スローニュース【公式】調査報道やノンフィクションを支援します

日々の出来事を追いかけるのではなく、時間をかけた調査報道やノンフィクションを通して複雑な世界をゆっくりと咀嚼して理解する、それがSlowNewsという考え方です。現在、新たなサービス展開に向けて開発を進めています。

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    がん新薬誕生 第2回 薬をつくることを諦めないでください

    取材・執筆:下山進  合成化学者の仕事は、テーマが決まると、まず論文を読むことから始まる。血管新生阻害剤の場合は、理論を提唱したフォークマンの1971年の論文から始まり、健常細胞に血管をつくらせるファクターXのうちのひとつを最初に特定したナポレオーネ・フェラーラとウイリアム・ヘンゼルの論文。さらに、この理論にもとづいて創薬にとりくむ他社が、特許を取得した化合物についての書類一式を、知的財産部からとりよせる。  一年から一年半、エーザイの筑波研究所にある図書室に通って、日が

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      • がん新薬誕生 第1回 万に一つの可能性にかける

        取材・執筆:下山進  化学式のなかに、美しさがあるのだ。  これまでに存在していなかった分子式の物質を化合する。それが合成化学者の仕事だ。  1990年に千葉大学大学院薬学研究科からエーザイに入社した鶴岡明彦(つるおか・あきひこ)は、現在グローバルで年間1923億円、エーザイの全売上の4分の1を占めるがんの薬「レンビマ」の化学式を見るたびに美しいと思う。  ヒットする薬の化学式は抗アルツハイマー病薬のアリセプトにしても、レンビマにしても、シンプルで美しい。  鶴岡の

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        • 原子炉・加速器で癌を治す 最終回 三人の旅人

          取材・執筆:下山進  高槻は、京都と大阪の中間に位置する。大阪医科薬科大学(2021年4月大阪医科大学から名称変更)は、阪急高槻駅のすぐ前にある。JRの高槻駅からも10分ほどだ。このキャンパスの一角に関西BNCT共同医療センターはある。2021年9月14日、オープンスペースの会議室で、工学部の学生に対してBNCTを説明する会がもよおされていた。 「この患者のかたは料理人で、嗅覚が失われるからと、手術を拒否。BNCTの適応をうけた」  BNCTを求めてくる人は、治療の効果

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          • 原子炉・加速器で癌を治す 第5回 承認

            取材・執筆:下山進  福島にある南東北BNCT研究センターには全国から、頭頸部癌の患者が集められた。切除不能の再発頭頸部癌か、切除不能の進行性の頭頸部癌の患者のみがこの治験に参加できる。  21人の患者が集められ、ステラファーマのホウ素剤と南東北BNCT研究センターにある住友重機の加速器でBNCTを受けるフェーズ2の治験だ。  これは比較対象群のないいわゆる「シングルアーム」の治験だ。だから「切除不能の再発頭頸部癌か、切除不能の進行性の頭頸部癌の患者」という厳しい条件が

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            • 原子炉・加速器で癌を治す 第4回 治験

              取材・執筆:下山進  アルゼンチンでBNCTを国家的プロジェクトとして進めようとしていたアマンダ・“ マンディ”・シュイントは、2000年代の国際学会での日米の研究者の対決を今でも思い出す。  2000年代を通じてアメリカの研究者は日本のやりかたに常に批判的だった。  彼らの批判のポイントのひとつは、日本の臨床研究は、背景がそろっていないので、評価のしようがないということだった。  ある日本人の研究者が学会で発表した際に、アメリカの研究者はこう批判した。 「その臨床

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              • 原子炉・加速器で癌を治す 第3回 加速器を開発せよ

                取材・執筆:下山進  2002年4月に京大原子炉実験所の教授として迎え入れられた丸橋晃は、医学物理が専門だった。筑波大学の助教授から着任した時の希望は、陽子線治療施設の建設だった。しかし、小野公二に、2001年12月に照射をうけた67歳の女性患者の写真を見せられる。 「こりゃすごいわ。これほおっておいたらいかんのじゃないの」  以来、丸橋もBNCTにのめりこむことになる。  頭頸部癌のこの女性の成功は大きく、それまで年間5例程度しか、BNCTをつかった臨床研究は行われ

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                • 原子炉・加速器で癌を治す 第2回 癌が消えた!

                  取材・執筆:下山進  京大原子炉実験所は中に入ると町工場のようだ。むきだしで様々な機械が殺風景にならんでいる。  大阪の梅田からJRと徒歩で一時間半、大阪府熊取にある京大原子炉実験所の準備委員会ができたのは、1956年。すでに始まった冷戦のなかで、原子力の平和利用がしきりと唱えられていた時期でもあった。初代の準備委員長は、陽子や中性子を互いに結合させる媒介となる中間子の存在を1935年に予言し、ノーベル賞を受賞(1949年)した湯川秀樹。5000キロワットの軽水炉が稼働し

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                  • 原子炉・加速器で癌を治す 第1回 絶望的な患者

