思うナーチャリング」について聞かせてください。

kanchan_r:では、私から。「ナーチャリングとは〇〇」という正解はないかもしれません。問題意識と課題を喚起させていただきながら、お客さまにブランドを好きになってもらい、最終的には商談やビジネスに至っていくという一連の流れがナーチャリングだと思います。

Akt:私は、ナーチャリングとは、意思決定が簡単ではないものに対して、検討の段階を一つ前に進めてもらうためのものだと考えています。なかなか「買う」と決められないものを買うときに重要な役割だと思いますね。具体例をお話しすると、私は前職でウィッグ(かつら)を売っていたんです。

ーーウィッグですか?

Akt:はい。ウィッグって、かぶるものだというのはわかるけど、それ以外の認知はあまりないと思います。特に、私が売っていたのは「24時間外さなくていいウィッグ」だったんですね。「なんだかよくわからない」という感想を持たれますし、値段も高い。そうすると、お客さまは「話を聞くのはなんだか嫌だな」と感じる。その状態から、疑問点を一つずつ解消し、お客さまに「話を聞いてみても良いかも」と思っていただく仕事をしていました。

SmartHRの場合だと「そもそもSmartHRとは」というご案内から始まり、導入担当の方の上司にもご理解いただけるように、「SmartHRを導入するとこんなにいいことがある」とわかっていただく仕事がナーチャリングだと思います。

maisan:ナーチャリングの最初のステップは、「メルマガを受け取りたい」など、SmartHRをもう少し知りたいと思っていただくまでの興味喚起ですね。次に、セミナーなどに参加して「課題に対してSmartHRで解決できるのでは?」と思っていただく。このように、SmartHRに対して徐々に「良いな」と思っていただき、最終的にはファンになってもらうまで伴走するのがナーチャリングだと思います。

パソコンを前に座り、左側を向いて微笑む女性の写真。
インタビュアー @okieさん

ーーありがとうございます。寄り添ってニーズを引き出し、課題を言語化するという印象を持ちました。では、ナーチャリングの重要性をどのようなときに感じますか?

kanchan_r:SmartHRの場合だと、ナーチャリングの機能がないと弊社が現在の速度で事業成長することは難しいと感じています。例えば、資料をダウンロードしたらすぐにSmartHRを導入いただける……なんてことはないですよね。そのため、ダウンロード後の部分を担うナーチャリングの重要度は高いと思います。

maisan:現代って、インターネットで何でも情報収集できますよね。そのため、事前にお客さまも様々な検討をされていて、お問い合わせをするときには、ほとんど購入を決めていると言われています。その中で、一方通行のプロモーションではない、すべてのお客さまに寄り添うためのナーチャリングは大切だと思います。

Akt:「お客さまが求めているものは何か」を知るための情報提供を行い、「〇〇の情報を読んでいただいた」「〇〇のイベントに申し込んでくださった」といった情報をインサイドセールス(IS)やセールスにお渡しする。
ここが重要だと思っていますし、このおかげでお客さまの興味や課題感を予測できるため、手探りな状態から会話が始まることを防げているのだと思います。

正面を向いて座った男性の写真。
【圷 陽太郎さん(@Akt)】株式会社SmartHR マーケティンググループ 所属。
新卒で株式会社スヴェンソンに入社。プロモーション、コールセンター担当として新規顧客向けを中心としたコミュニケーション設計に従事。2022年6月にSmartHRに入社。

お客さまに合わせて、伝える方法と内容を変える

ーーナーチャリングが、お客さまに「もう少し知りたい」と思っていただくための重要な部分を担っていることがわかりました。
では、皆さんが普段どんなお仕事をしているのかを教えてください。

maisan:日頃は、お客さまの属性・状態に合わせてコンテンツを作って届ける。そして、お客さまの情報をわかりやすく整理してISに連携する。という業務を担当しています。

