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スラロム流・データ・ドリブン・カルチャーの作り方 ~ モダン・カルチャー・オブ・データとは?

データはかつてないレベルで重要性を増しています。​勘や度胸に頼らず、データに基づいた意思決定と評価が基軸となる組織文化をいかに構築していくかは、データが新たな資源と言われる今、企業が継続的に価値を生み出していくために最も重要な課題です。

しかし、実際にはデータ・ドリブン文化の育成はそう簡単なことではなく、BIツールを導入してみたが、数ヶ月後には誰も使わなくなったという事例も数多く見られます。

データ・ドリブン文化の育成には、より多面的なアプローチが必要です。

データ分析活用は料理に例えられることが多いのですが、ここで例えば、「顧客も従業員も喜ぶレストランを作りたい!」と思ったときに何が必要になるでしょう? 経営者のビジョン? 高い品質の材料? 調理のノウハウ? 一流の料理道具? 何よりレストランで働く仲間のモチベーション? どうでしょう。どれ一つ欠けても実現は難しそうですね。データ・ドリブン文化の育成についても、同じように多面的なアプローチの相乗効果が必要になるのではないでしょうか。

スラロムでは、データ・ドリブン文化育成のためのフレームワークとして、モダン・カルチャー・オブ・データ ( Modern Culture of Data : MCoD )というフレームワークを提唱しています。このモダンカルチャー・オブ・データは5つの要素から構成されます。 

今回はスラロムが考えるデータ・ドリブン文化の育成に必要なアプローチについてご紹介していきたいと思います。

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1.Bold Vision(ビジョン)

データ・ドリブン組織づくりのために、まず初めに必要になるのはリーダーによる戦略的なビジョンとその共有です。

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組織がどこに向かっているのか、どのように目的地に到達するのか、何故それが重要なのかを知る必要があります。

企業の戦略に沿い、エグゼクティブ・リーダーがこれをサポートしなければなりません。そのためには大胆なビジョンが必要です。

企業の全体戦略と足並みが揃った大胆な包括的ビジョンを定義すること、そしてそれが経営層に支持されていることは、組織全体が同じ目的意識を共有することにつながります。
複数の部署に横串を通す戦略的で実効的な目標を明確に表現することが、行動の変化とコラボレーションをより促進させます。

またリーダーがデータを活用することで、どのような明るい未来のビジョンを共有できるか、個人個人がデータを味方に付けてより力強くビジネスを切り開いていけるのか、ポジティブなイメージを伴ってリードしていくことが鍵となります。 (もちろんレストラン経営においても、どのようなレストランを作って、顧客と従業員を幸せにするか・・・ビジョンが必要大事ですね!)


2.Access and Transparency(アクセスと透明性)

必要な時に必要なデータが利用できる状態になければ、データ活用も始まりません。そのためには迅速なデータ調達、適切な保管、統一された利用ツールが必要です。まずはインフラとツールの下準備が必要です。

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レストランに例えるならば、料理に使う材料がきちんと使いやすいように整理され、保管庫に格納されていること、そしてみんなが共通して使える調理道具が揃っていること、また保管庫に新鮮な状態で届けるための流通システムも大事になりますし、大量の入庫に耐えられる拡張性も考慮しなければならない・・・といった材料を確保、保管といったインフラや調理道具が揃っていることをイメージするとわかりやすいかと思います。

これを実現するためには、柔軟なデータパイプライン、素早く大量のデータを処理するデータウェアハウス、統一されたBIツールなど、統合されたアーキテクチャー、テクノロジー基盤が必要です。柔軟でユーザーフレンドリーなデータ提供インフラシステムによって、ニーズに応じたデータ分析ができるようになります。このようなシステム基盤によって、データに関する組織間での情報サイロ化を取り除き、データを全ての人に利用可能なものにします。


3.Guardianship(ガーディアンシップ)

データのガーディアンシップは、データの管理が安全かつ安心で、コンプライアンスに順じ、倫理的であることを確実にします。この中には、データガバナンス、データ利用におけるプライバシーとセキュリティ倫理規範が含まれます。

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レストランで例えるならば、美味しい料理を作るためには素材の品質を確保しなければいけませんし、その素材のトレーサビリティや倫理的に生産、利用、提供されているか管理する必要があるというイメージでしょうか。

しっかりとしたガーディアンシップの中で、組織はデータにおけるコンプライアンス方針や規則に従い、来たるべき法規制に向けても積極な対応と計画づくりを行い、データの合法的利用が必ずしも倫理的利用ではない場合組織内で認識し注意を喚起することができます。また、せっかく分析スキルが向上し、分析結果の成果が出始めたのに、結果として得られるデータが正確でなかったとしたら、意味がなくなってしまいます。情報のソースについても、例えば複数の売上テーブルがあって、どれが共通利用できるものなのか、正しいバージョンはどれなのか、正しい情報ソースの明確化とその来歴(リネージュ)管理が重要になります。

データが信頼でき、品質が高いものであると信じられる状態にすることで、人びとはデータの活用と解釈に自信を持つことができます。

4.Data Literacy (リテラシー)

