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うちの幹部は選挙で決まる Vol.55

前回はオフィス移転について、俺の想いを書かせてもらいました。
内輪の話だから、そんなの興味ないって言われるかと思ったんだけど、
意外に経営者の意思決定とか葛藤とかって、興味があるような話をいただくので、
この流れの中で、うちの会社がやっている幾つかふざけた仕組みを紹介してみるね。
俺の想い悩み失敗試行錯誤も含めて書いていきたいと思います。


選挙制度(バロックワークス)

総会_海外明るい

実は、わが社の幹部10人衆は年一回の社員全員による投票で決められている。
AKBの総選挙みたいなもんだ。
選ばれる幹部には幹部手当が支給され、上位ほど多く、下位ほど少ないという仕組みだ。
この幹部たちは、会社を良くすることだけがミッションで、
社員たちもこの視点で幹部たちを選ぶ。

業種とか入社歴とか社会経験の多さとかは関係なしに、 
推薦人はいるものの、基本はわが社の社員であれば誰でも立候補することが可能だ。


①この制度の由来

なんでこんなふざけた制度ができたのかというと
わが社の事業であるSES(システムエンジニアリングサービス)は
社員がお客様先に常駐させていただくことが多い業態だ。
お客様のセキュリティの問題やハードウェアなどの環境整備問題、
また作業の円滑化などの観点から、この仕事のスタイルになっているわけだ。
毎日、現場に直行直帰だし、下手したら一人現場なんかも有ったりするから
自社社員との交流が薄まるばかりだし、繋がりもなくなっていく。

その為、自社の社員でありながら、
帰属意識をもたらすのが非常に難しい業態だとされている。
常に隣の青い芝(大手のキラキラした職場環境)で仕事して、
所属は所詮、わが社のような中小零細企業ってわけだ。

帰属意識が作れないし、その結果、離職にも繋がっていく問題を常に抱えていた。

そんな業界の中で、なかなか自社を拡大できず、12年ほど前から俺も同じことを悩んだ。
どうやったら社員たちが自社に目が向くんだろうと考えに考えた。

寂しい 写真

んで、たどり着いたのは
自分たちの給与を決める人を自分たちで選ぶとしたら
社員たちは会社に目が向くに違いないということだった。

最初は幹部とかではなくて、 
「部長」を社員たちで選んでもらうということから始まった。 

始めた当初のわが社は、
帰属意識とか愛社精神とかのあまりない、いわゆる温度感の低い組織だったから
「こんなのやる意味あるんですか?」って 冷ややかな目で見られてたし
乗り気じゃない社員とかいっぱいいたことを思い出す。

主体的に関わりたい人がそもそもいない為、
部長候補の立候補もほとんどいなかった

その時、俺は自分で集めた人材たちの会社に対する思いの低さに絶望したし、
俺が作った組織が駄作で、
その上、俺のけん引力の無さを思い知らされた瞬間でもあった。

若い子が多い組織だったから
仕方なく、社会経験の多い人に立候補してもらったが
それでも 3人ほどのポスト分しか人は集まらず、
立候補者は全員当選するという茶番で制度の始まりを飾った。

本来、手を上げない奴には打席に入ってもらいたくはない俺だけど
でも、あまりにも立候補が居ないもんだから、
最初の選挙で決まった部長たちには、
任期2年だと後付けして引き延ばしたと記憶している。


➁制度効果

-「S-STYLE」について-

正直、この制度によって会社に向いてくれる人が一気に広がったかというとそうではない。
ほとんどの当時の社員は、また社長がなんか始めやがった程度に斜めから見てたと思う。
そういう意味では、シラケた感じでは始まったわけだけど、
俺自身意味なかったんじゃないかと不安になっていた

でも、しばらくすると社員たちというよりは、
レベルはともかくとして部長に選ばれた人たちの当事者意識が明らかに変わってき始めた

部長たちは担当している社員への責任感からなのか、
面談をどうするべきなのか?
評価をどうするべきなのか?
管理の仕方、教育の仕方、しまいには会社の方向性まで俺への質問が増えた。 
これらによって、会社にまつわる改善会議も始まった。

自分たちの仕事をちゃんとこなす必要性から意識に変化が現れた
意図はしてないが、いわゆる「役割が人を作る」現象が始まったんだ。

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意図してた社員たちが会社に向くってことができたかどうかわからなかったけど、
少なくとも、部長たちは明らかに会社に向きだしたことに気が付いた。
また、部長を選挙で選ぶという ふざけたネタは
新卒や中途の採用面接でも、求職者から質問を受けることが増えた。

