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世界とふれた喜びの音の話

 Sound of Delight



 コロナ禍の中でも
 家にこもりっきりというのは.....と、いうことで、ひと気の少ない渓谷へ

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 やっぱり気持ちがいいものです。
 TVでキャンパーさんたちの様子を見たりしますが、やっぱり、こういう時期だからこそ、自然の涼や緑を求めてしまうのかもしれません .....。


 そんな、外の世界に触れた時、私の体の表面を覆っていた薄い殻にヒビがはいるように、小さな音が聴こえたように感じました。


 .......それは、貫入の音なのです。


 陶芸をしている人以外には馴染みのない言葉かもしれませんが、貫入というのは、陶器のガラス質の表面に入っている小さなヒビのことです。

 陶器は、成形した粘土の上に釉薬をぬって、一緒に焼成するのです。その釉薬が高温で焼成されていく中で、表面のガラス質に変化するのです。


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 釉薬をぬった器を窯に入れ、長い長い焼成を行うのですが、焼きあがった後も、そのまま窯の中で、ゆっくりゆっくり冷ましていきます。

 この冷まされていく過程で、貫入が入っていくわけですが

 その時、小さな音がするんです。


 ......ピリン、ピ.. ピリン と

 それはそれは微かな音なんですけど、とてもとても澄んだきれいな音がするのです。(小さな風鈴のような__)


 さらに、窯を開いた時、外気に触れると、さらにたくさんの貫入音が、絶え間なく聞こえてくるのです。


 その様子は、土作りから、練り、成形、乾燥、施釉、焼成まで、長い長い工程を経てきた器たちが、初めて外の世界とふれたことを喜んでいるように感じるのです。


 多分、これも陶芸の魅力のひとつだったりするんですよね。

 いつか、陶芸に触れてみようと考えている方は、ぜひ、窯出しの瞬間に立ち会うことをお薦めします。


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 いろいろと大変な時代ですが、やっぱり、外の世界と触れる機会は大切だと思うんですよね。

 早く、みんなで貫入音を響かせ合いたいと思ったのでした。