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不思議な裁判官人事

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国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で冷遇されるのかを検証した、唯一無二の調査報道。PEPジャーナリズム大賞特別賞を受賞。木野龍逸・フロントラインプレス著。
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記事一覧

不思議な裁判官人事 第1回 国を負かした裁判官は左遷される 

取材・執筆:木野龍逸、フロントラインプレス  都市伝説がある。  原子力発電所に関わる判決で運転の差し止めを認めたり、原発事故での国の責任を認めたりするような裁判官は左遷される、あるいは定年退官間近にならないとそんな判決は書けない、というものだ。端的に言えば、「原発の裁判で原告を勝たせると左遷される」である。  こうした「噂」は、原発訴訟に携わっている原告や弁護士、取材記者たちの間でときどき話題になる。けれども、なんとなくそう感じるというだけで、これまで事実関係を確かめ

不思議な裁判官人事 第2回「国敗訴」退官間際の一撃

取材・執筆:木野龍逸、フロントラインプレス 「国家賠償請求や公共事業の差し止め請求などで国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で左遷されるのではないか」。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人で取材チームをつくり、膨大な数の判決と格闘してきた。  判例データベースでチェックの俎上に乗った判決は数千本。実際に判決文を読み込んだのは数百本。文字数に換算すればおそらく何百万字にもなる。そうした作業を経て、「その後の人事異動」を評価する対象として1

不思議な裁判官人事 第3回 原発を止めたらどうなるか?

取材・執筆:木野龍逸・フロントラインプレス  国家賠償請求や事業の差し止め請求などで国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で左遷されるのではないか。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人で取材チームをつくり、膨大な数の判決と格闘してきた。数百本、文字数にして何百万字もの判決文を読み込むなどし、「その後の人事異動」を評価する対象として141人の裁判官をピックアップした。判決と人事異動の因果関係を検証する連載の3回目は、原発の差し止め請求の裁判を

不思議な裁判官人事 第4回「出る杭」として処分を受けた人

取材・執筆:木野龍逸・フロントラインプレス  国家賠償請求や公共事業の差し止め請求などで国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で不利な扱いを受けるのではないか――。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人の取材チームをつくって、膨大な数の判決を読み込み、複雑に入り組んだ人事異動との関係を調べてきた。見えてきたのは、退官直前に“去り際の一発”と言えるような判決を出す裁判官が、実際に存在することだった。一方で、判決と人事の相関関係は、そう簡単には証

不思議な裁判官人事 最終回 透けて見える“冷遇”

取材・執筆:木野龍逸・フロントラインプレス  国に不利な判決を出した裁判官は、その後の人事で不利な扱いを受けるのではないか――。そんな“都市伝説”を検証するため、フロントラインプレスは記者2人の取材チームをつくって膨大な数の判決を読み込み、複雑に入り組んだ人事異動との関係を調べてきた。その結果、退官直前に“去り際の一発”と言えるような判決を出す裁判官が実際に存在することや、明らかな左遷と言えそうなケースがあることもわかってきた。取材に応じた元裁判官の中には「人事の冷遇はある