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画面の向こう側にいる子たちのことを考えて|芦名沢 明菜

私には双子の姉がいる。
性格も見た目も、好きなものも得意なことも全然違う。

「違う人間なんだから、違って当たり前」

今はそう思える、でも昔は違った。


双子で生まれた私たちは、いつも色違いかおそろいの服。
1人が泣くと、続いてもう1人も。
1人が不安でいっぱいなときは、もう1人にもそれがうつって不安になる。小さいときは何でも。
いつも一緒で、同じ、それが当たり前だった。


幼稚園から高校までは同じところに通った。

「やっぱり双子って〇〇〇なの?」
「双子だけど、〇〇〇は違うんだねー!」
「姉の方は〇〇〇だけど、妹の方は〇〇〇なんだね」

何かのフィルターを通して自分を見られる、誰かと比較されることで自分が成り立っている、そんな気がして少しだけモヤッとしていた。


中学に入ると学力に差が出た。
自分なりには頑張っていたはずだったが、結果は思ったより悪かった。
「姉はこんなに良いんだし、私だってもう少し頑張れば追いつくはず」
全然気にしていなかった。

ある時、母親に「同じように育ててきたのに何でこんなに違うんだろうね」と言われた。

「姉と同じはずなのに…何で違うんだろう。何で私にはできないんだろう。自分はだめなやつだ。」
と思うようになった。

姉と私が違うことは自分が1番分かっているはずだったのに、「違う」ことが許せなくなっていた。
何が正解なのか、どんな自分だったらいいのか、どうやったら認めてもらえるのか、分からなかった。

人と比較されて、自分を認めてもらえない、それからいろいろな事がどうでもよくなって何事も諦めるようになった。
自分を出さない方が安全、周りに合わせる方が楽、普通なのが一番いい、人と違うことは悪いこと。
自分らしくない自分を眺めることしかできず、立ち止まり続けていることが辛くて、悔しかった。


高校を卒業して姉は専門学校、私は大学へ。
姉と離れたことで、大学で知り合った人たちはフィルターを通さずに、誰とも比較することなく自分を見てくれた。

「姉の方は〇〇〇だけど、妹の方は〇〇〇なんだね」
ではなく、
「あなたは〇〇〇だよね」
と言ってもらえることが本当に嬉しかった。

同じ学部の人、サークルやボランティアの仲間。
高校を卒業したら、個性のある人や自分に持っていないものを持っている人、尊敬する人、本当にいろいろな人に出会えた。

いろいろな言葉をかけてもらって、いろいろな話をして、いろいろな経験をして、錆びついていたものが意外と人の言葉で動いていった気がした。

頑張ったって他の誰かにはなれないし、こんなにいろいろな人がいるんだから、私は私でいいんだって自分を認めてあげることができるようになった。
そう思えたらなんだかとてもホッとした。


こんな風に過ごしてきた私は現在、主に中学生~大学生くらいの年代の女性(ガールズ)を対象にしたLINE相談事業を担当している。

この間、「ガールズ相談(夏)」が終了した。
恋愛や人間関係、身体や勉強のことなどいろいろな相談が寄せられるが、今回はセクシュアリティに関する相談がとても多かったように感じる。

「女の子を好きになった自分は変ですよね?」
「女性らしい身体になっていくことが嫌です」
「スカートを履きなさい、女の子っぽくしなさいと言われます」
「親は本当の自分を受け止めてくれないと思います」
「自分が女なのか、男なのか分かりません」

こうやって勇気を出してメッセージをくれた子たちが沢山いた。

自分もどうしたらいいのか分からず、誰にも話せず、本当の自分を認めてもらえるか、相手にショックを与えないか、頭も気持ちもぐちゃぐちゃで。この子たちの「普通」はいつどこから決まるんだろう。

自分は変なのかなって誰と比べて思うんだろう。

他人にどんなことを言われて、どんな目で見られてきたんだろう。


みんなと違う、おかしい、みんなの普通に自分が当てはまっていないと感じたとき、自分で自分を認められるように、人に認めてもらえるように支えてくれる人は、この子たちの周りにどれだけいるだろう。

本当のことを隠して、自分の気持ちに蓋をして生活しているこの子たちは、きっと不安でどれだけ考えても分からなくて、辛くて孤独なんだろうと思った。


みんな違っていいんだよ!ありのままでいいんだよ!

きっと誰かに言ったことがあり、誰かに言われたことがあるのではないかと思うこの言葉。
頭で理解ができるのと、その言葉と自分を認めて、人に受入れてもらえるかは別の問題だ。

自分は自分でいいんだ。って思えるようになるまでは、周りの環境と人にかかっていると私は思う。

大勢いるうちのたった1人かもしれないあなたは、自分を認めてくれた、受け止めてくれた人になるかもしれない。
目の前にいる人が、ありのままで進んで行けるきっかけになるかもしれない。

どんな状態で産まれても、どんな環境で育っても、自分の人生を自分で選択していくことができるように。人と違うことが当たり前で、その自分を大切にすることができるように、自分と違う人を傷つけない環境をつくっていきたい。


芦名沢 明菜(札幌市男女共同参画センター 職員)
プロフィール
某牛丼店と介護のバイト、ギターをかき鳴らしながら社会福祉学部を卒業。札幌市男女共同参画センターに勤務し3年目。休日はボランティアに行き、課題を抱える小学生と向き合っている。野外フェス・LIVE、ぼのぼの、オクラ、蒙古タンメンが好き。


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