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もう一人の自分との対話〜手帳の佇まい(6)

「行く年や 掌で撫でる古手帳」弥七 

俳句の「古日記」「日記買う」は、
年の瀬に一年を振り返る冬の季語です。

これになぞらえて「古手帳」。
年末に限りませんが、手帳を開き、
自分を見つめる時間のなかで、
もう一人の自分と向き合う、いや、
話し合えます。

1.自分との対話

人はなぜ日記を綴るのか。色々な理由はあれど、僕は日記の効能として、
書き出す=吐き出す」⇒「心の掃除
があると思います。

思考や気持ちを整理すること。
心のざらつきや靄、煩悩や憂鬱を
書き出し、吐き出すことで、
自分の中を掃除出来ます。
心を浄化し、はつらつと次に進む。
そのために必要となるのが
自分との対話です。

2.もうひとりの自分「マイセルフ」

その紙面は、自分の想いの全てを
晒け出せる場所。
なんの遠慮も入りません。
全て出し切ることが大切です。

そしてもう一人の自分を登場させる。
それはいわば、天井から客観的に、
その晒した内容を見つめられる
架空の存在、名付けて「マイセルフ」。

例えば、何か悔しいこと、
憂鬱な想いを書き出し、
自分だけの紙面に吐露します。

すると「マイセルフ」は返してくれます。

「次はきっとうまくいく。
君はこうしてその歳まで
何とか生きてこれたではないか。
どうにか解決してここまで来れたのだ。

今後起きうることも乗り越えられる。
その時々の工夫や叡智が生まれる。
これまでのように。

あっという間に時は過ぎゆく。
だから、自分を信じなさい。」

また、イジイジしていると
「マイセルフ」は問いかけてきます。

お前、このままでは、
 これまでのお前と同じだよ

「お前、本当は自分が間違ってると
 わかってるんだろ?」

「今ならまだ待ち合うんじゃないのか」

ここはひとつ、謝ってしまったほうが
 いいんじゃねぇ?

そんな声、聴こえてくるわけない、
そんなことで単純に解決できるか、
という疑問の向きもおありでしょう。

でも、この「マイセルフ」の言葉を想起し
書き出すことで救われた人は、
僕の知る限り確実に2人います。

3.対話のコツ

「マイセルフ」を想起し、
その言葉を書き出す際に
大変重要なことがあります。

筋立て、理屈の問答にしないこと。
「こういう理由でこうなのだ」
→「だけど別の理由もある」
→「その理由も〜〜で正当化できる」→「また別の見方もあるな」
といった具合にどうどうめぐり、
きりがなくなります。

理詰めで気持ちを整理することを否定するわけではありません。でもそれをやり始めると、袋小路に入り込み、かなりのストレスになり、いつの間にか、理屈を捻じ曲げて自分勝手な考えでまとめ上げる可能性があります。

勿論、考え方の整理、方針や価値観を定める際には論理的思考法は必須です。僕がここで取り上げているのは感情の整理法です。

要諦は自分の心を無(空)にすること
いわば禅の考え方です。
何度も深呼吸して、心を落ち着かせる。
3秒鼻で吸って、7秒口から吐く。
そして、最後に感謝
「何とか生きてます。
ありがとうございます」と。

4.手帳の有効性

日記に限らず、手帳でも、十分にその役割を果たせます。「ほぼ日手帳」など、1日1ページの手帳も存在しており、システム手帳でもかつてはデイリーリフォルが市販されていました。一方、日頃の手帳遣い、綴じ手帳などでも十分にその役割が果たせます。

その要点は
ウィークリースケジュール欄の余白」や
マイセルフ専用ページの設定」。

前者は綴じ手帳の術としてポピュラー、
後者はシステム手帳などで有効です。

手帳だからこそ、
夜でなくてもいつでもどこでも書けます。
オフィスでも電車の中でも、
居間でも寝室でも。

これを重ねていくと
手帳に深みと厚みが帯びてきます。
いわば自分の愚痴や言い訳を聞いてくれる
貴重な存在。それが手帳。
その付き合いに刻々と深みが増します

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5.補記

僕は日記帳そのものを否定しません。
ほぼ日手帳も実は大好きで
多くの人に薦めてきました。

要は、時々の感情を乗せた手書きの魅力

それは自分が生きてきた軌跡です。

日々を綴るスタイルは百人百様、
ひとつの経験談です。

6.最後に

「マイセルフ」の言葉を想起し
書き出すことで救われた2人。
それは「自省録」の作者
マルクス・アウレーリウス・アントニウスと、
僕自身です。

「マイセルフ」との時を重ねる程に
頻度多く登場し、心の落としどころを
教示してくれます

そういう意味で手帳も
自分の全てを受け入れてくれる存在

年末の大掃除を終えて、
除夜の鐘が響く頃、
我が手帳にそっと掌を乗せ、
呟きます。「ありがとうございます」

最後までお読みくださり、深謝します。

「行く年や 掌で撫でる古手帳」弥七



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