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【かたつむりアカデミー2022年9月レポート】 スローフード協会の新代表:エディと語ろう! 〜アフリカ10,000の菜園プロジェクト〜

9月の かたつむりアカデミーを開催しました

9月の かたつむりアカデミー🐌は、ゲストスピーカーにスローフード協会の新会長のエディ・ムキビと徳島大学の内藤先生をむかえて、アフリカ10,000の菜園プロジェクトをテーマに9月3日(土)に 開催しました。

ゲストスピーカープロフィール

Edie Mukiibi(エディ・ムキビ)
スローフード協会 会長(2022年7月〜)

ウガンダ出身・在住。マケレレ大学卒、イタリア食科学大学修士課程修了。農学者、食農教育者、社会起業家、スローフードウガンダ エグゼクティブ・ディレクター。アフリカ10,000の菜園プロジェクトの発展や、ウガンダをはじめアフリカにおけるスローフード・ネットワーク全体の成長において、極めて重要な役割を担う。2012年からはスローフードの国際理事を務め、2014年にはスローフード副会長に就任、2022年に現職。


内藤 直樹
徳島大学准教授

専門は文化人類学。東アフリカの牧畜民や難民の生業や食文化に関するフィールド研究をおこなってきた。2021年に生産者と共に祖谷の雑穀6種を「味の箱船」に登録。また世界農業遺産「にし阿波の傾斜地農耕システム(徳島)」の登録・保全に関わってきた。


参加者のアフリカに対するイメージ

先ずは冒頭にSlidoというツールを利用してチェックインを行いました。今回は「アフリカと聞いて何を思い浮かべますか?」と参加者皆さんのアフリカに対するイメージを書いていただきました。
結果は以下の通りとなりました。

Slidoはイベントやセミナーにおける究極のQ&Aと投票を実現するプラットフォームです。 Q&Aやライブ投票を通じて参加者からリアルタイムに意見を収集できます。
https://www.slido.com/jp

Slido公式サイトより引用

皆さんの回答に多かったのは

  • 紛争や貧困、飢餓、支給不足

  • サバンナや砂漠、干ばつ

などとアフリカが大変そうなイメージが多いように思いました。
内藤先生によるとこれらについては、1983〜1984年に起きたらエチオピアでの深刻な飢餓によるチャリティ活動によるもの(We are the world)や、2009年サッカーワールドカップのテーマソングWaving Flagを歌ったソマリア難民のK'Naan(ケイナーン)によるイメージが大変強いのではないかと解説がありました。

アフリカの現状について

まず前段として、アフリカの現状について内藤先生から説明をいただきました。
現在の東アフリカの産業について、1平方メートルあたり一番お金が稼げる産業はどれになるか?

  1. 観光(ライオンを見に行くなどのサバンナ観光)

  2. 灌漑農業(バラなどをヨーロッパに輸出している)

  3. 牧畜(昔からある伝統的牧畜)

皆さんはどれだと思いますか?
答えは「牧畜」だそうです。

特に内藤先生は、「アフリカを単なる援助の対象だけではない」ことを知ってほしいと話されていました。
アフリカを病理的な印象で観るのではなく、「アフリカの様々な人々は、どのように食料を生産・分配・消費をしているのか?」という視点で見つめていくことが重要で、
アフリカの人たちは決して無力でもなく頑固でもない。むしろ、豊かなのだと話してくださいました。

スローフード協会 新代表 エディ の登場

冒頭はスローフード代表就任にあたりエディの想いを話してもらいました。

なぜなら スローフードは地理的・テーマ的 両面に支えられた国際的な草の根ムーブメントだからです。
そして私たちの強みは 地域に根ざしたネットワークを活用した、プロジェクト間・メンバー間の連携にあります。

エディは、この度 新しくスローフード協会の会長に就任しました。
2022年7月に開催されたスローフード世界大会で選出された9名の国際理事会のうちの一人である、創立から30年以上会長を務めてきたカルロ・ペトリーニの後任となる、新会長です。
国際理事会には、日本スローフード協会代表の渡邉めぐみも名を連ねており、地域、世代、専門性、性別など、スローフードの本来の姿である多様で、包摂的で、国際的な側面を表すメンバー構成になっています。

この変化は、スローフードネットワークにとって、また対外的にも、「食の世界を変えるためには、自身を省み、常に変えていかなければならない」という明確なメッセージを打ち出しています。

幼少期からスローフードに出会うまでの話

エディは小さな農業を営む家庭に生まれ、小さい頃から家族と畑で作業をする日々を送っていました。多様な食べ物を少しずつ栽培しており、食べ物も自給するような生活でした。農作業が大好きで、畑を手伝うのも大好きな子どもでした。

