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データ・カルチャーに関する意識調査(US)で分かった4つの事実

原文:Four key findings about data culture: A Moonshot research report

日本語訳、解説:Tomohiro Iwahashi


スラロムでは複数のインダストリに渡る、約1,000社の意思決定者に対して、データ・ドリブン・カルチャーについての意識調査を行いました(USでの実施)。 スラロムでは、データ・ドリブン・カルチャーを育成する多面的なアプローチとしてモダン・カルチャー・オブ・データ(MCoD)を提唱しています。※MCoDの内容についてはこちらの記事にて紹介しています。


この調査は、AWS、Slalom、Tableau、Snowflakeとのパートナーシップにより、モダン・カルチャー・オブ・データ(MCoD)に従って、組織のデータ・ドリブン・カルチャーを推進するMoonshotイニシャチブの一環として実施された調査結果から、データ・カルチャーの現状について分かった4つのことを紹介していきます。

(補足)今回、回答者の内訳は以下のようになっています。また、レポートの全文はこちらからダウンロード可能です。

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Findings#1. どうやら、会社の中でもデータにまつわる「格差」があるようだ。

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まずはじめに「データをどれだけ活用できているか。」という質問について、たとえ同じ会社の中であっても、所属や役割によってその認識には大きな格差があることが分かりました。

実際に、エグゼクティブの56%は、必要なデータに常にアクセスできる状態にあると回答した一方で、マネージャーの71%は、そうは考えていませんでした。その原因は多岐に渡りますが、一つの要因としてエグゼクティブ層には、セキュリティ制約によるデータアクセスの障壁が少ないことが考えられます。

エグゼクティブ層が利用するレポートは既にビジネス・チームにより、明晰で、妥当性のある粒度に精選されています。多くの組織はエグゼクティブに対しては、アドホックな分析ニーズに対応するために十分なデータを提供しています。


セキュリティがイノベーションの足かせになっている?

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上のグラフより、組織が「データに対してセキュアで、コンプライアンス倫理に沿った利用をしている」と回答したのが60%であるのに対し、「組織の誰もが必要なデータにアクセスできる」と回答したのは36%に留まりました。これは、セキュリティに対するトレーニングを増やすだけではなく、アクセサビリティを抑制しない、正しいセキュリティ・レベルの提供が必要であることを示唆しています。

例えば、PII(personally identifiable information:個人を特定可能な情報)の取り扱いはプライバシー・リスクの中核です。ある調査(According to the Enterprise Strategy Group )では、3分の1の企業がプライバシー保護、ガバナンスがデジタル・トランスフォーメーション、IoTの推進において、個人特定情報の取り扱いがデータ活用の障壁になると考えています。

この領域において、AWSは、監査、監視、権限管理、認証、暗号化、コンプライアンスなど幅広い範囲でのセキュリティソリューションを提供しています。具体的な事例としては、AWSではDe-identified data lake (DIDL)を提唱し、PIIを削除した形でデータ・リポジトリに保管します。 このソリューションではPIIを最小限に抑えた形でデータを保管することで、情報漏洩のリスクを最小限にし、データ利用に対する理解と優位性を損なうことなく、データ・コンプライアンスに関するコストを最小限にします。


セキュリティに関するリテラシーがポイントに!

データの威力(メリットと脅威)を理解するにつれて、データに対するセキュリティの重要さを認識することでしょう。データソースの標準化を進め、誰でも簡単に理解できるように整理することが大切です。倫理基準を確立し、適切なデータ利用のガイドラインを作りましょう。倫理委員会を作り、教育し、違反が発生した場合は、速やかに修正できるような仕組みづくりが今後重要になります。

もしセキュリティ脅威が発生した場合、様々なAWSソリューションを使って対策を講じます。データ・セキュリティと同様に、リテラシーもユーザーの重荷にならない範囲で導入されるべきです。

もし人々にデータ利用を促進したいのであれば、人々をうまく巻き込んでいくことが大切です。この点はTableauの得意分野であり、データ可視化とストーリーテリングによって、楽しみながらデータ分析と活用を進めていけるでしょう。テンプレート、カラーパレットを組み合わせたダッシュボードによって、データから発見したインサイトを、美しいビジュアルとともに人々に伝え、共有することができます。


Findings#2. データ・カルチャー成熟度は会社によってそれぞれ・・・でも今から始めれば良い!

