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【architecture】鈴木大拙館|谷口吉生

自身も巨匠であるが、偉大な巨匠である谷口吉郎氏を父とする谷口吉生氏設計の『鈴木大拙館』

鈴木大拙氏は日本の禅文化を海外に広めた仏教学者であり、文学博士である

谷口吉郎氏、鈴木大拙氏はいずれも金沢出身
金沢の地が生み出した才能が重なる建築である

建築は静かな住宅街にありながらも自然に囲まれた環境である

ギャラリーと水鏡の庭と名付けられた水盤に思索空間と名付けられた四角い箱が浮かぶように置かれている

建築背後に見える自然の森にワクワク感を抱かせながらも全貌は明らかにしない外観と動線

長い内部回廊は作品を紹介しながらも暗く外部には閉じている

そして回廊を抜けて90度曲がると水鏡の庭から明るい外部に繋がる

そこから外部回廊をゆっくり歩きながら思索空間へと向かう

図面は公式HPより引用しました

水鏡の庭(水盤)と同じくらい大事なのが、やはり周囲を囲うコンクリートの壁の存在だ

京都は龍安寺の石庭は、石の庭の先にある石垣が空間を人工的に仕切ることで逆に自然と人工との対比から自然を認知する
ただし、その石垣の高さやつくりには細心の注意が払われ、絶妙な高さになっている

同じように鈴木大拙館でもコンクリートの塀が絶妙な高さと長さで配置され背後の木々との調和を表現している

上野の法隆寺宝物館でも同様の表現がなされているが、自然と人工のバランスが巧みに設計されている

また水盤に浮く思索空間は水盤を介して自然との距離感を絶妙に調整してくれる

思索空間の周囲を歩けば空を含め自然と一体となった感覚を楽しめる

そのまま思索空間の内部に入ると内部は暗く暗順応により少しの時間空間を認識しにくいがしばらくすると目が慣れてくる

ボックス内部から開口部を眺めると、そこには切り取られた自然が絵画のように眺めることができる

情報を限定された静かな空間では思わず瞑想したくなってしまう


雪国ならではの質素で丁寧な暮らしが、金沢では感じることができる
曇天の多い地域特有の光を大切に扱う建築はどこか北欧建築に通ずるところもあるように思う

近年『谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館』が完成した。
まだ行けていないのでぜひ金沢へは再訪したい

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