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地階

ポルトガル語圏の建物の1階は、原則「地階」、つまり英国で言うところの「ground floor」です。 これを、伯葡語では「térreo (テーヒウ)」、欧州葡語では「rés-do-chão (れーシドゥシャウン)」といいます。

なので、エレベーターに乗ると、ブラジルでは2階を表す「1」のボタンの下にあるのは、「T」、ポルトガルでは「RC」、または「0」となります。  

伯葡語の「térreo」は「地」、「土」を表す「terra(テーハ)」を語源とした単語です。欧州葡語の「rés-do-chão」は、フランス語の「rez-de-chaussé」同様、「地面すれすれの」といった意味があります。

「地階」の次は序数と「階」を意味する「andar」を用いて「1o. (primeiro) andar(伯 : [プリメイルアンダール]、欧 : [プリメイランダイレ] =2階)、その次は「2o. (segundo) andar(伯 : [スィグンドゥアンダール]、欧 : [スィグンダンダイレ]=3階)」と、一つずつ数字がずれていってしまいます。 

そこで、日本で葡語圏諸国の人を誘導・案内する場合は、もう一つの言い方である「piso」という単語を用いて、「piso 1 [両葡語: ピーズ・ウン] =フロア1」、「piso 2 (伯:[ピーズ ドイス]、欧:[ピーズ ドイシ] =フロア2」といった言い方にするのがお薦めです。

 これであれば数字が基数で済む上、少なくとも私の経験では、「andar」を使って階数を示すと、「それってエレベーターで何番を押せばいいの?」とか、「それって、こっち(日本)の?向こう(自国)の?」などと聞き返す人が多いのに対して、「piso」を用いた場合は、(実は現地では「andar」と全く同じ使い方なのに)何故か皆すんなりとエレベーターで指定した番号を押して移動してくれます。

一方、地下階はというと、伯葡語では「subsolo(スビソール)」、欧州葡語では「cave(カーヴ)」といい、エレベーターの表示は、ブラジルでは、「S1」、「S2」といった表示、ポルトガルでは「-1」、「-2」という
表示が多いようです。

また、地下が1階しかないビルの場合、ブラジルでは「SS」と表示されていることもあるので、初めてのブラジルでこれを見て、「何、このコワいの」と思う外国人もいたりします。>笑

 伯葡語の「subsolo」は、「下」を意味する「sub」に「土壌」を意味する「solo」が付いたもので、物理的な土壌の「地下」や「地中」を表す単語 です。

欧州葡語でも「土壌の地下/地中」という意味には「subsolo」を使いますが、「地下室」、「地下階」、「地下街」といった人工構造物の「地下」については、英語やフランス語で洞窟やワイン貯蔵庫などを表す「cave」を 用いるというわけです。 

 一方、アフリカ葡語圏の場合はというと、どこも国外からの援助や海外資本まかせなので、エレベーターがどこ製かによってまちまちです。

こうなると「andar」も「piso」もあったものではありません。

ビルのレセプション等で尋ねると、「あちらのエレベーターで、『5』を押して下さい」といった案内になります。 それが5階なのか6階なのかは降りてのお楽しみとでもいうか、ひたすらエレベーター次第となります。 

下手すると、地下がないビルで、「『-1』に行って頂き、右手の廊下を…」などと案内されることさえあり得ます。 つまり「ビルの構造に合わせたエレベーター」ではなく、「エレベーターの言いなりになっているビル」といった感じです。 >笑

また、アフリカのエレベーターでビックリするのが、ポルトガル時代の古いビルに多く見られる2重扉になっていないものです。

これはつまり、エレベーターが止まる階には扉があるけれども、中の「箱」には扉がないということで、動くとエレベーターシャフトの壁と各階の扉が目の前をサーッと通り過ぎていくのですが、これは流石に慣れないと恐いと感じます。 

更に停電するのも、エレベーターが故障するのも日常茶飯事ですから、エレベーターが突然止ってしまっても、真っ暗になってしまっても、大騒ぎする人はいません。

まあ、「やれやれまたか」という顔をしながら、内扉がある場合はそれを、ない場合は「箱」の壁をバンバンたたきながら、「おーい、とまったぞー」と外の人に知らせようとする人は大抵いますが、日本人のように「大変だ」とか「恐い」といった反応を示す人はいません。無論私も「ああ、またか」という反応です。 

 慣れとは恐ろしいものです…ね。   

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