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スラロムではモダン・カルチャー・オブ・データ(MCoD)の評価指標に従って、データ活用成熟度を4つのカテゴリに分類しています。これに従うと調査結果は、①未着手フェーズ - 13%、②着手フェーズ - 26%、③制定済みフェーズ - 41%、④普及フェーズ - 20% となりました。※レポート詳細はこちらを確認ください。

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結果の中で最もショッキングなことは、データ活用成熟度のレベルは企業によって大きく差があるという事実です。

MCoDによる成熟度が初期段階の企業では、データ活用の目的がコスト削減や時間短縮など、すぐ効果の出るわかりやすい領域に限られている傾向があります。このような近視眼的なスコープは、データによって従業員と顧客を繋ぎ、将来的な成長を加速させる可能性を狭めてしまっています。

より成熟度の進んでいる企業では、データを従業員や顧客といった「人」にフォーカスした意思決定に利用したいと考える傾向にあります。
時間とコストの削減といった効果を超えて、人々により高次元で複雑な機能に集中する自由をもたらします。顧客を理解し、顧客と繋がるためにデータを利用できない企業は、今後、市場から取り残されてしまうでしょう。なぜなら、競合他社は既にこのような取り組みを開始し、更なる投資を惜しまないからです。

更に興味深いのは、サーベイの返答者は将来的なデータ活用の目的に対して、「顧客のロイヤリティを向上する」ことよりも、「従業員の満足度を向上させる」ことに高い優先度を置いていることです。


2つの共通認識

また、どの企業にも成熟度に関わらず、共通認識として以下の2つがありました。

・データに対する投資は今や必須命題であり、86%の回答者は今後1年以内にデータに対する投資を増強する必要があると回答しています。

・データ・リテラシーに対する投資は重要項目であり、これはMCoDの中でも最も優先度の高い要素としてランクインしています。



現在地がどこであろうとも、始めるのに遅すぎるということはない。

もし「今、遅れているかもしれない?」と感じていても、心配はありません。実は(USでも)ほぼ半数の企業がそのように感じているのです。

データ活用を始める際に、利用できるツールはかつてない程簡単にアクセスできる時代です。 最も難易度の高いと思われていた、業務停止を最低限に抑えたデータ移行も、現在のテクノロジーでは大分実現が簡単になっています。

現在、世界中の多くの顧客がSnowflakeのデータ・クラウドを利用するようになりました。Snowflakeはほぼ無制限の拡張や、同時並行性とパフォーマンスを提供します。複数のクラウドプラットフォーム上に、地理に構成がまたがった構成を可能とし、組織の壁を壊してデータの真の価値を引き出します。

更に、AWS上にモダナイズしたデータ・ドリブン・アプリケーションを提供することで、コスト回収期間を6か月に短縮し、運用コストを64%も削減している例があります。(注1)
しかし、データ・リテラシーの観点で見ると、テクノロジーのみではなく、データ・リテラシーについての投資も非常に大切であることが分かります。次にこの点について見ていきましょう。

(注1) 出展:Modernizing data-driven applications with AWS eBook, 2020


Findings#3. データ・インフラストラクチャはバッチリ。でもそれで大丈夫?

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「クラウド」は最初の一歩、でもカルチャーこそが鍵!

クラウドの利用は広く普及しました。しかし「クラウドの利用」と「データ活用」は必ずしも同じ意味ではありません。インフラのアップデートが成功したとしても、戦略的なKPIの設定がなければデータ活用としては成功とは言えません。多くの組織が「意思決定から始める - Decision In 」のアプローチではなく、「データから始める Data-Out」のアプローチに偏重する傾向にあります。

私たちが実施した調査では、「データは私たちの活動のすべてに連結している」との回答の平均は10点満点中7.7点が平均だったのに対し、「従業員はどのようにデータと向き合ったらよいかが分からず、数字を超えて理解することができない。」という回答について、成熟度の低い企業では5.2、成熟度の高い企業でも3.8を示しました。(当てはまっている場合は高い数値を示す。)また、51%のエグゼクティブが「利用しているデータは理解しやすく、使いやすい。」と答えたのに対し、マネージャについてはその比率が35%まで下がりました。

組織内の全ての人が、データ・ドリブンな意思決定を可能とするようエンパワーするためには、テクノロジー・ソリューションを超えてその先を見ていかなければなりません。データ・リテラシーによって人々はデータに対する基本的な理解を深め、どのように分析をすすめ、どのように意思決定を促し実際のアクションにつなげるか判断する力を身に付けます。このようなスキルを習得しない場合、むしろデータの表面的な理解から、間違った判断につながる恐れもあるのです。

