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[物語のある英語]~第7回~cream of the crop科学の知識は英語学習を支える?

-こんにちは!スロバールです。

言葉は人によって作られた。だからその過程には物語があって味がある。
単語帳では語られない物語を味わって味わい尽くそうというのが本シリーズの目当てです。

第7回目は「Cream of the crop」についてです。直訳するとcream (クリーム)+of the crop (作物の)なので、作物のクリーム・作物から穫れるクリームという意味になってしまいます。

◆目次◆

・Cream of the crop の意味
・Cropの意味
・化学のお話~この表現の由来~
・この表現の使い方
・日本語では?

実を割ってみたらクリームが出てきたとか、果汁の代わりにクリームが出てきたとかそんな話は聞いたことないので、これもまた由来を知らねば分からない表現なんです。

◆Cream of the crop の意味◆

この表現の意味は「最高・極上のもの」「最高品質のもの」という意味です。

これは畑になっている作物の中でクリームを作る作物が一番貴重という意味なのでしょうか?シュークリームの木?ショートケーキの木? お菓子の家と共におとぎ話に出てきそうな話ですが、由来はもっと「化学的」な所にあります。

◆Cropの意味◆

さて、由来の話をする前に、Cropの意味について述べなければなりません。
cropを辞書で引くと「農作物」という意味が一番上に出てきて、


・grow a crop で「作物を育成する」
・plant a cropで「作物を植える」
・Bring in a crop で「作物を収穫する」


という風に使われます。一番下のbring inは bring (持っていく)+in(内側)で、「収穫するカゴの中に入れる」というイメージからbring inが「収穫する」という意味になっています。

そして、Cropが持つ「作物」というイメージから、収穫するもの→産物という風に広がり、cream of the cropでは産物という意味で使われています

つまり、この表現の中のクリームは「何かが作る産物」であると言えます。

ではその何かとは何でしょうか?

◆化学のお話~この表現の由来~◆

ここでいうcreamとは実は牛乳が作るクリームです。正確に言えば、牛乳を加熱した時に表面にできるクリーム状の物体=牛乳膜のことを指します。

昔栄養学を勉強していたので、軽くそれについて説明しますね。

牛乳の8割は水分で、残りの2割はタンパク質や脂質などです。
冷たい牛乳では、タンパク質と脂質同士はまだくっついていません。
ところが加熱された時に、タンパク質の形が変わって脂質を包み込めるようになるんです。
そうすることで、膜が形成されます。
この現象を、発見者の名前を取って「ラムスデン現象」と言います。

ここでcreamの正体は分かったのですが、何故これが「極上の」という意味になるかの謎はまだ解けていませんね。

口の周りにつけて牛乳ひげだ、なんてバカにされがちな牛乳の膜なのですが、栄養満点なのです。

牛乳の中に漂っていたタンパク質と脂質がギュッと集まって膜になったので、栄養価はとても高いのです。

このことから、膜(cream)は牛乳の中でも「最も良い所」という意味になり、結果としてcream of the crop(milk)は「同種の中でも最高の所・モノ」という意味になったのです。

ちなみに牛乳の膜の栄養効果は、
・免疫強化 (免疫グロブリン)

・整腸作用 (乳糖が腸に届くことで)

・血圧上昇を予防 (ミネラルによる塩分の排出)

・疲労回復効果 (ビタミンB1)

などが期待でき、牛乳のcreamは栄養学的にも本当に「極上のもの」なのです。

いかがでしょうか、英語は単なる英語という教科ではなく科学など他の分野とも繋がっているのです。英語が言葉であり、様々な分野で出てくる以上、英語と他分野は切り離せないのです。ですから、読者の皆様もぜひとも英語学習の一環として色々な分野を覗いてみてください。

◆この表現の使い方◆

とても単純です。best thing(最高のもの)との言い換えが大体通用します。

・He is genius. He is the cream of the crop in the classroom.
 (彼は天才だ。彼はクラスの中で極上の頭脳の持ち主だ)

また、車や電気機器などで安物は買わぬっ!最高級品だけ欲しいという人にもピッタリの表現です。

・I’m only interested in the cream of the crop.
 (私は最高級のグレードのものだけに興味がある。)

◆日本語では?◆

日本語にも同類の表現が有るのですが、これは昔の人の価値観をヒシヒシと感じられる表現です。

花は桜木、人は武士

という言葉があるのですが、これは花だったら桜が最上のもので、人だったら武士が最上のものだという意味です。(画像の中のフォントではなぜか桜が打てなかったので別字体の櫻を使用)

でも何をもって最上なのでしょうか?美意識は人によってバラバラのはずです。

これはに当時の歴史背景が関わっており、「美しく散るもの」が最上とされていたようです。

満開の桜の散る見事な様子。武士が戦場で名誉と共に散る様子。

これらが最も良いとされていた時代だったからこそ生まれた言葉なのだと思います。

現在でもこの「無常感・無常の美意識」は日本人のDNAの中に流れているのだと思います。

いかがでしたか、「最上のもの」を表す言葉が牛乳から来た英語と、美意識から来た「日本語」。民族的、歴史的な違いを垣間見る良い機会であったのではと思います。

*一説によれば、cream of the cropはフランスから生まれてそれが英語に取り込まれたようですが、それでも芸術の国フランスが牛乳に着目したのはおもしろい事実だと思います。

いつも記事を読んでいただきありがとうございます。英語学習に苦しんでいる方、つまらなそうに嫌々語学を学んでいる方が周りに居ましたら、シェアしていただければと思います。楽しく、深く、語学に取り組める人が1人でも増えたら幸いです。