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恋人も濡れる街角って、どこにある...(There is a Song)

『恋人も濡れる街角』:中村雅俊(1982)


 桑田佳祐さんの、他アーティストへの提供曲の詞を考えてみる "note" も、これで一端、最後になります。

 今回の『恋人も濡れる街角』は、中村雅俊さんの17枚目のシングルとして桑田佳祐さんが手がけた曲で、1982年に映画『蒲田行進曲』の主題歌にもなっています。
 残念ながら、桑田さん本人によるセルフカバーは音源化されていません。



 いい曲ですよね~。
 こういうムード歌謡みたいな曲を書かせたら、ほんと、桑田さんは上手いです。

不思議な恋は 女の姿をして
今夜あたり 訪れるさ
間柄は遠いけど
お前とは OK 今すぐ

YOKOHAMA じゃ今 乱れた恋が揺れる
俺とお前の まんなかで
触るだけで感じちゃう
お別れの Good-night 言えずに

ああ つれないそぶりさえ
よく見りゃ愛しく思えてく
ただ一言でいいから
感じたままを口にしてよ

 「不思議な恋が女性の姿で訪れる」なんて表現は、もう、ぎゅっと、心をつかまれるように感じませんか? 
 なんか、恋する時って、ほんと不思議なんですよね。うんうん。(←どうした?)

 また、この曲では「YOKOHAMA」や「馬車道」など、実際の地名が出てくるとこが、大人ムードをさらに印象づけています。
 洒落た街を舞台にしてるからこそ、大人の恋の生々しさが映えるのです。

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 一番の歌詞では、一夜の恋?の感じで、女性との出会いと別れが描かれ、二番の歌詞では、街で似た女性を見かけたことをきっかけに、その思い出に悶える男性の様子が描かれています。

 二番のBメロ部分とかも生々しいですよね。

ああ 時折雨の降る
馬車道あたりで待っている
もうこのままでいいから
指先で俺をいかせてくれ

 「指先で俺をいかせてくれ」って、そっちの方にしか思えないんだけれど、実は、忘れることの出来ない思い出から、"解放して俺を先に進めさせてくれ!" って意味も含まれてるんだと思うんですよね。
 そう思うと、この曲の歌詞は、できるだけ際どく見せておきながら、実は、こういう意味でした!ってタイプなのかもしれませんね。

 そして、タイトルにもなってるサビの歌詞

愛だけが 俺を迷わせる
恋人も 濡れる街角


 「濡れる」って漢字で入ると、途端に昭和エロス的な雰囲気を感じません?(え、そう思うのは私だけ?)

 でも「恋人も濡れる街角」が意味するものはなんなんでしょうね。

 恋人 "" なんで、「○○も濡れるし、恋人濡れる街角」みたいな文脈ですよね。

 単純に考えれば、"思い出させる場所は"、「雨に濡れた馬車道、恋人も濡れる街角」って感じだったり、"街をさまよいながら"「俺も雨に濡れてるし、きっと、恋人も濡れる街角」って感じになるのかな…

 うーん、それでも、なぜ「恋人濡れる」のかは、分からないですね。

 エロス脳をフル回転させて想像するのであれば、一番の歌詞に、「お別れの Good-night 言えずに」や「つれないそぶり」、「一言でいいから、~口にしてよ」みたいな箇所があるので、以前、出会ったこの女性とは、なんかスッキリしない別れ方だったのかもしれません…
 それで、思い出に苛まれる男性はこう妄想するのです。
 "今、あなたのことを思い出して、俺は、こんなに胸を掻き立てられてるんだけど、あなたも同じような気持ちになるのかな… いや、同じ気持ちになってくれてるよね" と…

 ここでいう "濡れる" っていうのは、情愛を掻き立てられてる様子を表す言葉なんでしょうね..(エロス方向には違いありませんが..)
 だから、自分もそうだから、恋人って流れになるんだと...

 そんな自分の妄想の中で "愛に迷わされている" っていうのが、サビの部分の解釈なのかな…  と、まあ、そういうことにしておきましょう。
 というわけで、「恋人も濡れる街角」がどこにあるかというと、男性の妄想の中というのが、私的結論なのです。うんうん。


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 また、タイトルや歌詞だけでなく、桑田さんが、中村雅俊さんへの提供曲を、なぜ、こんなエロティックな歌にしたのか…ってとこは不思議ですね。

 というのも、当時の中村雅俊さんのイメージといえば、もう、これは「青春ドラマの人!」という感じだったんですよね。
 「われら青春!」、「俺たちの旅」、「ゆうひが丘の総理大臣」などなど、大ヒットした青春ドラマは数知れず…
 歌の方でも、『ふれあい』、『俺たちの旅』、『心の色』など、その "優しさ" であったり、"誠実さ" がにじみ出ていたのが雅俊さんらしさだったのです。

 そんな中村雅俊さんに、こんな生々しい曲を歌わせるなんて、かなり大胆なイメージチェンジだと思うんですよね。

 まあ、当時30代となっていた中村雅俊さんですから、それまでとは違った、大人の色香みたいなものを意識して、変化のきっかけとなる一曲にしたかったのかもしれませんね。



(桑田佳祐さんの他者への提供曲関係 note )

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