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伊藤映雪
2020年8月29日 21:52
四度目の冬にはじめてまぶたをひらいたはじまる瞬間を見逃さないように濃い影をますます濃くして息する触れていく突端がどれもあたたかくてすべて きらいだ白い白い布に映った枯れた木々たちの葉がこすれてさんさんと鳴って息が白くなってはっきりと敵意を知った隣で眠るあなたの安心しきった顔を崩したいと 願う首に手をかける果てまで重なってすべて 望むからすべて 叶わない
2020年2月4日 16:00
雲の高度がおそろしく低いきょうは月曜日湾のそばに点在する小さな集落と時間の止まったような船着き場海岸線が襞をなしてひたすらに続いて神様と猫のすむ島風がやさしいけれど決して ふりむいてはいけないさまざまな形の器に人の 植物の 獣たちの呼吸が根付いてどれも いつか傷んでなくなるいままでつたない泳ぎ方で生きてきた上手に泳ぐ必要なんていままでもこれからもなかった
2019年9月3日 19:44
束ねた髪をほどいて空港に降り立ちメール画面をひらいて息災をつたえる入り江に風がわたり青いガラスのように湖も冴えている水辺のコテージで半年の空白をなぞるように斜めの角度で笑ってみせる未明に目を覚まし窓を開けたら風が潮をいざなって素肌へしみこむ小火のような痛みがやがて燎原の火となりわたしを滅ぼすまでオルゴールは鳴りつづける
2019年9月2日 09:37
なくなった会話の隙間を埋めるように比喩だけを頼りに横断歩道の白を選んで歩くあなたの猫背に急かされて嵩張った髪を間引いてわたしは低空飛行をはじめるたくさん失うわたしの星を数えて(遠くで踏切の鳴る)、だから二日ぶりの雨が 慰めにすらならないと知る息絶える夜を見送って出口に逆らって電車が夏を産む枯れ草のように乾いた髪を梳くたびいとおしく思う春が滅んでいく*『現