狭いキッチン改善計画

我が家は、バス停の目の前にある。いや、バス停が我が家の目の前にあると言った方がいいだろうか。ともかく、玄関を出て10秒あればバス停に着く。
また、徒歩1分の場所にスーパーがある。その他にもコンビニ、ドラッグストア、公園、ファミレスなど、生活に必要なものなら全て徒歩圏内で揃ってしまう。
それだけじゃない。鉄筋コンクリート造であり耐震性や防音性にも不安がない(3匹の子ブタたちなら泣いて喜ぶはずだ)。駅(ちゃんと快速も停まる)からは徒歩10分だし、都市ガスで経済性もいい。
住人の質だって(僕を除けば)悪くない。

ここまで読めばなんの問題もなさそうなのだが、この素晴らしい部屋にもひとつ欠点がある。キッチンが狭いのだ。
(厳密に言うと、僕にとっては狭い。シルバニア村の住人であれば快適に使えると思う。)

実のところ、この狭いキッチンが、僕の生活の質を大きく下げている。

僕は独身男性としては珍しく、毎日自炊生活をしている(ある調査によると、一人暮らしの男性で毎日自炊をする人の割合は3割以下だという)。
しかし、一口だけのコンロと、まな板すら置けない作業場(シルバニア村のまな板なら置けると思うが)のせいで、時間も労力も無駄にしているのだ。
週末に一週間分の作り置きをするのだが、それだけで貴重な休みが終わってしまうほどである。

このままでは、そのうち料理に対するモチベーションが落ちていき、外食にばかり頼るようになることで栄養失調、肥満、借金、解雇、宝くじにはずれる等々、ろくでもない人生になってしまうだろう。

この状況を改善すべく、賃貸サイトで部屋探しを始めた。しかし、早速問題に直面した。
まともなキッチン(二口以上のガスコンロと、人間用のまな板をおける広さの作業台)のついた物件を予算内で選ぼうとすると、木造アパートか、鹿の骨を焼いて吉凶を占っていた時代の物件しか出てこないのである。

この問題を解決する手段は3つある。
①予算を上げる
②木造アパートを受け入れる
③同棲する

②の選択肢はナシだ。読者の中に木造の物件に住んでいる人がいたら申し訳ないが、木造物件の防音性には耐えられそうもない(意外かもしれないが、僕は超繊細なのだ)。
それになにより、木造ではオオカミの襲来に耐えられない(3匹の子ブタを読んでほしい)。

①の選択肢についてだが、予算を上げるためには収入を増やす必要がある。一番手っ取り早く収入を上げる方法は転職だ。
たしかに、収入の低さを改善したいとは思っているが、前述の通り、週末は料理の作り置きで過ぎてしまうのでスキルを磨く時間や転職活動をする時間を確保するのが難しい(言い訳のスキルだけは勝手に磨かれていくのが不思議だ)。

そうなると残るのは③の選択肢だが、まさか「広いキッチンが欲しいから」という理由で同棲を持ちかけるわけにもいかないし、むしろそんな理由で同棲を受け入れてくれるような人とは一緒に住みたくない。そもそも自分にはパートナーがいない(こんなことを書いてる人間にパートナーがいる方がおかしい)。

困った。このままでは栄養失調(中略)…宝くじにはずれる等々の未来が確定されてしまう。

万事休すか。と思ったその時、ひとつのアイデアが降りてきた。
これだ。

そう、シャープの「ヘルシオ ホットクック」である。
ご存知ない読者のために簡単に説明すると、材料を入れるだけで自動で調理してくれるスグレモノの電気鍋だ。
これひとつで100以上のレシピを作ることができるという。
価格は少々張るが、貴重な週末の時間を節約できるのなら、元は取れそうな気がする。

まだ手に入れてないけれども、手に入れたあとの楽しい生活を想像してしまう。
浮いた時間で何をしようか。

もしかしたら、料理教室に通う時間ができるかもしれない。
きっと、狭いキッチンでも上手に料理を作れるようになるだろう。

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