たとえば、「〇〇という機能に興味がありそうな方に向けて、メールを作成して、配信する」「〇〇という業界の方に向けて、DMを作って届ける」などが主にお客さま向けの業務になります。また、ISがお客さまにお電話する際に活用いただけるようデータを整備して社内で連携するような業務もあります。
各人の業務の内容は同じですが「誰に向けて」という部分が人によって異なります。

ナーチャリング リードの仕組みと各担当を示した図

kanchan_r:購買から一番遠いお客さまを担当しているのが私です。
具体的には、まだISがお電話をしておらず、MQL化(※1)もしていない未商談の方々ですね。続いて、MQL化したけれど、商談に至らなかったというリードファネル(※2)があります。その次の「一度商談をしたけれど、受注には至らなかった」というお客さまは@maisanが担当しています。

※1 MQL化:マーケティング施策を通じて、商談の可能性があると判断すること。
※2 リードファネル:初めてSmartHRに接触してから検討・商談、成約に進むまでのフェーズを定義したもの。

Akt:私は各支社、つまり首都圏以外に拠点を持つお客さまを担当しています。
具体的には、各支社で開催されるセミナーのご案内と開催後のフォローアップを通してのナーチャリングや、各エリアの地場の特性に合わせたコミュニケーションを意識した施策を実施します。そして、展示会などで獲得したお客さまをISにトスアップして、コール(電話)をしてもらう。そこで導入に繋がらなかったお客さまに向けてアプローチする部分です。

ーーもう少し詳しく聞かせてください。@kanchan_rさんは購買から一番遠いお客さまを担当されていますが、初めてコミュニケーションを取るときはどのようにしていますか?

kanchan_r:例えば、「ウェルカムメール」という本当にご挨拶のみのメールを初手で送ってみる他、情報提供に徹するメールをお送りすることもあります。
お客さまとの関係性がまだ構築できておらず、好きになってもらっていない状態で、いきなりISがお電話してもお客さまを驚かせてしまう。そこで、同時進行で「SmartHRはお役に立てるんですよ」とわかっていただくための施策を行っていますね。

正面を向いて座った男性の写真。
【神農 亮さん(@kanchan_r)】株式会社SmartHR マーケティンググループ 所属。
日系メーカーの海外営業、教育系企業のマーケティング職を経て現職。

ーーお客さまが必要な情報を想像してお伝えしているのでしょうか?

kanchan_r:そうですね。具体的にはSmartHRのオウンドメディアである「SmartHR Mag.」の記事をお送りしています。これはドライに考えるとMQL化に直結する施策ではないので、MQL機会の損失という捉え方もできます。目標の数字が決まっていて、メール配信の枠数も上限がある中で、逸る気持ちをグッと堪えてお客さまとの関係構築を目指しています。

今期はさらに、お客さまの状態に対する解像度を高めていきたいと思っています。情報収集をしていただいているけれど、お客さまがどのような状態なのか定義できていないことが多いので、これを解明し、ちょうど良い頃合いにISがお電話する仕組みを作りたいです。

ーー@maisanは商談して受注に至らなかったところからの関係構築を担当されていますが、ハードルが高く感じます。どんなことをされていますか?

maisan:私の担当しているお客さまは、様々な情報が既に溜まっています。職種もわかっていますし、お客さまのこれまでのウェブ上での行動データを元に、興味がありそうな機能に特化したメールを送ることができます。

また、失注したということは、一度商談化しているので、SmartHRへの興味は強く持っていただいているんですよね。導入前に躊躇された方々に、もう一度「話を聞いてみたい」と思っていただくために、あえて別の機能をご紹介してみることもあります。

【白石 舞さん(@maisan)】株式会社SmartHR マーケティンググループ 所属。
新卒でアニヴェルセル株式会社に入社。現場で新規セールスを経験したのち、新規顧客獲得から既存顧客のアップセル・クロスセルに関わるマーケティング職に従事。2021年9月にSmartHRに入社。

