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久しぶりに観てみた映画の話【コッポラのYA三部作】

 F・F・Coppola's "Yong Adult Trilogy"

 久しぶりにその映画を観ると、何か印象が変わってたり、昔は気づかないことを見つけたりすることもあるので、そういう視点で ”note” します。


 今回、紹介するのは

「フランシス・F・コッポラ監督のYA三部作」


【 コッポラ監督作品(1972-1984)】

 ゴッドファーザー(1972)→アカデミー作品賞
 カンバセーション(1973)→パルム・ドール
 ゴッドファーザー PART II(1974)→アカデミー作品賞
 地獄の黙示録(1979)→パルム・ドール
 ワン・フロム・ザ・ハート(1982)
 アウトサイダー The Outsiders (1983)
 ランブルフィッシュ Rumble Fish (1983)
 コットンクラブ The Cotton Club (1984)


 フランシス・F・コッポラ監督といえば、1972年の『ゴッドファーザー』から1979年の『地獄の黙示録』まで、アカデミー賞やカンヌ映画祭のパルムドールなど、最高峰の映画賞を次々と受賞し、30代にして、世界の「巨匠」となった映画監督です。

 ただ、その後の『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982)が興行的に失敗し、多額の借金を背負うことになりました。
 そのため、しばらくは雇われ監督となるのですが、その時期に撮られた作品が『アウトサイダー』『ランブルフィッシュ』『コットンクラブ』で、いずれも若い世代の青春映画だったことで「Yong Adult三部作」と呼ばれています。

 もちろん、三部作と言っても話のつながりはなく、出演者が重なっていることぐらいです。


 今回、Amazon prime videoで『コットンクラブ』を久々に観たので、併せて所有している『アウトサイダー』と『ランブルフィッシュ』もDVDで観直してみたので紹介します。


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出演者を見てるだけで楽しい三部作

 今観ると、「YA三部作」は、よくあるドラマって感じなのですが、当時の若手俳優をたくさん起用しているので、その俳優さんの若い頃を楽しむのが正しい感じがしますね。

アウトサイダー
 C・トーマス・ハウエル
 マット・ディロン
 ラルフ・マッチオ
 パトリック・スウェイジ
 ロブ・ロウ
 エミリオ・エステベス
 トム・クルーズ
 ダイアン・レイン
 トム・ウェイツ

ランブルフィッシュ
 マット・ディロン
 ミッキー・ローク
 ダイアン・レイン
 ニコラス・ケイジ
 クリス・ペン
 トム・ウェイツ
 ソフィア・コッポラ

コットンクラブ
 リチャード・ギア
 グレゴリー・ハインズ
 ダイアン・レイン
 ニコラス・ケイジ
 トム・ウェイツ

 三部作とも出演している俳優さんは二人いて

 ヒロイン役のダイアン・レイン

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 やっぱりきれいですよね。
 『コットンクラブ』では主役の一人です。


 脇役ですが、アクが強いトム・ウェイツ

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 本業は、声が渋いシンガーソングライター。
 いい顔してるんですよね、この人。
 俳優としては『コットンクラブ』の後の、ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ロー』の方が印象的です。

 その他、2作で主演級だったマット・ディロンや、存在感の光るニコラス・ケイジなんかもいい感じです。
 ここで出演していた俳優さんたちは、最近ではあまり見かけることはなくなってしまいましたが、90年代~00年代あたりの作品では、ちょくちょく顔を見かけていたので、そういうのがけっこう楽しかったりしました。


『アウトサイダー』について

オクラホマ州タルサの少年グループ“グリース”と“ソッシュ”の対立を軸に、少年少女たちの行き場のない日常をつづっていく。1970年代のある種過激な映画製作から一転し、ノスタルジックな方向へ転換したフランシス・コッポラ監督が、スーザン・E・ヒントンの小説を題材に、『理由なき反抗』『ウエスト・サイド物語り』のように往年のハリウッド・ゴージャスな総天然色青春映画的ノスタルジーを狙ったとおぼしき作品。