部長を選挙で選ぶってどんな感じなんですか?
どんな人が立候補できるんですか?
どんな人が選ばれるんですか?など・・・

質問が増えるごとに
求職者たちにとって、この選挙制度に期待し、
自分たちの活躍できる幅を見出していることも知った。

初期のこの選挙制度についた名称は
「S-STYLE」社名の"SPEED"の頭文字の"S"を取った単純なものだった。

それから、
活躍の幅を期待して、向上心がある社員が増えたこと、
全社で選挙をするための情報開示が進んだことも功を奏して、
組織の温度感は少しずつではあるけど、上がっていった


-「L-STYLE」について-

そんなこんなで、選挙制度のマイナーチェンジをしながら
あの茶番選挙から5年ほどたった
もう一つステージを上げるために
今度は、部長選挙から会社の幹部を選挙をすることを決めた。

選ばれた部長たちは、自分たちの役割に責任感を感じ
その役割を果たそうとしだしたこと。
求職者が活躍幅を感じて、入社をしてきて、大幅に血が入れ替わったこと。
組織がクリアになっていくことを、この制度の成果ととらえれば 
組織文化の醸成としては十分機能した仕組みだったからだ。

とはいえ、
部長から幹部と選挙のレイヤーを変えたことによって
権限移譲の幅は明らかに増やさないといけなかった
部長レベルの裁量も、なかなか悩んだのに今度は幹部だ。

どこまで任せていいのか?

ポジションが人を作ると言っても、ほっとけば勝手に育つわけじゃない。
権限移譲のライン、茶々を入れるタイミングはどこなのか、ずっとずっと試行錯誤だった。
俺だって経営者として育っているわけじゃない。自信をもって物事を進めるレベルにないわけだ。
俺が権限移譲で悩むこともそうだけど、選ばれた当の本人たちだって
すげープレッシャーだ

やったことのない会社経営の一端をいきなり担うし、しかも、
見える経営にある程度なってきているから、始めてやるのに成果の逃げ場もない。

「役割が人を作る」という意味合いではそうなんだが 
選ばれた当事者たちの精神負荷が強く、乗り越えられない幹部も少なくはないと思った。
だけど、乗り切った人たちの成長は著しいことも同時に分かった。

会議_外国人

進化したこの幹部選挙の名称は、「L-STYLE」"SPEED LINK"の"L"を取った形だ。

せっかく、成長するチャンスなんだ。
限られた一部の人しかそのポジションに成れない、
せっかくの成長機会が勿体ないと思った俺は4年ほど前に
4人ほどの幹部選挙から
幹部10人衆に変更し、立候補の条件の入社年数制限も取っ払った

なぜ幹部を10人にしたのか、この発想は単純だ。
成長するポジションを増やすこともそうだし、 
10人が10人面倒みれれば、100人の会社になると思ったからだ。

稲森和夫さん(京セラの創業者)の提唱している小さい経営(集団)アメーバ経営から
インスパイヤーされたと言えば様になるかもしれないけど、
俺の場合は、人気漫画キングダムの10人長みたいなノリだ。
悪いが、ただのノリだ!!

んで、番手の数字が少ないほうが社員たちからの期待が強いわけだから
強いキャラなら、手当も多くすべきだということにした。
社員の皆がイメージしやすいように
まるで、ワンピースのバロックワークスのようだと、
5年前の経営合宿で俺がいきなり言い出したわけだ。
当時の幹部全員が、皆キョトンとしたのを俺は覚えてる。

ワンピース

社員たちはちゃんと会社の役に立つ10人を選ぶことができるのか?
立候補者は足りるのか?
制度は機能するのか?

幹部の皆は疑心暗鬼のまま、
制度再構築を話し合いながら、2017年に現行の選挙制度になった。

今では毎年幹部選挙は一大イベントだし、幹部10人衆の他に
幹部候補10人衆までいるようになった。
Jリーグのようにリーグ下位の3人は自動的に候補10人の上位3人と入れ替わる。
ほどいい緊張感と組織の新陳代謝と活躍できる可能性を表現し、
気が付いたら、わが社の社員が100名を超えていた

今回はもう書き疲れたので、
次回に、この選挙制度を作ってから、うまくいかなくて失敗したことを共有したいと思う。


PS: 2大国民的アニメからこの制度がインスパイヤーされたと言ってもいい。
前までの制度名称は、それなりぽっかった。
ほんとは、現行の仕組みの名称は、幹部たちにかっこいいのを考えてほしかったんだけど
なぜか、合宿で伝えたイメージのまま「バロックワークス」となっている・・・💦