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かかと。


先生、あのね。

 ぼくは、お姉ちゃんがこわくありません。ちっともこわくありません。先生はこわいですか。

 長谷川くんのお母さんと、どっちがこわいですか。

 隣の席の吉田くんは、ぼくのお姉ちゃんがこわいのです。ぼくに用事があったりとかして、廊下をお姉ちゃんが歩くと背筋がしゃんとします。吉田くんは、お姉ちゃんがすきなのかなあと思います。でも本人は、こわいと言うのです。

 何でなのかなあと思って、吉田くんに聞くと、ぼくのお姉ちゃんは、ぼくの知らない所で、かかとを落としていたみたいなのです。


「拾ってくれたらよかったのに。」
「へ?」
「お姉ちゃんの、かかと どこ?」
 探しているぼくに何故か首を傾げる吉田くん。
「ん?」
 と首を傾げるので、ぼくも
「ん?」
 と、反対方向に傾げておきました。

「ぼくが代わりに返しとくわな」
 と言うたら吉田くんは、笑ってました。
「お前がアホでよかったわあ」
 と言われました。ぼくがアホで、良かったそうです。

 家に帰ってお姉ちゃんのかかとを見たらちゃんとありました。ふたつ。

 でも、ぼくは弟として、姉のために。何か出来ることはないのかと思い、帰る前に、落とし物係の田辺さんに聞きました。お姉ちゃんのかかとが ふたつ、家に帰ったらちゃんとあったので。田辺さんの事はすっかり忘れていました。せやけど次の日学校に行ったら


「あったよお~」
 と、言われて
「えっ かかと、あったの?」
 と聞いたら
「うん。靴下あったよ。」
 と言われました。先生、今ぼくの手元には知らない人の靴下があります。どうしたらいいですか。

おわり


【学級通信『ごんたなきむしあまえんぼ』No.007〜みんなの作文より掲載】


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