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あんたバカぁ?

ここ1〜2年(2019年-2020年)は、テレビやネットSNSに限らず、職場や友人を含めた色々な人とのコミュニケーションの場で、「この人なんでこんなこと言うんだろう?」とか、「え?どうしたの?大丈夫?」と思う言動を目にする機会が増えたなー。と思う。

そんな、最近の世相に対して、ドリンクバーで原液が切れてしまったコーラみたいにうっすい感想を抱きながら、書店で出会った本がこちら。

『バカの研究』(亜紀書房)

何が驚いたかって、このテーマで研究している人がいるの!?というのに唆られた。そして、自分なんかより明らかに賢い方がたの考察をぜひとも読んでみたいと。

寄稿とインタビュー形式が入り混じった構成で、執筆時というか原書発刊時の2018年頃の様子が伺がえるとても面白い考察が取り上げられていた。おもに、心理学+〇〇という専門性を持った方々の論考が多方面からまとめられている。医学科学社会学哲学教育数学メディアなどなど。
言葉として「バカ」が用いられる場面が広いためか、各著者によってそれぞれ論じている部分が重なったり違っていたりするのが楽しく、自分の思考の衝突にもためになった。

今後、そういった人と関わらざるをえない状況になった時の答えも少し期待していたけれども、どうやらそういった「バカな」人に遭遇した場合の対処法に関しては、「関わらない」「逃げる」といった趣旨の方法しかないらしい。
知性のある方々の智慧を持ってしても、やはりそれしかないのか…。と、思わず天を仰いでしまった。

少し、批評的なことを書いておこうと思う。執筆者の多くがフランスの方で、文化的な慣習や背景も少しあるのかなとは感じた。1人1人の分量が少ないこともあり、本書内で紹介されていた各著者の他著も非常に興味深かったが、未邦訳のものが多く、次につないで読むことはできなく少し残念だった。
いや、むしろ今後が楽しみか(笑)。

この本の中で、自分が最もスゴいと感動した部分は、何よりも本書の翻訳。

[以下、本書“はじめに“の一部より]
(前略)
最後にこれだけは言わせてほしい。バカに関するこうした考察は、バカだけでなくアホやまぬけにも有効だ。性別、年齢、社会的立場も問わない。あらゆるタイプのバカ、あほ、とんま、まぬけ、うすのろ、脳たりん、おたんこなす、抜け作、とんちんかん、ふぬけ、ボケ、たわけ、愚鈍、愚者、痴人、おたんちん、たわけ、あんぽんたん、ドジ、パッパラパー・・・(略)

「・・・・・・パッパラパーとか、絶対ないっしょ!」と思わず、心の中でツッコミを入れてしまった。

とても、全部に該当する言葉があるとは思えなかった。おそらく、「バカ」の類語に相当する言葉が多く挙げられていたのだろうとの推察はできるが、言語の壁をここまで越えて来るとは…。翻訳者の田中裕子さんという方のお仕事のスゴさに、正直恐れ入った。

ここまでスッと通読できたのにも、感じ取れなかった部分がまだまだあるのだろうと思われる。また、時間をおいて読んでみたい本。


あー、なんて自分はバカなことをしてしまったんだろう...。って思う言動は誰しにもありうる。自分の今までを振り返ってもそんなことばかり。日本人にはむしろそういう思考をする人が多いんじゃないかなぁとは思う。見えなかったものが、見えるようになっただけなのだろうか…。うーん、疑問は尽きない。

ただ、こんな思考ができるうちは、きっとまだ大丈夫なのだろう。本書にも書いてあったが、自分も「バカ」になる可能性と常に隣り合わせに生きていることを肝に銘じ、脳に刻み込んでおこう。