データ・リテラシーでは個人のデータ活用スキルを定義します。料理に例えるならば、レシピやシェフの腕といったところでしょう。良い素材、調理道具や設備が整っていても、どのように料理したら良いのか方法が分からなけば美味しい料理を提供することはできません。

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データ活用においては、データの分析手法、統計的解釈、BIツールの利用方法、データを正しく理解し意思決定に繋がるまでの手法などが含まれます。

データ リテラシーは、データ分析の仕方、分析結果を意思決定につなげる方法、データをもとに議論する基礎的なプロトコルについて、組織の全レベル且つ全業務プロセスと全部署の人びとが基本的な理解を持っている状態を確保します。

人びとは、インサイトを引き出すこと、質問をすること、クリティカルに思考すること、データから得られる仮説立案と実験・実証を繰り返し、自分の力で改善を達成することで、データを味方に付け、エンパワーメントを感じます。


5.Ways of work(働き方)

最後の柱「Ways of  work」は一言でいうなら、データ・ドリブン文化の定着に向けた組織的な仕組みづくりです。

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データ・ドリブン文化を定着させ、毎日の働き方に「あたりまえのこと」として浸透させるためには、経営層のリーダーシップだけでも、個人の努力だけでも実現が難しいのが現実です。そこには組織としての働き方や、データ・ドリブンを確実に定着させていくための仕組み作りが重要になってきます。

組織のビジョンをサポートするためのプロセスづくり、分析文化をチームとしていかに広げていくための役割分担、責任を明確にした運営モデルと組織構造も必要となります。時として一人で変革に立ち向かうのが難しいときに、情報を共有し、楽しみながら成長し合える仲間やコミュニティをいかに作っていくかも重要です。

また、データからビジネス価値を生み出した小さな成功例をコミュニティの中で共有するネットワーク構築などのタスクも含まれます。必要なトレーニング体系を明確にし、困った人が一人で抱え込まないようなQ&Aと情報共有システムの整備など、組織をまたがった分析支援チーム(CoE)の立ち上げと人々を巻き込むリーダーシップが重要となります。


以上がスラロムが考えるデータ・ドリブン文化育成に必須の5つの観点となります。

スラロムでは、組織のデータ・ドリブン文化育成のお手伝いをする際に、以上の5つの軸を基に、組織におけるデータ・ドリブン成熟度の評価を行うワークショップを行っています。次に私たちが提供する、評価の仕組みについてご紹介します。


データ・ドリブン文化成熟度の評価

モダン・カルチャー・オブ・データの評価フェーズでは、詳細な評価軸をクライアントと会話しながら吟味し、まずクライアントの現在の位置を俯瞰しながら見える化します。実際には非常に詳細な設問が用意されていますが、ここでは抜粋のイメージを以下にお見せします。これらの設問に答えていくことで、組織が取り組むべき課題をより明確にしていきます。

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成熟度が進んでいるところや、まだ伸びしろのあるところの共通認識を取り、それぞれの優先度、中長期的な目標を立てていきます。たとえば、経営層からのメッセージは明らかになっており(Bold Vision)、CoEチームの体制は整っている(Way of Work)が、現場でのツールに対するスキルが追い付いていない(Data Literacy)・・・ といった課題が認識された場合、だれでも利用できる教育コースが提供する、各部門に相談しやすいチャンピオンを設置し、そこから啓蒙を進めるなどの具体的なアクションを検討していくことが可能となります。

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いかがだったでしょうか? 今回はスラロムの考えるデータ・ドリブン文化育成のフレームワークである、モダン・カルチャー・オブ・データ(MCoD)の中身を具体例とほんの少しの筆者の主観を交えてご紹介しました。皆様のチームでも「こういうことあるな!」と共感いただける点はあったでしょうか?

私たちスラロムでは、皆様のデータ・ドリブン文化育成推進のため、上記のモダン・カルチャー・オブ・データ(MCoD)に関する短いワークショップや、実際の評価セッションを開催しております。どうぞお気軽にお問合せ下さい! よろしくお願いいたします。


参考資料:


著者: Tomohiro Iwahashi (bashii)  岩橋 智宏

2021年4月より、スラロムにジョイン、Data & Analytics Tokyoチームのコンサルタントとしてクライアントのデータ・ドリブン・文化育成の支援や、BIと先進技術を連携したソリューションを提案するために日々研鑽しています。趣味はボルダリング。データサイエンスとデータビジュアライゼーションの融合に興味があります。著書:「Tableau で始めるデータサイエンス」


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スラロム・コンサルティングについて
スラロムは、戦略・アジャイル・クラウド・イノベーションに特化した、ハイペースで先進的な総合コンサルティングファームです。

私達の活動は、33ヶ所のオフィス、7つのビルドセンター、世界規模のコラボレーション文化と、トップテクノロジープロバイダーとのパートナーシップによって支えられています。

2001年に設立され、シアトルに本社を置くスラロムは、8,000人以上のコンサルタントと1,200社を超えるクライアントを抱える企業に成長しました。フォーチュン社の「働きがいのある企業ベスト100」などのランキングにも毎年名を連ねる、多様でインクルーシブな企業文化のあるコンサルティングファームです。

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