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入院人間観察記

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入院生活を送る個性豊かな人たちの架空の物語。
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入院人間観察記 #45 型取り

入院人間観察記 #45 型取り

型取りヒデオさん、医師から勧められたコルセットの作製。専門の技師が病院に来て本人の体を計測し型を取るようだ。最初に技師の方から一通り説明を聞いて実際に型取りに入っていく。ヒデオさんは技師の説明にうんとうなずいているが本当に聞いているのか疑わしい。聞いている時も駐車場の猫を探しているのではないか。

技師の型取りの間は指示に従いながら体の体勢を変えなければいけない。ヒデオさんは、はいはいと言いながら

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入院人間観察記 #44 新人次第

入院人間観察記 #44 新人次第

新人次第新しく入院してきた新人、胃腸炎の検査があるためしばらく点滴のみで食事が食べれない状態が続いている。一人だけ食事時にご飯が運ばれてこないのが少しかわいそうだ。若いからお腹もすくだろう。担当の先生も気を使ってなるべく早く点滴から食事に切り替えられるように手配しているみたいだ。

点滴の効果が出てきたらしく新人は調子を取り戻している。朝のバイタルチェックに来た若い看護師さんとの会話も花を咲かせ、

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入院人間観察記 #43 調子が良い証

入院人間観察記 #43 調子が良い証

調子が良い証
オペラが聞こえてくる昼下がりを過ごしている。しばらく体調を崩していた山口さんが調子を取り戻している。ご飯もあまり食べれない状態が続いていたが、先生から自分の病気について説明を受けた後、義理のお兄さんとのごたごたも落ちついてクスリとの付き合い方もわかってきたみたいだ。

ご飯が口を通らないことについては看護師さんに

「病院のご飯は味が合わないから、やっぱり自分で作るものじゃないとだめ

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入院人間観察記 #42 面会もろくにさせてもらえない

入院人間観察記 #42 面会もろくにさせてもらえない

面会もろくにさせてもらえない個室の元大学教授、お昼後のゆったりする時間帯にだいたい大音量のオペラが流れてくる。入院前の普段の生活でもいつもの習慣だったのだろう。大部屋だとテレビを見るときはイヤホンを使わないといけないという制約があり、同じ部屋の人に対して気を使わないといけないが個室の場合は気を使う必要がないので大音量で音楽を流せるのは一つの特権だ。とはいえ、音が大きすぎて病棟全体にオペラが響き渡っ

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入院人間観察記 #40 駐車場の家族に手を振る

入院人間観察記 #40 駐車場の家族に手を振る

駐車場の家族に手を振る病棟のPCR検査も終わりバタバタしている雰囲気が落ち着いてくる。病院はコロナ感染の影響ですでに病棟の配置転換をしているので緊張感が漂っている、患者が病棟を跨いで移動するのも注意される状況だ。

この状況下だと当然ながら家族との面会は気楽にはできない。普段はナースステーションに荷物を届けてもらい、それを看護師さんから受け取ったり、病棟の廊下で50mくらい離れて手を振ったりと色々

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入院人間観察記 #39 コロナの感染者

入院人間観察記 #39 コロナの感染者

コロナの感染者ベッドが一つ空くと病室が広く感じる。岡田さんのベッドは真ん中に位置していたのでそれもある。ベッドを区切っていた間仕切りの布が開くとトシゾウさんが横になりながらテレビを見ているのがわかる。

なんだか病棟が朝からバタバタしているのが伝わってくる。何がが起きてらしい、看護師さんが準備をはじめている。感染対策用の装備で身をつつんでいるようだ。この装備はまずは髪を覆うためのカバーとゴーグルの

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入院人間観察記 #38 妻に料理を作ってあげる事ができる

入院人間観察記 #38 妻に料理を作ってあげる事ができる

妻に料理を作ってあげる事ができる新人のスマートフォンの電池がもつのか気になっていた頃、となりの岡田さんの手の炎症がだいぶ良くなったようで先生に包帯をほどいて見てもらっている。

