【architecture】ラムネ温泉|藤森照信
大分県竹田市に一風変わった温泉がある
ラムネ温泉というネーミングもさることながら外観はお伽話に出てきそうな可愛らしい建築だ
建築家は可愛らしい建築をつくっているつもりはなく男らしい建築をつくりたいと言っているのを読んだ事があるが、焼杉と漆喰でつくった縞模様の外壁や松の木が植えられたトンガリ屋根がいかにもこの建築家らしい建築だ
この建築家は藤森照信氏だ
少し前に『情熱大陸』にも出演しており、今になって世間でも知られるようになったように思う
滋賀県のラコリーナ近江八幡が人気となり一躍有名になった節があるが、建築界では元々有名で風変わりな存在だった
藤森さんは東北大学の建築学科出身で、実は歌手の小田和正さんと同級生だった事はよく知られている
私が大学生の20年くらい前に、たまたま興味を持って買った『天下無双の建築学入門』という藤森氏の著書を読んだのがきっかけで好きになった建築家だ
著書には、草屋根の家を作りたいとか、石器で木を切りたいとか、全部自然のもので建築をつくりたいとか、なんだか変わった事を考える方だと思った記憶がある
当時はまだ東京大学の教授で建築史家の印象が強かったが、それからタンポポハウスやニラハウスや変わった茶室をつくるようになって実際に縄文時代みたいな建築をつくっていることに驚いた
ちなみに藤森氏の建築史家としての視点は非常に面白く、いくつも著書を出されているので是非読んでもらいたい
実物の建築を見たのはニラハウスの外観を見た事がある程度で、内部に入るのはラムネ温泉がはじめてだった
まず温泉はというと室内にアコヤ貝が貼ってある白い洞窟のような温泉があります
人工のものとは思えないような形と硫黄の溶けたような古めかしさが何とも包まれる感覚になります
露天風呂がこの施設の名前の由来であるラムネ温泉になっている
炭酸ガスの小さな気泡がゆっくり床から湧いてくる温泉で、お湯はぬるい
効能はあまり分からなかったが、三ツ矢サイダーのお風呂に入っている感覚が味わえる
さて建築だが、縄文時代の建築に憧れている藤森氏らしく、異彩を放つ部材や納まりだ
文字通り作りながら考えられた印象で、設計図があって確認申請を通った建築であることに驚かされる
私が注目したのは、ひとつひとつの寸法が小さいこと
普段木造住宅を設計するときは910ミリをモジュールにしてつくるが、もっと人間の肌感覚に近いスケール感である
私自身の身長が157センチで小柄なのもある、普通の住宅を例えるならば、小柄な小学生がダブダブのユニフォームを来てサッカーをしている感じであるのに対し、ラムネ美術館は、麻生地の自分の肌感覚に近く、肌触りのいい衣服のような感じがした
軒が深く薄暗い内部ではあるが、スケール感がちょうど良いため居心地がいい空間だった
そう考えると、私個人の感覚なので一般解ではないが普通の住宅のモジュールは大きすぎるように感じてしまう
世間では天井高さは高ければ高いほど良いように思われたり、広ければ広いほど良いと思われているが本当にそうだろうか…
もっと肌感覚に近いようなスケールで建築を考えていけば、よりスリムな建築が出来上がるのではないだろうか
そんな事を三ツ矢サイダーを飲みながら考えてみた
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