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主催者の自己紹介記事の準備 #2

自己紹介記事の続きです。今日も好きな本を紹介していきます。

#1

旧約聖書「ヨブ記」

読書会でも扱った作品。そこまで長くない話なのに読んでも読んでも読み切れない。
難解なため解説書等の理解に頼りたくなるが、読み進めていくうちに、ことごとくどの解説書の内容も否定される。だから、「こうかな?」と独自の読み進めていくが、それも否定される。そのうち結局は何も理解していない読者だけが残る。

その『ヨブ記』を理解しようとするが、結局理解できない読者は、じつはヨブと同じような立場にある。ヨブは神から否定され、皮膚病にされるが、ひたすら神に問い続ける。しかし、神はなかなか応えない。神の意図を理解できない。『ヨブ記』を読むことはこの読書体験をヨブに重ねることにある。

しかし、これは『ヨブ記』だけの話だろうか。実はどんな理解したつもりになっている本も実は理解できていないのではないか。それは、本だけではない。人だってモノだって世界だって理解できていないのでは。
しかし、それらを理解したいと思っている読者たちはいるのだ。

理解したい、でも理解できない。この失敗し続けることにマゾヒズム的な快楽を得ることが「読むこと」ではないだろうか。

理解できないことは絶望である。ぼくは『ヨブ記』を読むことで一つ学んだことがある。
「何度も絶望から出発しよう!」

トーマス・マン『魔の山』

美しいものとおぞましいものは表裏一体であり、どちらかを欠かすとどちらかが成り立たない.....
『魔の山』では美しいもの(魅力的なもの)とおぞましいもの(恐ろしいもの)は、生と死の対比でも語られる、また登場人物では、進歩主義のセテムブリーニと静寂主義のナフタの2人それを表している。

『魔の山』は主人公ハンス・カストロプがスイス・アルプスの高地にあるダボスの国際サナトリウム「ベルク・ホーフ」で何年も療養生活を送るという小説である。
ベルク・ホーフには死の空気が蔓延している。そこは少し怖くもあるが魅力的な空間だ。

『魔の山』を読んでいた時、仕事を休職中であった。仕事をせずに毎日田舎の図書館で静かにゆっくり読んでいたが、読んでいる最中まさに魔の山にいるような気分になった。
主人公のハンス・カストロプと同じでぼくもこの魔の山から降りれなくなってしまうのでは、少し恐怖しながら、それでもいいかーという気分だった。
でも、結局下界、現実に降りて今は仕事をしている。なんだか少しもったいない気持ちでいる。ハンス・カストロプのようにあーだこーだ理由をつけて何年も仕事せずにうだうだやってた方がよかったのかも。

もしかしたら、読んでいたとき死の世界に片足を突っ込んでいたのかもしれない。
魔の山から帰ってこれなくてもよい方は読んでどうぞ。

蓮實重彦『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』

人はいつの時代も自由をもとめて外部へ冒険に出たがる。しかし、冒険に行くことは自由になることだろうか?逆に冒険をすることによって見えない権力に縛られてしまうことがある。
例えば昔のヤンキーがこの支配からの卒業と言いながら窓ガラスを割るのは、冒険に出ているつもりが結局、類型的なもの回収されていく典型である。また、サブカル好きや文学好きが「自分は(自由に選んで)これが好きだ」といいながらセンスの良さそうな作品選んでいっているのもそうだ。(まさに今ぼく好きな本をあげていく行為がまさにそれだ)

では、どうすればこの権力から抜け出せるのだろうか?蓮實重彦はあえて冒険しない(反冒険)ことを提案する。反冒険は、冒険に行くよりも刺激的な経験をもたらしてくれる。
反冒険は権力が要求してくる類型的なものを、類型的とわかりつつあえて愚直に実行していく。

蓮實重彦はデリダの『グラマトロジーについて』は「書物に似せた書物」「貨幣のような書物」である、というような言い方をしている。貨幣には内容はまったくないが、価値だけはある。渋沢栄一が書かれてようが、うんこが書かれてようが、みんなが貨幣と認めればそれが貨幣になる。そして貨幣は番号、製造年だけがちがう同じものが大量に出回っている。
『グラマトロジーについて』も他の哲学の書物に則り、みんなが引用している哲学者の書物を引用したりしている。また、問題設定→解決というどこにでもありそうな書物の作りをしている。しかし、過剰に似過ぎているため狂気をおぼえてしまう。

以上のような理由で蓮實重彦は『グラマトロジーについて』には内容がないという。(本当にそうなのか甚だ疑問ではあるが...)
しかし、ある体系を過剰に反復することにより、亀裂を生み出しそこから脱出する。『グラマトロジーについて』のすごさはここにあるのだ。

狂気は外側にあるのではなく、過剰な内側に存在するのである。

続きはまた次回!

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