 少年グループの対立を描く青春映画、はっきり言って、ストーリーはベタな感じで、だいたい予想通りの展開となるのですが、その正直さが、この映画の良さでもあるのです。

 後にブラット・パックと呼ばれる若手スター候補生たちがたくさん出演していることも見どころの一つなのですが、それよりも、映画の中で流れるスティービー・ワンダーの「ステイ・ゴールド」が心に残るのです。
 多分、この映画が高評価されているのは、この曲のおかげもあると思うんです。

子どもたちはみな黄金の輝きを持っていて、その心を持ち続けてほしい。



『ランブルフィッシュ』について

フランシス・フォード・コッポラ監督による青春群像ドラマ。
不良グループのリーダーで“バイクボーイ”と呼ばれる兄に憧れ、喧嘩に明け暮れるラスティ。ある日、姿を消していた兄が街に戻って来るが、人が変わったようになっており…。

 三部作の中で、最もコッポラの作家性が出ているのがこの作品だと思います。
 ストーリーや結末はやっぱりベタなんですが、全編がほぼモノクロで撮影されていて、陰影がきつく、終始、暗い画面でまとめられている、ちょっと実験的な映画になっています。
 やんちゃな弟マット・ディロンと、兄ミッキー・ロークのまったりとした会話がなんとも言えず、そこに父デニス・ホッパーが絡むもんだから、観ていて、なんか鬱々とした感情がたまっていく感じなのです。

 今回、観直してみても、けっこう好きだったのですが、兄ミッキー・ロークが病んでるしか見えない!、で、警察、ひどすぎるだろ!って感じで、やっぱりスッキリしない結末でした。

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 マット・ディロンの白のタンクトップ姿(ちょっとマッチョでヤンチャな感じ)と、ミッキー・ロークの病んだ雰囲気がピッタリなので、ぜひ、そのあたりを楽しんでもらいたいです。



『コットンクラブ』について

1920年代、禁酒法時代のニューヨーク実在のナイトクラブ“コットンクラブ”を舞台に、ミュージシャン、ダンサー、ギャング、美女たちの人間模様が繰り広げられる。

 ナイトクラブが舞台なので、役年齢が上がっているためか、あまり青春映画には思えませんが、一応、三部作のひとつです。

 正直、S・E・ヒントンの原作をもとにした『アウトサイダー』と『ランブルフィッシュ』とは毛色が違っているので、当時、観た時も ”あれっ” と思ったのですが、今回も、同様の印象でした。

 だって、主人公のリチャード・ギアは、結局、何もしないんですよ~、それでハッピーエンドといえるのか!と、今回、観直してみてもいただけないんですよね。

 ただ、やっぱり自分が年齢を重ねたせいか、全編を彩るジャズや、ナイトクラブで繰り広げられるショーが素敵で、ディテールの部分で楽しむことが出来ました。

 あらためて、印象に残ったのは、グレゴリー・ハインズのダンス

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 特に、実兄のモーリス・ハインズとのタップ・ダンスの競演シーンは、この映画の最大の見どころと言ってもいいんじゃないかと感じました。
 主役のリチャード・ギアやダイアン・レインよりも、グレゴリー・ハインズを中心に観ていくと、楽しめる映画だと思います。

 グレゴリー・ハインズに魅かれた方は、ぜひ『ホワイトナイツ/白夜』と『タップ』もお薦めしておきます。


フランシス・F・コッポラ監督のその後について

 その後もコッポラ監督は良作を制作してると思うんですよね。

 タッカー (1988)
 ゴッドファーザー PART III (1990)
 ドラキュラ (1992)
 レインメーカー (1997)

 でも、あまりにも1970年代の印象が強すぎて、期待値が高くなりすぎてたと思うのです。『ゴッドファーザー PART III 』なんかも悪くないと思うし、終盤のオペラハウスでの多重暗殺シーンなんてドキドキさせてもらえたのですが、偉大な前二作と比較すると......に、なってしまうんですよね。

 そう考えると、過去作品の呪縛にとらわれず、ある意味、開き直って撮った「YA三部作」は、物語はベタでも、気楽に観ることのできる愛すべき作品なのかもしれません。