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私 "Small World" が、 一穂ミチさんの「スモールワールズ」を読んでみた。

 Small World read the "SMALL WORLDS"



 一穂ミチさんの著書「スモールワールズ」を読了したので、 "note" していこうと思います。

 リリースから5ヶ月経ってるし、その間に、第165回直木賞候補にもなってたりして、記事にするタイミングとしては、ほんと、今さらなんですが、それでも記事にしたいぐらい面白かったのです!


 ちなみに、一穂ミチさんご本人は "note" の住人さんです。


 その一穂ミチさんが、今年の4月にリリースした著書「スモールワールズ」は6編からなる短編集です。


 自分のハンネと同じタイトルなんで、本屋で見つけて、即、購入したのですが、転勤等で今年の前半戦はほとんど読書できなかったんですよね。

 夏ぐらいから読書を再開したのですが、この「スモールワールズ」は真夏に読むより、秋になって読みたいと思っていて、9月の三連休にようやく読んだというわけなのです。....


 読む前は、”ハートウォーミングな人間ドラマ” のイメージだったのですが、読んでみると、決して、ウォーミングな話ばっかじゃないんですよね~。

 ホロッとさせられる人間ドラマもありますが、ちょっと毒がある話や、ミステリーなんかもあって、実に様々な物語の詰め合わせになっています。

    なかなかお得な詰め合わせだと思います。


+  +  +  +  +


(収録作品の概要)


『ネオンテトラ』

夫との関係に鬱々としていた美和は、ある夜、一人の中学生男子と出会う。水槽の中で泳ぐペットの熱帯魚と孤独な少年を重ねながら、二人の逢瀬は続けられ……。

 最初の話は、淡々とした雰囲気で進むのですが、独特の緊張感を持った話なんですよね。
 そうかと思えば、あれ、そっちに進んじゃうの?
 って感じの展開で、読み上げた後、この一穂ミチさんは一筋縄ではいかない作家さんだと思ったのです。


『魔王の帰還』

鉄二の平和な高校生活はある朝くずされた。泣く子も黙る恐ろしい姉ちゃんが出戻ってきたのだ。傍若無人でめちゃくちゃな姉だが、その裏には悲しい理由がありそうで……。

 "魔王"という怖い単語が入ってますが、ホームコメディみたいな作品です。"魔王" というのはその家のお姉さんのことで、収録作品中で、最も愛すべきキャラクターなのです。
 個人的には1番気に入ってる作品で、ぜひ、続編も期待したいとこなのです。

    一穂先生、前日譚でも、後日譚でもいいので続けてほしいです。タイトルは『魔王の冒険』や『魔王の休日』、『魔王の一番長い日』なんかどうでしょう。

 実はアフタヌーンでコミカライズした作品が連載されてたようです。


『ピクニック』

生後十ヵ月の女児が不慮の死を遂げた。幸せな家族に向けられる恐ろしい疑惑――赤ちゃんを殺したのは身内ではないのか。衝撃のラストが待ち受けるミステリー。

 ほのぼのしたタイトルなんですが、こちらは、ちょっと怖いミステリーで、第74回日本推理作家協会賞短編部門の候補作品です。
 タイトルもですが、幸せな家族のピクニックの光景から始まるんですよね。その後の展開がまた…   少しずつ流れる不穏な空気がたまらないのです。


『花うた』

兄を殺され、天涯孤独の身となった深雪は、一通の手紙を送ることに。宛先は、服役中の「兄を殺した加害者」本人だった。往復書簡がもたらす、罪と罰と赦しの物語。

 往復書簡で構成された短編。
 手紙の送り主の表記の変化にとまどいつつ、それぞれの手紙を読んでいくと、予想外の展開に…  手紙なのにドキドキしてしまう世界なのです。


『愛を適量』

くたびれた中年教師の慎悟は、十数年ぶりに我が子と再会する。「しばらく置いてほしい」と言う子どもとの不思議な共同生活で、家族の時間を取り戻すことはできるのか。

 このタイトルがいいんですよね。"適量" は、ほんと難しいのです。これもキャラが強い作品なんですが、親子って…  と考えさせられました。
 なんと、ドラマ化したPVなんかも出来ちゃったりしてます。(読み終わった方は、ぜひ!)


『式日』

高校時代から仲の良かった後輩の父親が亡くなった。急遽参列することになった葬儀への道中、後輩と自分との間に生まれてしまった、わだかまりの正体に気付いていく……。

 最初の『ネオンテトラ』と同様、淡々とした雰囲気を持ちながら、独特の緊張感のある話なんです。読み終わった後、この短編集には、各話にゆるいリンクが張られていることに気がつくのです!


+  +  +  +  +

 

 文体も構造も雰囲気も異なる6編なのです。
 作者の一穂さんとしては、いろんな話があれば、読んだ人に、どれかヒットするだろうみたいな考えだったらしいのですが、結果としては、どの話も面白いという……w

 この秋の読書には、うってつけの本だと思います。 




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