ーーお客さまによってアプローチ方法を変えているんですね。

maisan:そうなんです。あとは、SmartHR機能の話題のみを載せると「営業メールはいらないよ」となってしまうので、二段構成メールと呼んでいる方法を最近試しています。
これは、お客さまが興味を持たれるような時事ネタに近い記事をメールの上段に置いて、「もしご興味があるなら、SmartHRでは◯◯という機能で課題解決ができますよ」という情報を下段に置く方法です。

Akt:エリアの特性というのもありますね。例えば、SmartHRの会社としての認知は首都圏が一番高く、他のエリアは徐々に低くなっていきます。その場合、自社に近いエリアの企業が既に導入しているか否かは重要なんですよね。
お客さまが「SmartHRって何だろう?」と感じられたときに、他の導入企業をご案内することで、知られていないところから信頼を得ていきます。

ーー確かに、近い業界やエリアの企業が導入されていることを知ると、安心感がありますね。

Akt:そうだと思います。また、ペーパーレス化も、大都市圏に比べると進んでいないことが多い。そこで、メールではなくてDMを送ることでの効果検証をしています。お客さまによって、お渡しするツールも載せる内容も変えています。

16名が連携することで、ナーチャリングの成果を最大化させる

ーーナーチャリング組織の人数規模や役割分担について教えてください。

maisan:ナーチャリングと呼ばれる業務に関わっているメンバーは、全員で16名います。その中で、まだ受注に至っていないお客さまを担当しているのが11名。受注後を担当しているエクスパンションが5名います。

人数が多いため、入社前はガチガチに定型化・仕組み化されていることを懸念していたのですが、そんなことはありませんでした。SmartHRのナーチャリングは手法が限定されておらず、DMやイベント、広告連動企画と多岐に渡っています。そのため、一般的なナーチャリング組織よりもできることが幅広くありますね。

ナーチャリング ユニットの変遷と体制図

ーーナーチャリングのメンバー同士で連携することも多いのでしょうか?

maisan:企画は1人で進めることもありますが、メールの原稿をつくった際には、全員に対してダブルチェックを依頼しています。毎月50本以上メールを出していますが、1つの原稿につき必ず4,5人がコメントを付けますね。
会議でもみんなから意見が集まるので、1人で考える感覚はあまりないかもしれません。

kanchan_r:そうですね。入社して間もない頃は、フィードバックの数が多すぎて驚きました(笑)。

正面を向いて微笑む男女12人の写真。
ナーチャリングメンバーの集合写真
(写っていない方もいるので、全員だともう少し大所帯です)

ーーでは、ナーチャリングの「チーム」で動く中で意識されていることはありますか?

maisan:複数人で同じ施策を試すことがないように、情報共有を意識しています。また、ナーチャリングの人数の多さは、活かしたい強みですね。連携することで試せるものが増えます。

kanchan_r:ナーチャリングチームには「すべてのフェーズの顧客に対するナーチャリング業務を担当し、成果を出してきた」というメンバーが集まっています。つまり、皆さんつよつよです。@maisanのおっしゃる通り、ナーチャリング全体で成果を最大化させるための連携が加速しています。

maisan:@kanchan_rさんがナーチャリングしてくださったお客さまはいずれ私が担当しますが、私と@kanchan_rさんが分断していたら「急にコミュニケーションが変わったな」とお客さまに感じさせてしまう可能性もあります。私たちはチームですが、お客さまは1人ですもんね。

ーーナーチャリングメンバーの他にやり取りの多い部署はありますか?

maisan:IS、ISOps(IS内のツールやオペレーションの最適化、予算策定を担当)、コンテンツマーケティング(オウンドメディア、導入事例などの制作を担当)ともやり取りは多いですね。他には広告配信のメンバーなど。

Akt:私はエリアマーケティング(支社の管轄地域を中心にしたリード獲得およびプレゼンス向上を担当)、セールスマーケティング(ISやセールスチームと協業しリード獲得を担当)のメンバーともやり取りがあります。

ーー複数部署とやり取りする中で感じる面白みはありますか?

