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ポルトガル語と私

日本では、在日ブラジル人コミュニティーの拡大もあり、「ポルトガル語といえばブラジルの言葉」という印象を持っている人も少なくないのではないでしょうか。

ところが、実は、話者人口でこそブラジルが一番であるものの、ブラジルのポルトガル語(伯葡語)が用いられているのはあくまでもブラジルのみで、その他7か国に上る葡語圏の国や地域ではポルトガルのポルトガル語(欧州葡語)が話されています。

また、伯葡語は、欧州葡語話者の耳には乱暴で不仕付けで「べらんめえ」な印象を与え勝ちで、毛嫌いするポルトガル人も少なくありません。

一方の欧州葡語はというと、ブラジル人の耳には古くさく聞き取り辛い上、滑稽に聞こえてしまう表現が多く、「あんなダサくてヘンテコな言葉は恥ずかしくて真似する気にもならない」という意見の人も多く見受けられます。

このように、両者には断じて相容れない点が多く、互いに似ても似つかないような側面もあるのですが、そんな事を知る日本人は稀かと思います。

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私は日本で生まれ、小2でブラジルに移住し、サンパウロ大学を卒業した後サンパウロの日本語学校で4年程教師を務め、30歳で帰国しました。

日本に帰国してからは、フリーランサーとしてポルトガル語のラジオキャスター、ポルトガル語教師などを経て、かれこれ四半世紀ほど前からは、主に国際協力に関連するお仕事をさせて頂いてきました。

そして、この国際協力のお仕事絡みでアフリカの葡語圏各国を訪れるようになったのですが、当初は上で述べたような「偏見を持つブラジル人」の魂を背負って赴いたものですから、大手を振って伯葡語でまくし立て、違和感のある単語や表現を聞けば、所詮教育の行き届かないアフリカのことだからと軽くあしらい、今になって思えば、無意識にも相当横柄な態度もとっていたと思われ、猛省しきりです。

そんな私も、アフリカ葡語圏を度々訪れるにつれ、徐々に自らの見当違いに気付いていきました。又、耳が慣れてくるにつれ、重要な協議の場などでは周りが TPO に即した丁寧な言葉遣いで話している中、自分一人がべらんめえな言葉遣いをしているように感じるようになり、いくらなんでも、これでは恥ずかしいでしょうと、徐々に欧州葡語を真似るよう心掛けるようになり、今や「日本で欧州葡語を話す人に初めて会った」などと言われることもあるようになりましたが、その一方で、ブラジル日系人には「よくもあんな変な言葉を真似できる」と冷ややかな目を向けられることも時折あります。

そんなこんなで、7人もの孫を持つ年齢になり、コロナ禍のせいでアフリカ通いには終止符を打つことを強いられた今、ブラジル葡語と欧州葡語が如何に違うかについてを含め、どなたにも楽しんで頂ける今までの経験や雑学的な内容の他、伯欧いずれかのポルトガル語なら話せるという方々にも役立つ知識も記事にしていきたいと考えております。

よろしくお願い申し上げます。


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