幸せそうなカップルを見てやっかんだりする ~とあるOLの乳がん日記【96】
96.
相変わらず落ち着かない気持ちのまま、次の精神腫瘍科の受診まで、じりじりと待っていて、何かできることはないかなと思って、暇さえあればSNSや、スマホばかり見た。
朝方、すごく早くに目が覚めてしまって、また、誰かに話を聞いてほしくなったので、乳がん患者さんのサイトをのぞきにいった。
そうしたら、今度は明後日の平日の夜に、小規模の集まりがあったので、どうしよう、と思ったけど、やっぱり勢いで、えいやっと申し込んだ。
あとこの間行った、お台場の、がん患者さんのための建物は、本当に素敵な所だったと思って、また行きたいなと思ったけれど、基本は平日しかやっていなかったので、行けないなと思った。
でも、そういえば明日は、精神腫瘍科の受診があるから、中抜けじゃなくて会社のお休みをもらって、病院の前に少し寄ればいいんだと思いついたので、そうしようと思った。
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次の日、会社に行くより少しゆったり目に家を出て、この間行った、がん患者さんのための場所へ向かった。
のんびりし過ぎて、結局、その場所の最寄り駅に着いたのはお昼近くくらいになっていた。
駅周辺は、ほとんど人がいなくて、もう1回行った場所なので、まっすぐ向かえた。
そうしたら、私の前方でカップルが仲良く腕を組んで、歩いていたので、いいなあ幸せそうでと思って、ここらへんにカップルが休めそうなオシャレなカフェはないですよ、と心の中でやっかんで、落ち込んだ。
なんとなくカップルを追い抜かして行きたくなかったので、後ろをついて歩いていくと、ずっと方向が同じなので、おかしいな、と思った。
こっちのほうにはもう建物自体がないし、ひょっとして、どこか休める場所を探して、がん患者さんの建物をカフェか何かだと思って、間違えて来ちゃったのかなと思った。
でも、結局目的地は同じで、ほぼ3人同時に、その場所に着いた。
この間とは違って、建物の中は、スタッフさん以外は誰もいなかった。
スタッフさんは私たちを見るとこんにちは、と言って、カップルはスタッフさんに話しかけて、すぐさま部屋の隅っこのほうへ行った。
別のスタッフさんが、お話を聞きましょうか?と私にも言ってくれたので、私はお願いしますと言って、別の棟のほうへ向かった。
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スタッフさんたちは、人がいっぺんに来たから、急に忙しくなったみたいだった。
このあと予定ありますか?と聞かれたので、このあと通院することを伝えた。
ちょっと待っててくださいね、と言われたので、しばらく別棟で一人でいた。
この間と違って、説明会用の椅子も並んでいなくて、ものすごくゆったりとした空間だった。
私がいた別棟からは、もう一方の建物の全体が見えた。
そうしたら、カップルはいつの間にか、別々に、離れたところでそれぞれスタッフさんと1対1で話をしていた。
だから、なんとなく、どちらかがガン患者さんなんだろうなと思った。
そう考えたら、最初に見たときに、私と違って、幸せそうで羨ましいカップルだと思ったけれど、お互い相手がいるからこそ、きっと私の知らない、色んな悩みがあるに違いなくて、それを誰かに話を聞いてほしくて、だからこそ、私みたいにこの場所に来たんだろうと思ったので、人は全然、パっと見ただけじゃ、なにもわからないと思った。