kanchan_r:最近は、広告・ナーチャリング・MQL化・商談……という流れすべてを「線」でつなげたいと思っていますが、これが本当に難しい。個々にミッションを持っていて「点」で業務を進めるところを「線」にしていくのがナーチャリングの役割だと思うので、部署問わず利害を一致させながら三方良しをつくり、最終的にはお客さまに還元する。
その一連の流れに、ナーチャリングだから携われるという部分が面白いです。

maisan:これはSmartHRのマーケティンググループならではかもしれませんが、80人以上の組織規模で分業制であるがゆえに、大量の施策が同時に走る。そのため、全部を把握するのが難しいと言われる中で、プレイヤーならではのフットワークの軽さでそれらをつなげていけるのが面白いです。

目指すのは「100人が1人に見える」ようなナーチャリング組織

ーーでは、今後組織を拡大していく上で注力したいことを教えてください。

Akt:ナーチャリングのメンバーが増えるのに合わせて、伝えるツールの選択肢を広げていきたいと思います。
例えば、メールではリーチできないお客さまに向けて実施するDM施策。これは、組織の人数が増えないと挑戦できなかったものだと思います。今後も、届ける先にいる方の好みに合わせた施策に挑戦していきたいと思います。

maisan:先日、ナーチャリングの視点で「お客さまにはきっとこういう課題があるけれど、そこの解決につながるセミナーは無いね」という話になったことから、イベントユニットと一緒にイベント企画を始めました。一般的なナーチャリング組織だと、そこまで広く担当されている方はあまりいないと思います。まだまだ無限にできることがありそうです。

kanchan_r:もう、ナーチャリングの垣根を超えていますよね(笑)。

Akt:メールの送信後すぐに反応があるeBookがあったので、「違うテーマで〇〇を載せてみたら、同じ結果が出るかもしれない」という話になりました。日頃eBookをつくっているメンバーと一緒にナーチャリングのメンバーがeBookの制作を進めたこともありましたね。

maisan:2021年に「作って届ける」をナーチャリングチームのスローガンにしていましたが、人数が揃ってきた今、実現できていると感じます。マネージャーの原(@haraday)さんは「日本一のナーチャ組織になる!」と豪語しています。

ーー最後に「今後目指すこと」をそれぞれ聞かせてください。

kanchan_r:本当の意味で、「1人の人格」としてお客さまとコミュニケーションをする。それを部署横断で実現する体制とフローをつくり、目線を合わせたい。お客さまが誰であっても気持ち良いコミュニケーションができるようになる……という感じでしょうか。
数年後のSmartHRは、ナーチャリング担当者が100名くらいいるかもしれませんが、その100人が1人に見えるといいですね。

maisan:メンバーそれぞれがメールをつくり、DMをつくり、お客さまにお届けしますが、受け取ったときに共通して「SmartHRらしいね」と言っていただける状態をつくっていきたいです。それって、SmartHRの認知と共に、SmartHRが目指す人格まで理解していただいているからこそ出る言葉だと思っているので、そんな世界が来たら良いなと思いますね。

Akt:あれ、お二人がいい話をするから、言うことがなくなりました(笑)。

一同:(笑)。

Akt:様々な企業規模や業種、地域の方に「その方々に合ったコミュニケーション」を届けようとしています。しかし、そうすると人格がブレやすい。その中で、ロイヤリティやブランド価値を高めていくことが重要だと思っています。
現在も、ナーチャリングという組織が、全方向を繋ぐ重要な役割を果たしていると思います。マーケターとして、一部分のみを担当するのではなく、全部を繋ぐことで一回り成長させていきたいです。

ーー私自身も今までの経験の中で、メールなどのアプローチで人格を感じることはあまりなかった気がします。
SmartHRという一つの人格をつくるために連携されていて、血が通ったコミュニケーションを実現していると感じました。今日はありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

取材日:2023年9月7日
インタビュアー:@okie
インタビュイー:@kanchan_r、@maisan、@Akt
執筆、撮影:@ta_ke_be
協力:@mukaharu、@ayuco、@haraday、@thooosan


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