                    取材・執筆:下山進  その67歳の女性の患者は、万策がつきていた。耳の下が腫れたように膨れ上がり、巨大なコブ状になって、そのコブの中心部からは、粘液がぬぐってもぬぐってもわき出てきた。ガーゼでおさえているが一日に何枚も替えなくてはならない。この粘液をとろうと夫が、毎日懸命にぬぐっていたが、すぐにムチンといわれる粘性の物質を癌細胞が分泌する。  1998年7月16日に大阪大学歯学部附属病院を初診の際の診断は、耳下腺癌だった。すぐに標準治療の第一選択である外科手術を行った。

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                    • 不思議な裁判官人事 最終回 透けて見える“冷遇”

                      取材・執筆:木野龍逸・フロントラインプレス  国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で不利な扱いを受けるのではないか――。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人の取材チームをつくって膨大な数の判決を読み込み、複雑に入り組んだ人事異動との関係を調べてきた。その結果、退官直前に“去り際の一発”と言えるような判決を出す裁判官が実際に存在することや、明らかな左遷と言えそうなケースがあることもわかってきた。取材に応じた元裁判官の中には「人事の冷遇はある

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                      • 不思議な裁判官人事 第4回「出る杭」として処分を受けた人

                        取材・執筆:木野龍逸・フロントラインプレス  国家賠償請求や公共事業の差し止め請求などで国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で不利な扱いを受けるのではないか――。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人の取材チームをつくって、膨大な数の判決を読み込み、複雑に入り組んだ人事異動との関係を調べてきた。見えてきたのは、退官直前に“去り際の一発”と言えるような判決を出す裁判官が、実際に存在することだった。一方で、判決と人事の相関関係は、そう簡単には証

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                        • 不思議な裁判官人事 第3回 原発を止めたらどうなるか?

                          取材・執筆:木野龍逸・フロントラインプレス  国家賠償請求や事業の差し止め請求などで国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で左遷されるのではないか。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人で取材チームをつくり、膨大な数の判決と格闘してきた。数百本、文字数にして何百万字もの判決文を読み込むなどし、「その後の人事異動」を評価する対象として141人の裁判官をピックアップした。判決と人事異動の因果関係を検証する連載の3回目は、原発の差し止め請求の裁判を

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                          • 不思議な裁判官人事 第2回「国敗訴」退官間際の一撃

                            取材・執筆:木野龍逸、フロントラインプレス 「国家賠償請求や公共事業の差し止め請求などで国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で左遷されるのではないか」。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人で取材チームをつくり、膨大な数の判決と格闘してきた。  判例データベースでチェックの俎上に乗った判決は数千本。実際に判決文を読み込んだのは数百本。文字数に換算すればおそらく何百万字にもなる。そうした作業を経て、「その後の人事異動」を評価する対象として1

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                            • 不思議な裁判官人事 第1回 国を負かした裁判官は左遷される 

                              取材・執筆:木野龍逸、フロントラインプレス  都市伝説がある。  原子力発電所に関わる判決で運転の差し止めを認めたり、原発事故での国の責任を認めたりするような裁判官は左遷される、あるいは定年退官間近にならないとそんな判決は書けない、というものだ。端的に言えば、「原発の裁判で原告を勝たせると左遷される」である。  こうした「噂」は、原発訴訟に携わっている原告や弁護士、取材記者たちの間でときどき話題になる。けれども、なんとなくそう感じるというだけで、これまで事実関係を確かめ

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                              • 「ミャンマーで拘束された久保田徹さんを解放してください」仲間のジャーナリストらが緊急会見

                                 軍が実権を握っているミャンマーのヤンゴンで先月30日、抗議デモを撮影していたドキュメンタリー映像作家の久保田徹さんが拘束されました。久保田さんの一刻も早い解放を求めて、きょう(8月3日)親交のあったジャーナリストや友人たちが、日本記者クラブで緊急会見を開きました。 新田義貴さん「決して無謀な若者ではない。どんな思いで取材していたかを伝えたい」 司会を務めたのは、ウクライナをはじめ世界各地で取材するジャーナリストで映画監督の新田義貴さんです。久保田さんは大学の後輩にあたり、

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                                • スクープ「ウイグル不妊強制か」の内幕 中国の監視下でいかにして報じたのか

                                   中国・北京。  入国後、中国側が用意したホテルでの隔離期間を終え、私は官庁街にある西日本新聞社中国総局の小さなオフィスを根城にして取材活動を始めていた。日本で多少は勉強してきたとはいえ、まだ中国語は十分に聞き取れない。現地スタッフの手を借りて、数日に1本のペースで「コロナ禍の中国」などをテーマにした記事を書き、日本に送っていた。  私にはどうしても取材したいテーマがあった。新疆ウイグル自治区のことだ。「人権弾圧が行われている」と欧米のメディアが指摘しているが、何としても

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                                  • 『さよなら、野口健』元マネージャーが全てを明かした前代未聞の人物ルポ

                                    愛憎の果てにたどり着いた次世代ノンフィクションの作法「野口健との縁が切れますように」  最強の「縁切り神社」と呼び声高い京都にある安井金毘羅宮への参拝から始まる人物ノンフィクション『さよなら、野口健』。アルピニストの野口健さんの元マネージャー小林元喜さんが綴った愛憎劇を読み終えた時、自分の近くにいる恫喝上司も、ライバルのマウンティング野郎もなぜか許せる気持ちになっている…。長らく小説家を目指していた著者の小林さんが人生をかけて取り組んだノンフィクションは、いかにして完成した

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