しかし、通っている学校では、農作業は罰則として扱われていました。遅刻したり、してはいけないことをしたりした児童に対して、罰として農作業が課されていたのです。

このことがきっかけで、エディは農業に対するイメージを変える必要を感じたのです。

大学では農学を専攻し、学部のリーダーも務めました。セオリーとして教わるのは、集約型・大規模型の農業や、農薬・化学肥料を使った農業でした。
ある時、ハイブリッドのトウモロコシの種を普及するプロジェクトへの誘いがあり、元々周辺農家との関わりが深かったエディは、種を普及して周る役割を任されます。干ばつに強い種で、収量が出やすいと農家を説得して作付けを増やしていきました。このトウモロコシの種自体は無料で配布していましたが、それに付随して販売される農薬や化学肥料は、導入する農家自身がローンを組んで購入していました。

しかし、この年、栽培期間中に一度も雨が降らないという大干ばつに見舞われました。このトウモロコシの種は干ばつに耐性があると言うお触れだったにも関わらず、全滅してしまったのでした。

エディは、大部分の研究機関等がセオリーとして唱えている、産業的単一栽培・遺伝子組み換え種などの農業モデルには限界があるのだと気づき、調べ、伝統的な農業モデルこそ、持続可能なモデルだと考えるようになりました。

2008年 エディとスローフードとの出会い

エディは、これまでのアフリカにおける産業的単一栽培に対抗するために、孤独にでコミュニティの支援を続けきていました。そんな中、有機農業や生態系農業について調べている中スローフードの「生物多様性基金」との出会いがあったのです。
エディはすぐにアフリカの農業の現状を伝え、それに対して伝統農業を再構築する必要性を、スローフードへ共有しました。
これをきっかけに2008年のテッラ・マードレに参加をすることになったのです。当時のエディはまだスローフードの全容を掴めていないまま、参加したのですが、会場に到着した時に、様々な不安が吹き飛んだ様子を以下のように話してました。
「本気でフードシステムに変化をもたらそうとしている多くの人々からなる「家族」を見つけたと思った
どうすれば、壊滅的なこの食の状況を回復できるかを真剣に考える人々の集まりがスローフードであることに気づいたエディは
「この人たちが家族だと、自分の居場所はここである」
と気づきスローフードネットワークの一部として活動する決意を固めました。
会場には同じような境遇の人々の経験談などが聞けるフォーラムやワークショップ、対話の場があり、エディの視野を大きく広げました。
エディはここでの経験が「自分の活動を続ける原動力となった」また「自身の活動の重要性を再認識できた」と語っています。
2008年のテッラマードレに参加することで、スローフードの様々な魅力に触れたエディは、

  • 自分が孤独でないことを知れたこと

  • 地球上の壊れたフードシステムを認識し再生に向けて解決策を模索し、行動を起こしている人々が世界中にいると知れたこと

このことがエディ自身の人生において大きな出来事となったと話しています。

現在の10000の菜園プロジェクトの成果

エディの話を聞いていると、菜園プロジェクトの成果が以下の様に見えてきました。

  • アフリカの女性たちのエンパワメントを醸成できる。

  • アフリカを牽引できる自尊心を育むことができる

  • 子どもたちに対して、どこから食べ物がきて、どの様に作られているのかを学ぶことができる食育の場となれる。

  • 食農の分野において次世代のリーダーになるための学びが得られる

  • 菜園が地元自治体なども含めた意思決定者たちのお互いの対話の場になっている

  • 菜園が地域も含めた対話の場となることで、地域との連携の取れたコミュニティが作られる

  • ウガンダで400近くに上るスローフード菜園が作ることができている

  • 大規模農業を推進し、伝統的で小規模農業を減らすための政策を進めるウガンダで小規模農業者の権利のためアグロエコロジーを推進するアドボカシーグループを結成できた

  • ウガンダでアグロエコロジー運動が展開されるようになった

  • アフリカを本当に支えることができる食のシステムを作るという目標に向かってる強固な草の根の基礎を作れた

  • パンデミックの中深刻な食糧危機による労働者不足に陥ったが、スローフードガーデンはいつも通りに作物の収穫が出来ていた

  • ロックダウン中、市場の閉鎖で困っている支部のメンバーにスローフードガーデンの収穫物を分けることができた

こうした、小さな草の根の活動が国際的につながり、互いをエンパワメントし、大きなうねりを作っていくことこそがスローフードの本質です。


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