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作詞家:松本隆(個人的に好きな松本隆が作詞した歌)

 Lyricist Takashi Matsumoto.


 最近、立て続けに、松本隆さんの特集番組を目にしたので、どうやら活動50周年らしい松本さんが作詞した歌の中で、個人的に好きな歌をランキングしてみます。




【第5位「赤いスイートピー」】

歌:松田聖子 作曲:呉田軽穂

 松本隆さんといえば、松田聖子さんのプロデュースが有名で、呉田軽穂こと松任谷由実さんとのコンビでたくさんの名曲を生み出しています。その中でもっとも有名な曲の一つです。

 出だしの「春色の汽車に乗って~♪」から、いきなり世界に持っていかれますが、私が特に好きなのはBメロの歌詞  

何故 知りあった日から半年過ぎても あなたって手も握らない

 なんとなく年上の男性が取っている態度の距離感がいいのです。女性の方も、なんか一歩踏み出さないまま待っているんですが、この二人の未来はいかに?って感じですよね。

 実は、「続・赤いスイートピー」という曲があるのですが、そこで描かれる二人の関係の結末に、やっぱりか~と、うなずいたことを憶えています。


【第4位「卒業」】

歌:斉藤由貴 作曲:筒美京平

 続いて、斉藤由貴さんのデビュー曲ですが、この時期、同じ「卒業」というタイトルの歌がいくつか発表されたのを記憶しています。

 この歌ではなんと言ってもサビの歌詞が印象的です。

ああ卒業式で泣かないと、冷たい人と呼ばれそう。
でも、もっと悲しい瞬間に、涙はとっておきたいの

 このサビの歌詞だけで、他の同名曲を置いてけぼりにした感じでした。


【第3位「喜望峰」】

 歌・作曲:寺尾聰 

 寺尾聰さんとの曲だと「ルビーの指環」の方が超有名ですが、私はアルバムに収められたこの曲の歌詞が好きすぎるので紹介します。

 ちなみに、松本さんは、寺尾さんのアルバムに3曲の歌詞を提供しているのですが、どの曲も出だしに『風』が書き込まれていて(ルビーの指環では「くもりガラスの向こうは風の街~♪」で始まりますね)、まさに『風街』の世界観なんですよね。

 この「喜望峰」は、自分の夢のために恋人のもとを去っていく男性の歌なんですが、とにかく渋い歌なんです。

独りでいるより二人の方が、なおさら孤独な時もある

待っててくれとは、今は言えない コインでも投げて決めてくれ

 男のダンディズムを感じます。うん。


【第2位「硝子の少年」】

 歌:KinKi Kids 作曲:山下達郎

 いよいよ第2位は、KinKi Kidsのデビュー曲です。今回紹介する曲の中ではもっとも新しい(と、言っても1997年の)曲なんですが、昭和の歌謡曲っぽくて、ちょっと古くささを感じさせて、耳に残るいい曲なんです。

 歌詞の方でも「赤いスイートピー」と同じく、出だしの「雨が踊るバスストップ~♪」で、がっつり世界に引き込まれます。「雨が降る~」ではなく「雨が踊る~」なんですよね~。このあたりの言葉選びはさすがですよね。

 そして、このBメロの歌詞の印象的なこと

ぼくの心は、ひび割れたビー玉さ のぞき込めば君が逆さまに映る

 ビー玉で遊んだ経験なんてなさそうなアイドルに敢えて歌わせる、狙って外さない松本隆さんは、やっぱり偉大なのです。


【第1位「メイン・テーマ」】

歌:薬師丸ひろ子 作曲:南佳孝

 そして第1位は薬師丸ひろ子さんの「メイン・テーマ」です。

 薬師丸ひろ子さんとの曲も「探偵物語」や「Woman」など、名曲ぞろいなのですが、南佳孝さん作曲のこちらが一番のお気に入りです。

 いつものように、出だしの「時は忍び足で心を横切るの~♪」って歌詞で映画のシーンに引き込まれ、サビの「愛って、よくわからないけど~♪」って歌詞(普通、サビに使わないような台詞ですよね)で心をつかまれてしまう名曲です。

 実は、この曲、薬師丸ひろ子さんの「メイン・テーマ」が女性目線歌詞で、同じ場面の男性目線歌詞の「スタンダード・ナンバー」という曲を南佳孝さんが歌っています。

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 本来、松本隆さんの詞は、限定された言葉数の中で、独特の言葉選びや比喩表現を使って、わかりやすく物語を感じさせてくれるのですが、この曲はいつもの松本作品とは違って解釈が難しかったりします。

 男女の恋のかけひきを描いた曲で、女性が泣く場面があるのですが、女性目線、男性目線の双方から見ないと、感情の機微が分からなかったりするんですよね。

 最後の方の歌詞を見比べると

「メイン・テーマ」(女性目線)では

愛って、よくわからないけど、深呼吸、不思議な気分

「スタンダード・ナンバー」(男性目線)では

愛って、よくわからないけど、傾く心がいいね

と、歌われているので、思わず感情が表に出てしまった女性に対して、男性が魅かれちゃったみたいな結末と思うのですが、どうでしょうか。

 また、二つの歌詞をじっくりと見比べると、「メイン・テーマ」の方に

わかってる 昨日の賢い私より少しだけ綺麗になったこと

て、いう歌詞があって、ここだけ男性目線の歌詞が対応してないんですよね。やっぱり一枚上手なのかな

 この歌詞なんですが、かけひきの中では、やっぱり行儀いいだけじゃなく、感情に素直に行動することも大事なんですよね。うん。


 そんな感じで歌詞を読み解いていくのが楽しいのが、この「メイン・テーマ」なのです。さらに男女のかけひきで考えると、あの「赤いスイートピー」の彼女に足りなかった部分も見えてきたりして、松本隆さんの世界をより深く感じられた気持ちになるのです。


 まあ、何年生きてきても、愛ってよくわからないんですけどね。久しぶりに松本隆さんの世界に触れて、そんなことを思ったのでした。


「メイン・テーマ」と「スタンダード・ナンバー」については、再度、記事にしています。


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