FIndings#4. AIで「人」とつながる。

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AIは未来につながる

AIに対する考え方は人によって様々かもしれません。しかし、一つ確かなことは、それが「未来につながる」ということです。
ベンチャー投資家でもある Kai-Fu Lee教授によれば、「AIは人類の歴史の中で、類を見ない程(例えば電気の発明よりも)、世界を変える力を持つ技術である。」と述べています。ロボット、自動走行車両、人口知能チャットボット 、AIによる医療診断はは目まぐるしいスピードで実用化に向けて発達を続けています。AIは日々「当たり前」で「取り立てて意識をしない」技術として私たちの身の回りに浸透しつつあり、今がこの技術を取り入れ、競合から一歩前に出るチャンスでもあります。しかし、これから始めるとしても、手遅れではありません。81%の回答者は何らかの形でAIを利用していると回答した一方で、AIを確立したアセットとして認識しているのは、全体の25%に留まりました。


データなしではAIもない

まるで人間が空気が無くては生きていけないように、AIもデータが無くては成立しません。AIはデータを必要とし、データはクラウドを必要としています。 クラウドにデータを置くことで先進的なテクノロジーにアクセスする上で重要なポイントです。

この関連性は MIT Technology Reviewにも述べられています。クラウド上にデータを置き、そこでコードを実行することで、クラウド上でAIにデータという餌を常に与え、AIをより賢く育てていくのです。データとアルゴリズムの共存により、AIを実行する理想的な環境がクラウド上に生まれます。


従業員と顧客満足度のためのAIとは?

「従業員の満足度」はAIの利用方法の中でもインパクトのある利用方法と言えるでしょう。企業の中でも実際に行っていることのリストのなかで一番最後にありながら、最も最初に取り組みたいことの一つになります。

例えば、より新入社員のオンボーディングの際の疑問に答えるAIチャットボットはどうでしょうか。スムーズなコラボレーションやスキル向上のために最適な従業員とマッチングするなど、AWSが提供するAmazon Comprehendによって、大量のテキストデータから重要なインサイトを引き出し、従業員や顧客満足度向上につなげる施策を検討することができます。

そのほかにも、AWSでは多様な機械学習サービスを提供しており、その組み合わせによって、様々な価値を提供する可能性に溢れています。

参考:AWS Machine Learning サービスを調べる



次のステップ: あなたの組織の現状は今どこに?

さて、今回は主にUSで実施されたデータ・ドリブン・カルチャーにまつわる意識調査結果について判明したことを紹介しました。いかがだったでしょうか? 皆様の会社、組織でも「当てはまる!」と感じられたポイントはありましたか?

こちらのMoonshotのサイトでは、ごく簡単な質問に答えて、MCoDに沿ったデータ活用の成熟度を確認するテストもありますので、是非お試しください。

また、Slalom、AWS、Snowflake、Tableauとのパートナーシップでデータ・ドリブン・カルチャーを実現するための情報やショートビデオがアクセス可能ですので、是非ご覧ください。

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より詳細なモダン・カルチャー・オブ・データ(MCoD)の成熟度診断に関するワークショップ、診断も可能ですので、ご興味持っていただけたら、是非、私たちスラロムにお問合せ下さい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



翻訳、解説: Tomohiro Iwahashi (bashii)  岩橋 智宏

2021年4月より、スラロムにジョイン、Data & Analytics Tokyoチームのコンサルタントとしてクライアントのデータ・ドリブン・カルチャー育成の支援や、BIと先進技術を連携したソリューションを提案するために日々研鑽しています。趣味はボルダリング。データサイエンスとデータビジュアライゼーションの融合に興味があります。著書(共著):「Tableau で始めるデータサイエンス」


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スラロム・コンサルティングについて
スラロムは、戦略・アジャイル・クラウド・イノベーションに特化した、ハイペースで先進的な総合コンサルティングファームです。

私達の活動は、33ヶ所のオフィス、7つのビルドセンター、世界規模のコラボレーション文化と、トップテクノロジープロバイダーとのパートナーシップによって支えられています。

2001年に設立され、シアトルに本社を置くスラロムは、8,000人以上のコンサルタントと1,200社を超えるクライアントを抱える企業に成長しました。フォーチュン社の「働きがいのある企業ベスト100」などのランキングにも毎年名を連ねる、多様でインクルーシブな企業文化のあるコンサルティングファームです。

https://www.slalom.com/


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