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『熱風』に吹かれて

先月、静岡県掛川市の『高久書店』へ久し振りに行ってきた。1月に自動車事故に遭い、軽いむちうちで通院しているうちに足が遠退いていたし、車が代車で運転する時間が楽しくなくなっていたのも理由のひとつだった。店長さんの顔を見て話をしたい。急にそう思った。いや、無意識に動いたのかな、理由を自分の中で色々作っていたから。

自分ではわからなかったけれど、私の雰囲気は結構沈んでいたらしい。話をするうちに店長さんに言われてハッとした。
悩みが、私の身体を蝕んでいた。気付かぬうちにじわじわと蝕まれていて、店長さんにそれを気付かされた。それほど多くはお会いしたことないのに、よっぽど暗いオーラを纏っていたんだなぁ…と、店を出た後で反省しきり。

私の悩み。それは『次の仕事をどうすればいいか?』
現在の職場を退職する日は決まっていて、その日は刻々と近づいている。なのに、次の仕事は全く決まっていないし目星もない。数件、働いてみないか?というお話もいままで頂いてきたけれど、どの仕事も「これでいいのか?やりたいことなのか?」と考え始めると止まらなくなり、結局お断りしてきてしまった。
特に強い資格があるわけでもなく、年齢も厳しいので(世に言うアラフィフ)なぜ選り好みしてしまうのか…後悔しているのも事実。
そんな時に行った高久書店だった。

自分自身と向き合う。やってきたつもりだったけれどそれは「上っ面」だけで、実際は何も考えずその時の気分で過ごしてきたのだと、今になってわかってきた。後悔なんてしたくなかったけれど、私は間違った道を選んだのではないだろうか?と、黒い感情に中身を埋め尽くされて息苦しくもなってくる。そんな状態で行けば、そりゃ店長さんにもバレるよな、と情けなさが更に湧いてきたりしてグチャグチャな感情だったなぁ。

話しているうちに「この『熱風』を知っていますか?スタジオジブリが発行しているんですよ」と、カウンター後ろの棚から1冊の冊子を店長さんが見せてくれた。初めて見るタイトル。表紙は安野モヨコさんの画。非売品とのこと。
店長さんのお話によるとこの冊子、おそらく静岡県内では手に入らないらしい。そんな冊子が何故高久書店にあるのだろう?
答えは中にあった。東京•荻窪にある書店『title』の辻山さんと高木店長さんの対談記事が掲載されていた。

「あぁ、これは読んでみたい。けれど他にも欲しい方がいらっしゃるだろうなぁ」と、一瞬のうちにいろんな感情が動いた私。その感情を読み取られたのか「これは差し上げます。最後の1冊ですが、きっとこれは貴方に差し上げた方がいいと思います」と店長さん。
吃驚した。いいのか?この私が持っていて?
迷いつつ、読みたい欲に負けて有り難くいただきました•••感謝です。

帰宅後に読んだ対談は、深く濃く、見えない傷に塗り込む軟膏(?)のような、私にとっては薬になる内容だったのでいただくことが出来て本当に良かった。他の記事も濃い内容なので、これで非売品なんて贅沢だなぁと幸せ噛みしめつつ読ませていただいた。

本は、紙に文字や画、写真が印刷されているもの。ただそれだけのはずなのに、何故こんなにもエネルギーを持ち合わせているのか。

タイトル通り、熱風が私の中に吹き込んできた。熱い。でも嫌ではなくむしろ長い間燻っていたモノに火を熾す力を伴って吹き荒れた風。

今すぐには無理でも、自分を信じて前へ進もう。1度だけの人生ならば、やらずに諦めるよりもやりたいことを目指して1歩ずつ前へ進もう。やっとそう思い始めた今。

最後に。
店長さん、いつも本当にありがとうございます。私もいつか形に出来るよう、風を待ちつつ前を見て進みます。




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