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あさをつなぐひと~①

 

  白岡あさ様

 これは言うなればあなたへのお手紙、ないしは読書感想文です。


  あなたが加野屋に嫁いですぐに起きた明治維新から一五〇年経ち、もうすぐ「平成」(へいせい)という年号が終わりを迎えます。二年後には、戦のない世の中への願いを込めてオリンピックというものが、日本の東京で行われます。

 陸蒸気(おかじょうき)よりも速い乗り物もたくさん出て来ました。

 飛行機という乗り物は、大阪―東京間を五〇分くらいで行き来する事が出来ます。たくさんの人の命をのせて空を飛ぶのです。操縦士だけやのうて乗務員、その飛行機を安全に飛ばそうとする、たくさんたくさんの人たちのおかげで毎日空を飛んでおります。

 飛行機よりも遅いけど、高速バスというものもあります。昼便・夜便とあって、おなごが安心してそれでいて快適に過ごせるようにと、女性限定(おなごげんてい)の『レディースシート』なんかもございます。おなごが夜に独りで長距離の移動をする。まさにびっくりぽんやありませんか。

  他にも、新幹線という乗り物は ※1おなごの売り子さんが

「ビールにお茶、お弁当にアイスクリームはいかがですか」

 とわざわざ売りに来てくれはります。あなたが一口食べて好きになったように私もアイスクリンが大好きです。アイスクリン以外にも、びっくりぽんな、※2しびれげいしゃの味がする甘いもんがたくさんございます。

 こちらは、

「おなごに学問なんて必要ない」

 なんて眠たいこと言うてられへんような時代になりました。※3勉強せんでええなら勉強したない。日本は、親が子に勉強せえよという幸せな国になりました。それでもまだ余所さんの国では、※4一本のペンと一冊の本をくださいと、あなたによく似た勉強したくても出来へんおなごはんも、ようけおります。

 恵まれた場所におる私は、

「おなごとおとこ、別に平等じゃなくてもええんとちゃうかな」

 という考えを持っております。別に選挙権いらんとか、そういうかたい話やのうて、差別でも区別でもなく、珈琲豆の ※5ブラジルサントスNo.2とキリマンジャロの違い程度で、要するにどっちゃでもええかなて思てます。

 重たい荷物運んでくれるならそれに越したことはない。一言『ありがとう』と言えばそれでええかなという感じです。

  今(こちら)は、自分で自分を養う時代です。

  嫌でも何でも“個”にそれを強いられております。



つづく  

 ※()中は、その言葉をそう読んでほしいという願いや、あささんに対する説明を兼ねて、そうしております。なんせ150年前の人への手紙です。あささんが分かるようにと書いております。


補足情報

※1 おなごの売り子:新幹線の車内販売。翌年(19年)からなくなった所もあり、だんだんと消えていく光景かもしれない。

※2 しびれげいしゃ:作中、あさの表現。 Civilization (英:シビィラゼイション 米:シビィリゼイション)。文明または、文明開化という意味の英語を聞き間違えてこうなった。

※3 勉強せんでええなら…:筆者が教育を受けていた1990年代後半~2000年代初頭にかけてのこと。それよりも後の2010年代~はまた違う傾向かもしれない。

※4 一本のペンと一冊の本:マララ・ユスフザイのこと。

※5 ブラジルサントスNo.2:そういう珈琲豆があります。(No.1はどこにあるのでしょう…。)


この感想文は2018年に書いたものです。(念のため)


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