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陰険なおばさんコーディネーターが突然やさしくなった話(不思議系の話)


大学時代、
私は、ブラジルはサンパウロ市の
とある土木コンサルタント会社で
文書校正のアルバイトをしていましたことがあります。

小さな校正室には社員1名とアルバイトが2名、

隣の部屋には10人前後のタイピストが、
当時最新だった字消し機能付きで
ボールがカチャカチャ動くタイプの
IBMのタイプライターを操作していました。

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会社は公共事業を落札して
上下水道・道路・橋梁建設など、
幅広い事業に従事していましたから、

年中入札プロポーザルや報告書の作成に追われていました。

ある時、作業効率を上げる目的で、

それまではなかった
タイピングルームのコーディネーターなる
ポストが新設され、

木で鼻を括ったような愛想の「あ」の字もない
陰険極まりないおばさんがそのポストに就きました。

そのおばさんは、常に上から目線で、
トゲのある命令口調でタイピスト達に指示を出します。

全体の「長」である校正室長に対しても
淡々と進捗報告をする以上のことはしません。

そして、
機嫌が悪い日ともなると、

作業が少々遅めのタイピストを怒鳴りつけたりするのです。

この人物が登場するまでは、

原稿の待ち時間などには
校正部員も混じって女子トークに花が咲いたりと、
和気あいあいとやっていたものですから、

セクション全体の空気が悪くなってしまいました。

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誰もが嫌だ、嫌だと思いながら過ごして
1か月程経った頃だったでしょうか。

ある日突然、そのおばさんが
皆にニコニコと挨拶するようになり、
タイピストが失敗しても怒らずなだめる

といった態度の別人に「変身」したのです!

セクションの誰もが顔を見合わせて不思議がりました。

おばさんが席を外そうものなら、

「恋でもしたとか?笑笑」

「今までずっど生理だったとか!笑笑」

と、その話で持ちきりです。

*****

こうして平和な日々が2週間ほど続いたある日、

自分のデスクの整理をしていたおばさんが、

「キャーッ!何、これ?!ヤダー、ベトベトよ~!」

と、つまんで取り出したのは、

濡らした砂糖を絡ませた、
1本の白いごく普通のロウソクでした。

「誰~?!こんなもの入れたの!」

と聞いたところで、誰も名乗り出ません。

誰も名乗り出ないし、気持ち悪いし、きまり悪いしで、

仕方なくそれを捨てて
何事もなかったように振る舞うおばさん…。

*****

その後は、それが尾を引いてか
多少可愛げはなくなったものの、

以前のような陰険ババアになることもなく、
更に数週間過ぎたある日、

タイピストと校正係だけが残って残業という、
願ったり叶ったりな状況ができました。

実は、
残業の場合、時間外労働の割増金も出ますし、
会社が宅配ピザなどをとって支給してくれますし、
帰りはドライバーが全員を会社のバンで送ってくれる上、

ビザを食べる休憩時間には
大いに女子トークも出来てしまうので、

オイシくって楽しい「イベント」だったのです。>笑

そして、
その時は、言うまでもなく

例の話に…。

「結局、誰だったの?」

「えへへっ、実は私~」

と、手を挙げたのは、

皆が思っていた
一番おばさんにいじめられていた人ではなく、

いつも冷静で仕事もできる
ママさんタイピストのソニアさん。

「ね、効いたでしょ?」

と、あっさり「白状」。

ロウソクとお砂糖を使って
嫌な相手を甘~く変身させるというのは

ブラジルではかなりメジャーなおまじないです。

ただ、ロウソクを点けて、
〇回アヴェ・マリアを唱え、
燃え尽きるまで放置してぇ~の、

それを〇日間繰り返して…といった
面倒なパターンがほとんど。

家で彼女が何をしていたのかも、
ロウソクをお砂糖でベトベトにする際に、
何か特別な技法を使ったかどうかも
分からず仕舞いでしたが、

ともかく効きました!


あんなにあからさまに
おまじないが効くのを見たのは
あれが最初で最後です。

彼女の掛けたおまじないが「効くおまじない」だったのか、
彼女自身に「おまじないを効かせるパワー」が
備わっていたのかは分かりませんが、

ブラジルの「魔女話」はやっぱり面白い!


というわけで、

本日もお読み頂き、ありがとうございました!


デザイナー ネコ

※ 「普通の素敵なママのふりしても、魔女は魔女」、否、
「デザイナー ネコ」はこたつぶとんさんの作品です。






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