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ギフテッドの生徒さんとの向き合い方【才能を潰さないために気を付けたこと】

塾講師をしてると、いろんな高校生とお会いすることになります。とはいうものの、ある程度の類型に属する方が大半ですが、今回、稀有な体験として俗に言う、ギフテッドの方を担当することになりました。

まず、前提として、極めて高い知能に恵まれる方とギフテッドの方は根本的に違うという点からお話したいと思います。

私の中で、極めて高い知能に恵まれる方とは、九州で言うと、ラ・サール中高や久留米大学附設中高に合格していたり、学校の授業だけで入試問題をスラスラ解けるという人たちを指します。

苛烈な医学部入試であっても、
「えっ?何が難しいの?」みたいな感じでラクラク合格する人はいるのです。
俄かは信じられないところですが、そのような人は極めて少ないものの、現実にはいらっしゃいます。

ただ、そのような方は、ある意味普通の人です。
ちょっと勉強ができるくらいで、調子に乗っている人たちもいて、それは、世俗的な価値観で世界を認識しているともいえるので、私は「頭のいい普通の人」というのが現実なのだろうと思います。

それに対して、ギフテッドの方は、価値観の形成や言動が独特で、有り体に言えば、世俗の価値から超越している。そしてかつ、特異な才能を持っている人であり、性格的にも穏やかな人が多い。攻撃性も傲慢さもないので、社会性において、ハレーション起こすことは少ない人たちとも言えます。

このような方の最大の特徴は、好きなことはトコトン追求するものの、自分の意に沿わないことは、一切しないという点でしょう。

数学では独自の解法をトコトン突き詰めることがデフォルトで、私が一般的な解法を示すと、「それじゃあ、面白くない」といって拒否られることなどザラでした(^^;

そして、私はその方に対して、その特徴を踏まえ、2つのことを守ることが大事だと思って接してきました。
(1)型にはめるようなことを強要しない
(2)長所を徹底的に伸ばし、短所は改善することを諦める

ということです。

(1)については、宿題をその方には出しませんでした。その代わり、自主的にこれをしたいという申し出がある場合は、その希望を叶えるようにサポートしました。

(2)については、長所でアドバンテージを取ること、短所で致命的なスコアを取らないことを意識しました。
何度も好きな科目だけを一生懸命頑張れとアドバイスしていました。なので、好きな科目はトコトン勉強されたそうです。お母様から心配からの相談を受けたこともありますが、それでいいのではないかとお答えしていました。

昨年の今頃、塾長とこの方の入試はどうなるのかと心配していましたが、見事、国公立大学に合格されました。
この科目なら、1日10時間以上勉強していても気にならないという科目があり、その強みを生かしての合格でした。そして、その科目を大学で専門的に学んでいかれます。ここから先は、あまり心配はないのかなと思っています。

この方の対応をさせていただいて、感じるのは、教育は基本的に人間を一定の型にはめて、一定の能力を高め、資本主義社会に送り出すシステムであるということです。

これは現代社会ではやむを得ない一面があります。そして、それは、個性を否定することとほぼ同義です。

その為、時に思考が硬直する場合があり、教育関係者に頭が固い人が出現するのも、構造的宿命であり、職業病とも言えるのかもしれません。

それほど、今の教育の型にはめる力は強固でもあります。そのことは、ギフテッドの方と大変相性が悪い。この圧力をいかにやり過ごすかは大事なことだと考えて対応していました。

幸いにこの方が通っていた高校は、自由な校風の学校だったので、所謂、自称進学校でよくある大量宿題の提出物地獄を経験せずに済んだことも大きかったなと感じます。

また、この方を通じて、いかに今の「学校」が管理に偏っており、個性が埋没する構造になっていることに気づくことができたなとも思っています。

その視点を獲得できたことで、今の大学教育も管理へのシフトが進んでいることを理解できたたとも思います。シラバスという管理指標によって教える側が自由度を失い、GPAなる数値化された指標で評価される環境は、教わる側も自由度を失っている。

管理は、結果として思考や行動の画一化につながり、その結果、硬直化への道を進んでいないか心配な側面もあります。

なので、大学入試への過度な幻想は私は無意味だと感じています。全体の構成が管理に傾いているのに、大学入試だけをいじったところでどうにもならないと思うからです。

なので、一般入試の問題点をやり玉にあげ、総合選抜入試への過度な期待を醸成する今の空気には懐疑的になってしまうのです。

そんな中、やり方次第では、一般入試であっても、個性に寄り添えるということを実感できたことは、私にとって貴重な体験だったなと思っています。これから大学という高等教育を受けるわけですから、しっかりと基礎学力向上によって、学びの土台を形成することは、とても大事だと再認識しています。

その意味では、まだまだ一般入試は捨てたものじゃないとも思っています。


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