「岡田さん、だいぶ良くなりましたね。もう大丈夫そうです。」

「いやー、本当に良かった。これで帰って妻に料理を作ってあげる事ができる。」

岡田さんは奥さんに料理を作ってあげる事が何よりも楽しみなのか、毎回料理を作れる事を

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入院人間観察記 #37 働きすぎ

入院人間観察記 #37 働きすぎ

働きすぎ入院初日から洗礼を受けた新人、胃腸炎らしく点滴をしているので検査の結果がでるまでご飯は食べる事ができないみたいだ。看護師さんにどうして胃腸炎になったのですかね、と聞かれ。

「会社にこき使われ働きすぎなのが原因かと思います。」

看護師さんも「あー」という感じで返しておりあまり良いフォローが見つからなかったようだ。何日間か会社を休む事になりますが大丈夫ですかと確認すると、このぐらい休むのは

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入院人間観察記 #36 新人

入院人間観察記 #36 新人

新人ヒデオさんがコルセットの説明を聞いている間に新しく入院する人が来るらしく空いているベッドの準備が始まった。病院も経営があるのでうまくベッドを回さないといけない。

しばらくすると車いすに乗った患者が病室に連れられてきた、新人だ。どうやら20代前半の男性で急性胃腸炎での入院のようだ。急に入院が決まったようで入院道具が何もない様子。看護師さんにどうしますか?と聞かれ家族は地方に住んでいて自分一人が

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入院人間観察記 #35 コルセット

入院人間観察記 #35 コルセット

コルセット小金沢さんが退院して静かな時間が流れる。ヒデオさんはいつものように外を眺めて猫がいないか探している。天気の良い昼下がりは心地の良い日差しが入るので気持ちいい。

ヒデオさんのような寝たきりの方は腰のサポートが必要みたいでコルセットを使う事があるようだ。担当の先生が来てヒデオさんにコルセットを作ることを進めている。コルセットを作る場合はセミオーダーになるので技師の人が病院に来てしっかり型を

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入院人間観察記 #34 病室が静か

入院人間観察記 #34 病室が静か

病室が静か小金沢さんが退院した事で病室がとても静かだ。退院するとすぐにベッドのシーツが取り替えられ、次の患者を受け入れる準備が整えられる。次の患者が来るまでは病室の人数が6人から5人となり一人分の場所がぽっかり空いている。

午後は特に検査も無く、各自ベッドで過ごしている。やる事といえばシャワーくらいか。病院には各病棟にシャワールームがあり、30分ごとの区切りの中で入りたい時間に予約する仕組みだ。

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入院人間観察記 #33 やっと娑婆に出れるか

入院人間観察記 #33 やっと娑婆に出れるか

やっと娑婆に出れるかお昼の時間が少したってから小金沢さんのところに看護師さんが来た。退院前の検査結果についてだろう。これが問題なければ退院することができる。

「小金沢さん、検査結果がでまして問題なかったので午後に退院していただいて大丈夫です。」

小金沢さんが「やっと娑婆かに出れるか。」

と嬉しそうな顔をしている。さっそく退院の準備をするのかと思ったら最後の残ったせんべいを食べている。ボリボリ

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入院人間観察記 #32 寝息

入院人間観察記 #32 寝息

寝息さっそうと病室に帰ってくる小金沢さん、検査が終わったようだ。結果がまだ出ていないが帰る気が満々なのか病室着からさっそく着替えている。セーターと白のパンツに革靴という結構キメているスタイル。病院に来るおじいさんとは少し違った風貌だ。

お昼までには検査結果が出ないらしくご飯を食べて待っていてください、と看護師さんに言われている。なんだか落ち着かないのか病室を出たり入ったりを繰り返している小金沢さ

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入院人間観察記 #31 今日退院できるのか?

入院人間観察記 #31 今日退院できるのか?

今日退院できるのか?いつものように小金沢さんが騒ぎ出す、いつ退院できるのかと。看護師さんに朝から聞く。

「今日退院できるのか?」
「朝に検査して問題なければ午後に退院できますよ。」
「ほんとか?いつもそう言って退院できないからな。」

ぶつくさ言いながらうれしいそうな顔をしている。そうこうしているうちに朝のご飯が運ばれてきた。運ばれてきたと思ったらすごい勢いで食べる小金沢さん。ほとんど噛んでいな

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